八犬傳(下) (角川文庫) [Kindle]

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  • 昨年来、マイブームになっている山田風太郎。上下巻の長編小説だが、やはり、読み始めたら止められなくなった。

    南総里見八犬伝は、江戸後期、47歳の滝沢馬琴が28年かけて完成させた大長編伝奇小説。本書は、章ごとに「虚」と「実」の部分を交互に設け、虚では南総里見八犬伝のダイジェスト、実の部分では、滝沢馬琴の28年間の変遷を描く。八犬伝だけでも、面白いのに、この小説のさらなる魅力は「実」の部分で描かれる馬琴の日常と煩悶、東伝、南北といった戯作者や北斎との交流、そして家族における馬琴の立ち位置に関する描写だ。

    「心に染まぬ戯作を延々とかいてきたのも家族を養うためであった 。隣人 、商人 、下女から肥汲みの百姓とまでやり合ってきたのも家庭防衛のためであった 」
    「彼の人生の目的は 、 『武家 』滝沢家の復活と 、それにふさわしい家庭の創造であった 」
    「そして 、あらゆる俗事に口を出し 、家族すべての行動を支配する 。しかもそれは 、家事 、買物 、交際 、すべてにわたって家族の自由意志を認めないうるささであった 」
    家族にとっては、相当、難しい人だったらしい。そして、それが、八犬伝にどう影響していくのか、謎解きのように描かれる。

    八犬伝完成間近、馬琴は失明する。八犬伝の最後の部分は、嫁のお路の口述筆記によるもの。
    江戸時代の一般女性であるお路は「いろは」しか書けない。一方、馬琴の文は超難解である。山田風太郎は、この口述筆記を「超人的聖戦」と断言し、虚実の冥合の完成をほのめかす。

    八犬伝の物語としての面白さ、滝沢馬琴の人間としての弱さ、強さ、かなしさが堪能できる長編小説。また、なぜ、南総里見八犬伝があれほどまで、とっつきにくい小説になったのかという評論にもなっている。八犬伝を未読の人は、ぜひ山田風太郎版をお読みくださいの★5つ。

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