裏切りのサーカス スペシャル・プライス [Blu-ray]

監督 : トーマス・アルフレッドソン 
出演 : ゲイリー・オールドマン  コリン・ファース  トム・ハーディ  ジョン・ハート  トビ―・ジョーンズ 
  • Happinet(SB)(D)
3.74
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4907953061316

感想・レビュー・書評

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  • ※後半、最高にネタばれています。映画が難解だったという方向けに、私なりに「こういうことでは」「ここがポイントです」というのを書いてみました。必要な方はどうぞ。前半は普通に感想を書いています。

    これは音楽が最高にいいですね。テンションは低めなんだけれども、思わせぶりな音楽で、老スパイの枯れた感じとよく合っている。パーティの風景なんかは明るく、音楽もテンション高めなのですが、それが過度に浮いた感じもしないのは『ゴッドファーザー』と共通。ただ『ゴッドファーザー』だとメインテーマの音楽のメロディラインが非常に印象的なのだけれど、本作はメロディラインを覚えられるかと言ったら覚えられない。そういうところもさすがにスパイ映画です。

    本作は非常に枯れた感じと言うか、スパイと言う仕事に従事するキャラクターの魅力に力を入れた作品と言うより、本格推理に力を入れた作品なのでしょうね、レビュー欄を眺めてみても「解りにくい」の声が多数で、それはもう推理に力を置いた原作小説を踏襲して作られているのですから、二度見するしかありませんね笑。ただ、二度見がまったく苦痛にならない面白さがありますので、二度見めんどくさい派の人も食わず嫌いせずに、ぜひ。

    さて本作を理解するキモは、たぶん「誰と誰がゲイカップルなのか」を見抜くことでしょうね。「本作にはゲイがいる」というのを見抜けた時点で、情報の漏洩経路、それから結末の意味が解ります。そのためにはまず、本作では珍しい若手、ベネディクト・カンバーバッチ演ずるピーターに注目しないといけません。作中でピーターがなぜか泣いているシーンはありませんでしたか? そしてそのシーンで一緒に画面に映っていた人物に見覚えはありませんか? ピーターがゲイと言うことは、つまり一緒に画面に映っている彼もゲイなのです。そしてその彼が映画の終盤で、意味深に視線を交わしている相手は誰でしょう?

    ネタバレを含む、にチェックを入れて書いていますので、少なくとも一度ご覧になった方には解る表記をしますが、しがない教師に身をやつしていた彼は、冒頭で背中を撃たれた彼です。彼は作戦に失敗後、敵であるソ連側に拉致され拷問を受けますが、「モグラ」に免じて解放され、教師として身を潜めているのです。そしてピーターと同棲している。ピーターは、スマイリー(本作の主人公、ゲイリー・オールドマンが演じている)から、「君の命は危険にさらされる、身辺整理をしておくことだ」という趣旨のことを言われ、現在の恋人である教師の彼を危険に巻き込まないために、彼と別れます。別れたからピーターは泣いているし、このシーンでもっとも重要なことは、教師の彼がゲイだと印象付けることなのですね。だからピーターは、スパイにあるまじき、泣くという珍しい行動を作中で取っている。感情を表に出さないスパイたちばかり描かれる本作で、ピーターは泣くのです。物静かな男が突然、号泣して見せるシーンは印象的ですが、これは本作でもうひとりだけ涙を流す人物、すなわちピーターの今の彼である教師の涙とも繋がっていきます。彼らは恋に破れたから泣くのです。スパイにとって、恋に破れるということは、すなわち職業上の失敗をも意味しているのですね。ハニートラップの可能性があるからです。

    本作では、スマイリーの妻もハニートラップにかかっています。スマイリーと、その上司コントロールだけは、本作では正式なイギリスのスパイで、あとの幹部連中は皆、ソ連側に寝返っています。とすると、スマイリーの妻にハニートラップが仕掛けられているというのも、おそらくコントロールとその右腕スマイリーの情報を抜くためでしょう。スマイリーの妻と教師の彼を同時に誘惑していた彼はバイセクシャルなのか、それともそのふりをしているだけなのかは不明ですが、ハニートラップで、このふたりから情報を抜き取り、実際、教師のほうは懐柔に成功していました。それが本作のラストシーンに繋がっていくのですね。あのシーンは裏切り者に個人的な制裁を加えたシーンですが、スパイとしての裏切り者への個人的制裁と言うだけではなく、恋を裏切った人間への個人的制裁のシーンでもあるのです。

    ついでに物語をややこしてくしているのが、冒頭のシーンでしょうね。あれはコントロールの仕組んだ作戦が失敗しているシーンでもありますが、同時に、現地ハンガリーの工作員を動員したソ連側の計画が失敗したシーンでもあります。ウェイターの彼が「素人」と怒鳴られている、そして若い母親がひとり死んでいる。あのシーンでは、おそらく無傷で、あるいは軽傷で教師の彼をソ連に連行するのがソ連側の目的だった。けれども、ハンガリーの工作員が功を焦って、教師の彼を撃ってしまい、瀕死の状態に陥れてしまったし、現地人の若い母親か、あるいは関係者で若い母親に偽装していた女性を殺してしまった。ソ連側にとっても計画外のことが起こった演出を重ねることで、あれは失敗のシーンである、と印象付けるのが目的だったのだと思われますが、実際には、このあとにコントロールとスマイリーの失脚の場面が続きますので、これはイギリス側の失敗であると印象付けられてしまう。もしかしたら、この冒頭のシーンもミスリードを目的に作られたシーンかもしれませんね。

    重厚なスパイ映画かと思わせながら、これは少なくとも4つの恋が無残な形で終わりを迎える映画でもあります。このうち半分がゲイカップルで、映画を見る側の「ふつう、ジジイどものゲイ映画なんてねえだろ、じじばばの恋愛映画でも少ないのに」という、LGBTに対しての需要の姿勢のできていない我々を見透かすかのような、映画のキモ、情報漏洩のトリックのキモとしてのゲイカップルの活用、これは見事としか言いようがなく、時代が進んでゲイカップルが当たり前になった世の中では、おそらく推理のハードルは下がるでしょう。ましてこの作品の時代設定は、まだロシアがソ連だったころです。それはピーターも教師も涙を流そうというものです。

    推理小説が原作の映画でネタバレを書くな! という向きもあるでしょうが、ブクログには「ネタバレの内容を含む」にチェックを入れるとオンマウスしないと読めない機能がありますし、DVD版でも難しいという声が多く、映画が難しいので小説に手を出したら小説の難解さに撃沈した、という方も散見されましたので、とりあえず映画版は映画版として、解と解法を書いておくべきかなと感じましたので、そのように致しました。

    これは失恋の映画なのです。

  • 前々から気になっていた作品。
    一番気に入ったのは音楽でした。すごく雰囲気がいい。調べてみたらアルモドバル監督の映画によく音楽寄せてる人でした。サウンドトラックがあったらほしいなあ。
    原作の小説が名作とのこと。小説未読ですが、原作のある映画によく見られる、”ぎゅっと圧縮した感じ”がやっぱりありました。展開が早くて、誰が犯人か推理するどころか人物をしっかり覚えられないままラストを迎えてしまい…。惜しいことをしました。映像はきれいだし、音楽もいいし、物語もいい。ただ、もっと時間をかけてみたかった。3部構成くらいで。

  •  音楽もいい。
     映像もいい。
     キャストの演技もすばらしい。
     ただ、話の意味だけが分からない(笑)

     誰が誰なのか覚えられないんですよマジで……
     洋画初心者の私には早すぎたのかもしれない。
     「サーカス」のメンバーを識別することに脳のワーキングメモリを割いてしまって、話についていけなかった。
     それなのになんか、いい映画だったってことは分かるんだからすごいぜ。
     先に公式サイトで名前だけでも予習しておけばよかった。
     だいたいサーカス団の話だと思って見たしな!(笑)

     ゲイリー・オールドマンがシブかっこよすぎましたわー!!
     ただ、「もぐら」の正体は、キャストを見た時点で犯人が分かるサスペンスドラマと同じように分かってしまい……
     ていうか最初からその人ばっかりずっと怪しい雰囲気だったじゃん。ていう。
     そこが納得いかないわ。

  • 視聴後「これはもう一回見ないといけない映画だ!」となりました。
    骨太なサスペンス映画ですね。

    「ぼくのエリ」の監督が制作した作品ということ手に取りましたが、なるほど納得の一本です。
    当時の背景に詳しくないのでその辺りを勉強してから見直してみようと思います。

    登場人物のおっちゃん達がことごとくカッコいい作品でした!
    おすすめです!

  • ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、トム・ハーディ、ベネディクト・カンバーバッチと名優が多数出演しており豪華。特にスパイものの映画だが物語の展開が落ち着いていて素晴らしかった。

  • 派手なアクションは全くないが、スリリングなスパイ映画。長編だが、飽きを感じさせないどころか、何度も見返したくなる。

  • 冷戦時代のイギリスを描くスパイ小説。暴力シーンはなく、淡々とした描写で描かれる。

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