フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち [Kindle]

制作 : 渡会圭子  東江一紀 
  • 文藝春秋
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感想・レビュー・書評

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  • リーマンショック以後の、電子化されたアメリカ市場に跋扈した超高速取引を行う集団(フラッシュ・ボーイズ)の正体を追いかけ、新たなる公正な市場の立ち上げに挑む男たちの物語を読んだ。世界は自分の与り知らないところで動いていることに戦慄しつつ、株式市場において一般投資家はカモ以外の何者でもないのだなと。

  • >プログラマー 気質 の 人間 に 取引 業務 について 語る のは、 地下室 で 作業 し て いる 配管 工 に、 マフィア の 親玉 が 上階 で 開い て いる 賭場 の こと を 語る のに 少し 似 て いる。 本文中の一節から抜粋。 超高速取引の技術的な内容に興味を持って本書を読んでみたが、 技術的なことよりはその人々にフォーカスがあたっていたため、対象読者の層からは外れてしまっていたなという感想

  • フラッシュトレード、High Frequency Tradingに関する本。フラッシュクラッシュという言葉を聞いた時に、同時にテレビで特集されていた。
    個人のデイトレーダーにはまったく勝ち目がないことがよくわかった。また、投資で勝ち続けるには運や分析能力以外にも、シンプルな論理が必要なことも本書から理解できた。今回の場合でいえば、取引所とサーバーの距離。時間がまさにマネーであることの良い例。

  • 超高速取引って何だろう?東証がアローヘッドなるものを導入して処理速度が早くなったってニュースで見たけど、どういう意味があるのか?という程度の知識しかないが、あたかもミステリーのように謎を紐解いていく過程に非常にワクワクした。今後IEXは、日本はどうなっていくのだろうか。

  • 驚くべき書き手

  • ルイス氏「恥を知れ」、カツヤマ氏市場誤解と批判ーバッツ氏 2014/4/1(ブルームバーグ)
    今年の4/1のCNBCの公開討論でバッツ・グローバル・マーケッツのビル・オブライエン社長はマイケル・ルイスの新著「フラッシュ・ボーイズ」でヒーローとして取り上げられたブラッド・カツヤマに対し「恥を知れと言いたい。市場に常に仲介が存在してきたことを理解していない」と語った。題名だけを見るとバッツのオブライエンが正しい印象を受けかねない記事だ。

    「マネー・ボール」のマイケル・ルイスが今回取り上げたのは超高速取引(HFT)、一般的な理解ではローリスク・ローリターンの取引を積み上げて利益を出しているというくらいのものかも知れないが実態は大きく異なっている。シカゴの先物取り引き市場とNYの現物市場、もし先物価格が現物に対して高いことがわかればいずれ同一価格に収斂していくので先物を売り現物を買うことで価格差を利用してさや取りをすることが出来る。証券会社や投資銀行が自己勘定取引でこういうことをするのは理解できるし、早い者勝ちだということも分かる。人間が取引所に立って仲介しているころはのんびりしていて2007年頃から売買のマッチングはコンピューター内で行われはじめた。そのころトレーダーはより早い回線を利用すれば儲けるチャンスが増えることを知っていたが、通信業者はまだ理解していなかった。2008年スプレッド・ネットワークと言うベンチャーが出来るだけ直線に近い光ケーブルの回線を引き2010年7月に最初のプレスリリースを出した。「シカゴ・ニューヨーク間の往復時間は。13ミリ秒に短縮されました。」使用料は既存ケーブルの約10倍、5年間のリース契約で前払いならリース料1060万ドルに増幅器の維持費用込みで約1400万ドル。さや取りが出来るとすると年間200億ドルの利益が出せそこに約400社が群がっている。ケーブルの利用スペースは200社分、ある企業のトップはこの申し入れに対し一つだけ質問をした。「価格を倍に出来ないかね?」

    証券取引所はコンピューターのマッチングにより本来なら大きなスペースは必要なくあったはずだが、実際にはさらに大きくなっている。じゃあその場所はどう使われているかというと証券会社のサーバーが置かれているのだ。東証も同様でこのコロケーションというサービスに対しての利用料金は月70-80万円、一般の投資家に比べアクセス速度は1/200程度になるという。

    主人公のカツヤマがこの物語に入るきっかけはカナダRBCの株取引部門で投資家のために売買をしている時だった。例えばインテル株1万株を22ドルを買おうとする。しかしその気配値がエンターボタンを押した瞬間に消えてしまうのだ。07年末の調査の結果ボタンを押して買えていたとしたら失われた利益と手数料の総額は数千万ドルにのぼった。2008年には取引所が13にまで増えマッチング・エンジンがどこに発注するかを決めていて、ある取引所では売る側に、別の取引所では買う側に報奨金を払うか手数料を課しそれが取引所の収入になっている。たまたま買う側に最大の報奨金を出すバッツ取引所に発注したケースでは注文を出そうとしたとたんに株価が跳ね上がり報奨金を受け取るどころか大損失を被ることになった。カツヤマは各取引所に同時に注文が届くようプログラム”ソー”を組むと株が買えるようになった。誰かが時間差を利用して先回りしているのだ。

    犯人は高速トレーダー、ある取引所なら手数料を取られるのにバッツなら報奨金をくれるとしよう。大手のブローカーは取引の際に報奨金をくれる取引所を優先するようにプログラムを組む。例えば上のインテル株の場合1000株づつ別の取引所に売りに出されているとする。高速トレーダーは100株バッツで売り注文を出しておく。最初に22ドルの買い注文の情報をバッツで受け取った高速トレーダーは時間差を利用して他の取引所に先回りし、22ドルの株を買い少し高値で売るというわけだ。

    2010年5月6日午後2時45分フラッシュクラッシュが発生した。これと言った理由もなく市場は10分足らずで600ポイント下げ、その数分後に前より高い水準に反発した。P&G株はその間に最低1ペニー、最高10万ドルで取引され、ほんの一瞬前より60%下げた価格で2万回も取引された銘柄もあった。高速取引のマイクロ秒単位で見るとほとんどの時間市場は動いていない。あるオーダーが出された瞬間に沸騰し、また静かな時間に戻るのだ。

    ブラッドはSECにソーの報告書を提出するとある職員がこう発言した。「あなたたちがやろうとしていることは、超高速トレーダーにとってフェアじゃない。彼らを追い出すようなことはすべきではない。」2007年以降200人以上のSEC職員が超高速取引業者やそのエージェントに転職している。取引所、SECもいわばグルなのだ。これに対しブラッドのしたことは新たな取引所インベスターズ・エクスチェンジIEXを作ることでわざわざ光ケーブルをぐるぐるまき発注が同時に届くように調整したのだ。IEXは投資家を食い物にしないと。取引が始まってからIEXが発表したデーターによるとIEXの取引の平均規模は公設、私設をとわずどの取引所よりも大きく、ある株価が変化した後で取引される割合は他の取引所の半分、また気配の中間値で取引できる確率が他の取引所の4倍に登った。

    HFT以外にも投資銀行内で取引所を介さず取引を行うダークプールの問題もある。しかも投資銀行はダークプール内の情報を高速トレーダーに売っている。超高速取引の売買高は市場の半分を占めるほどになり、日本でも発注の6割、約定の4割がHTFのコロケーション経由になっているとFACTAの阿部氏が解説している。東証、大証が合併したJPXの2014年3月期決算ではコロケーション利用料として営業収益に計上されたのは25億66百万円、前年比38%増となっている。それでもHFTを検索した限り証券会社はHFTは道具にすぎないと擁護している。例えば7月4日のロイター記事の見出しは「超高速取引の厳しい台所事情、利幅少なく競争も激化」となっており記事内でも見せ玉はなく、薄利のさや取りをしていると主張している。メディアも中立とは限らない。

  • おもしろさ、恐ろしさ、インパクト。どれをとっても今年ナンバーワンのノンフィクション。必読。

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