最貧困女子 [Kindle]

著者 :
  • 幻冬舎
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感想・レビュー・書評

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  • 他の書籍でも指摘されているが、ここでもやはり登場する女性たちには知的障害がある(可能性がある)旨が指摘されていた。一筋縄ではいかない問題だと痛感する。 #本 #読書 #最貧困女子

  • ここ何年か女性の貧困がしばしば取り上げられるが、その中でも特にセックスワークに従事する貧困女性に注目する。そうした女性たちの貧困は不可視状態、つまり貧困として補足されづらい状態にあり、その結果、行政や社会の救済の手から漏れ落ちてしまう。そうした彼女たちの実際を、多くのインタビューにより明らかにしていく。
    彼女たちに共通するのは3つの無縁と3つの障害だと著者はいう。3つの無縁とは家族の無縁・地域の無縁・制度の無縁、3つの障害とは精神障害・発達障害・知的障害だという。もちろん、無縁や障害とは無関係にセックスワークを選択する女性もいるだろうが、そうでない女性たちの中にはそうした無縁や障害のためにセックスワーク(特に違法な売春行為)に絡め取られる者も多い。彼女たちにとってセックスワークは生きるための一種のセーフティネットとして機能するが、それはまったく不完全で不健全なものでしかない。確かに一時の食事、一時の宿を得るのには役に立つが、長期的なセーフティネットにはなり得ずしばしば貧困が継続してしまう。そうした救済から漏れた最貧困の女性たちの姿には、自己責任論で済ますことのできない問題が浮き彫りになる。彼女たちをどのような形で救済していくのか、それは極めて難しい。本書でも一応の解決策を提示してはいるものの、必ずしも包括的でなく、また現実的でもない。対応策の議論としてはまだまだ不十分。とはいえ、こうした可視化されないこの問題を目に見える形で提示したことには、問題提起として意義のあることだとは思う。

  • 低所得で人間関係も希薄な、セックスワークに従事する女性の実態を書いた本。なかなかに悲惨な状況だが、いったいどうすれば彼女たちが貧困から抜け出せるのか分からない。

    著者によれば、彼女たちは低所得であるのに加え「3つの無縁」と「3つの障害」によって貧困になっているという。3つの無縁とは「家族の無縁・地域の無縁・制度の無縁」である。ようするに助けてくれる人がいないということだ。3つの障害とは「精神障害・発達障害・知的障害」である。軽度でもいずれかの障害を持つことによって、コミュニケーションが上手くいかず、書類手続きも不得意となる。結果、「3つの無縁」につながるというわけだ。

    そうして繋がり絶たれた彼女たちは、その場を凌ぐためセックスワークの世界に取り込まれる。ここで厄介なのが、セックスワーカー = 貧困というわけではないことである。また、セックスワークの元締めが上手いこと最低限の世話をすることもある。その結果、彼女たちの貧困状態は可視化されない。自分たちからは助けを求めることができず、制度の方も彼女たちを補足できない。だから貧困状態が続く。本書が発売されたのは2014年だが、2021年現在はどうなっているのだろうか。

  • 金もなく、縁もなく、知力にも恵まれず、傷だらけで放置されている女性たちのルポ。セックスワーカーのあいだでのあまりの格差の大きさが衝撃的。

  • この本を読んでいる間中、私はきっと思い切り眉をしかめていたに違いないと思う。

    著者は鈴木大介、底辺の若年層のルポライターといては群を抜いた存在であり、本書も新潮ドキュメント賞を取っている。

    本書に書かれていることは、とても単純には信じられない、と思う。ただ私はここにあるようなことがらを現実に知る立場にあり、堕ちていく瀬戸際にある少女たちが手の届くところにいる。でもできることはとても、とても限られていてそのことが眉を思いっきりしかめさせるのだ。

    著者はこういった少女たちに共通した特徴として家族・地域・制度との三つの無縁、及び精神的・知的・発達の三つの障がいを挙げている。

    正しいと思う。

    私が接する機会のある子たちも、ふた親が揃っているケースはまずなく、祖父母や叔父叔母とも接触は少ない(家縁)引っ越しが多く、なんらかの理由で不登校になるケースも少なくなく、地域に友だちもない(地縁)かつ親が多忙なのか無知なのかで制度との接触もほぼ無い、そういったケースが大半を占める。

    そして障がい。10代から抗精神薬、眠剤を複数処方されている子、希死願望が強く、毎日のようにSNSで一緒に死んでくれる人を探す子、両手両足首に何本もの切り傷がある子、こういった少女たちの中から何人かが風俗に流れて行くのだろう。

    でも普通の生活をしていたらこういう子たちの背景を知ることはできない。それはこの国で特に強い排外意識の中にあるものだからだろう。

    入院設備のあるような精神病院は、たいてい町のはずれにある。支援学校も然り。この国はぜったい「異質なるもの」を日常生活に取り込もうとしないのだ。

    そうやって取り残された人たちが、食い物にされ、さらにその環境の中で子どもを育てる。

    著者によれば、この業界の人間たちは多かれ少なかれ似たような生育環境から来ているので、同調しやすく、またされやすい。しかし一方で倫理観や道徳感はとても未熟な場合も少なくない。

    そのためかつて異常性欲を扱うAVの出演者は多くが知的障がい者で、その多くはやはり同種の障がいを持つ親から「売られて」きていたのだという。

    「女はいざとなれば身体で…」と嘯く♂、これでもそう言い続けられるだろうか。

  • 最底辺にいる 女性をルポした内容です。
    どの時代にも 底辺で 
    花をひさぐしか収入を得る事が出来ない人が
    大勢いました。

    今の時代 色々な 社会的なサポートがあるけれども、
    それを 使えない 使わない 人がいるようです。
    でも、普通に生活していたら
    目には入って来ないので その存在を知らない人が
    多いそうだ。
    勿論私も このような 方々のニュースを見ると
    何故 社会保障を利用しないのだろう?
    日本国憲法で定められているのだから
    健康で文化的な生活が送れないのならば
    援助されても良いと思うけど・・・・

    そういうのは
    理想論なんですよね~
    この著者も色々提案をしていますが
    答えは 一つじゃないんですよね・・・・

    何十年も前に マザーテレサが日本に来た時
    この国は 豊かだけど 他人に無関心と おっしゃいましが
    ずーっと そんままなのかもしれませんね。
    今は 自分の生活が 一杯だから
    他人を構っていられないよ~~って いう 方も多いと思います。
    でも、 大変だからこそ お互い助け合って
    皆で幸せになれるように 努力したいですね。

    なんて 思っている 私も理想論だけですね。
    でも、こういう本を読んで
    見えない所で 大変な思いをしている人がいると
    いう事が 判ったので この本を読んで 良かったです。

  • 貧乏と貧困は違う。貧乏は、低所得ではあっても家族や地元の友達との協力などがあれば不幸ではない。貧困は低所得に加えて、頼る相手もなく、自分の努力だけでは抜け出せないことが多い。貧乏で幸せな人はいても、貧困で幸せな人はいない。

    親からの虐待などで、家から逃亡した未成年の女子が住む場所や生きるためのお金を求めてセックスワークに従事するケースは多い。セックスワークに従事する女性の多くは貧困状態であるが行政の支援が十分に行き届いておらず、また、世間的な批判も浴びやすい。

  • ネットのニュース・ルポとかでなんとなくやばいと思っていた世界。セックスワーカーと貧困。
    貧困は低所得に加えて三つの無縁(家族・地域・制度)、三つの障害(精神・発達・知的)で陥ると筆者は考えている。
    「地方都市を中心として、昼には一般職を持ち週に数回性風俗でバイトする女性が増えている」ていうのもびっくりしたしショックでもあった。
    障害があったり、親から虐待を受けてたり、環境に問題があることが多いし、未成年で知識も無いと簡単に自己責任て言えないと思う。単にセックスワーカーで貧困で、って言ってもいろんなタイプが居る(筆者は「サバイバル系」「ワーク系」「財布系」と分類したりしてる)。支援を求めてない人はともかくとして、なにかしらの支援につながるといいなと思うし、自分にはなにができるのかなと考えたり。

  • 人は低所得のみならず「3つの無縁」と「3つの障害」で貧困に陥るというのは実に的を射た指摘だなと思いました。 3つの無縁とは家庭の無縁・地域の無縁・制度の無縁で、3つの障害とは精神障害・発達障害・知的障害になります。
    これらの無縁と障害は、生まれつきの場合、幼少期のネグレクト・虐待・不十分な教育などの周囲の環境によっても引き起こされ複数どころか、全てを抱え込んでしまい貧困に陥ってるケースも多いでしょうね。

    セックス産業においても競争原理が働き、特に地方におけるセックスワークは、少なくない収入源として成立していることで、容姿が優れプロ意識を持った女性が集まっている、その結果としてそうではない女性たちがセックスワークからもこぼれ落ちている現状があります。
    生きていけないほどの貧困が現代の日本において女性たちに降りかかっていることがまず可視化され、そしてどのように制度がされていくべきか改めて考えさせられます。著者も本書中で制度について様々な提言を行っていますが、そもそもそうした貧困の現実に十分にスポットライトが当てられておりません。政治やメディアの責任というのは簡単ですが、そうした考えるだけで暗鬱になってしまう問題から目を逸らし続けた大人たちにも責任の一旦はあると思います(買春を行ってきた人たちは論外として)
    まずは十分に女性の貧困について可視化されるようにする。そのためにどうしたらいいのか考えることから始めることですかね。

  • あまりの事実に打ちのめされた。
    感想を書くことさえ、ためらわれた。
    どうしていいかわからない。
    ただ、伝えていくことに意味があると思うので、感想を書いた。
    貧困と貧乏は違う。
    あと、筆者自身が「自分はこのテーマから逃げ出したんだ」という述懐があってそれが重かった。
    こうすればいいじゃないか、という安直な議論の前に、自分や社会制度が前提としている条件を持ってない(そしてそれは必ずしも自分のせいではない)人が、こんなにもいるんだ、その事実を知ることから全てが始まるのだと思う。

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著者プロフィール

1973年千葉県生まれ。文筆業。子どもや女性、若者の貧困問題をテーマにした取材活動をし、代表作として『最貧困女子』(幻冬社新書)などのあるルポライターだったが、2015年、41歳のときに脳梗塞を発症し高次脳機能障害が残る。当事者としての自身を取材した闘病記『脳が壊れた』『脳は回復する』(ともに新潮新書)が話題に。他にも、夫婦での障害受容を描いた『されど愛しきお妻様』(講談社)『発達系女子とモラハラ男』(漫画いのうえさきこ。晶文社)、当事者視点からの実践的な援助ガイドを試みた『「脳コワさん」支援ガイド』(日本医学ジャーナリスト協会賞受賞。医学書院)、当事者と臨床心理士との対話を記録した『不自由な脳』(山口加代子氏との共著。金剛出版)などの著書がある。

「2021年 『壊れた脳と生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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