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感想・レビュー・書評
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映画はずいぶんわかりやすいように改変されていたんだなぁー、と驚いた。ハダリーの能力とか映画見てなかったら正直よく想像できなかっただったろうな(;´・ω・)結構難解なのですが死者が労働力となる世界>>都合のいい労働者を生み出すために霊魂を上書きしてしまう という技術の応用はいかにもありそうだ。「それは私がやり残したことじゃない。私の意識がやり残したことさ」というのが伊藤計劃のメッセージのようにも見え、また遺稿を引き継ぐというえらい仕事を任せられた円城さんが苦渋の果てに見出した答えのようにも思う。
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とりとめもなく屍者の帝国読了後の感想を書いてみたいと思います。寝ぼけながら読んでしまった部分もあるので、小説の内容に対してピントが合っていない部分があるかもしれませんが、ご了承ください。
ザ・ワンが菌株と呼んだXを、私なら遺伝子と呼びたいです。遺伝子はある意味で言葉でもあります。
遺伝子はDNAという物質に書かれた情報であり、ACGTの四文字で構成されます。文字で表せる以上、それは一つの文章とも言えます。遺伝子音楽というものもあります。
ただ、人の魂をDNAだとしてしまうとあまりにも人を物質として見過ぎですし、実際に小さなウイルスは化学式で表せるレベルで物質扱いされていることもありますが、ともかく、人の魂はX=遺伝子+言葉、あたりに表現しておきたいです。主人公のワトソンくんが医学生かつ物書きなのでそう表現するのも面白いと思います。
Xが遺伝子だというのは、ザ・ワン=チャールズ・ダーウィンの長々とした説明からそう思ったのもありますが、菌株の拡大派というものが存在するというところからそのように思いました。
菌株の拡大派、それって癌そのものではないか。
本来の細胞周期から外れて、無尽蔵に増え続け、正常な細胞を圧迫し、個性を持たない癌細胞(の遺伝子)。それと本作に登場する「屍者」との間には類似性があるように感じます。
ちなみに、20世紀の半ばにDNAが二重らせん構造を取ることを証明した人たちにもワトソンって人がいます。こちらはワトソンはワトソンでもジェームズ・ワトソンですがwww(円城さんがあやかった可能性はいかばかりか)
このように考えて、本作の最終局面を考慮すると、死をなかったことには出来ないけれど、死を塗り替えて希望を持って生きてほしいというようなメッセージが
あるような気がします。
つまり、言葉と遺伝子を受け継いだフライデーが意識を持って人間らしくなって感謝の言葉を述べてるのはとても良かったね……と、陳腐な言い方になってしまったが、伝わってほしいです。
Xに遺伝子を代入して、言葉によって作家の命は本の形で後世に受け継がれていくわけで、この度のアニメ化は、伊藤計劃さんの遺した言葉から新たな命が芽生えたわけで、喜ばしいことだと思います。
ただ、映画で腐女子ウケを狙って私のような人間を網に引っ掛けるのはいいのですが、ワトフラの濃厚な描写はいかがなもんかと思いました。
遺伝子は、オスの配偶子とメスの配偶子が接合して新しい個体を生み出していくので、同性愛的表現は本作の意図にやや反しているのではないかなーと思わなくもないです。
フランケンシュタインであるザ・ワンが花嫁を求めるのも、ワトソンとアドラーがいい感じになるのも、それなりの意図があって物語に配置されたはずですが、映画ではこの部分がかなりわかりにくくなっていて、残念です。
ただ、映画の改変は、2時間で収まるようにかつ分かりやすい展開を持ってくることでまとまっているのでそう無下にはできません。個人的には、映画は分かりにくいですが楽しめました。
小説と、映画の差異=ディファレンスを比べるのも楽しく、背景や屍者の動き、アクションシーンが可視化されてとても小説が読みやすくなるのも良い点でした。
ひとまず、映画版「屍者の帝国」には、ありがとうございましたと言いたいです。
小説の屍者の帝国へも言わずもがな、ありがとうございますと述べたいです。