打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫) [Kindle]

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  • 文藝春秋
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レビュー : 18
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感想・レビュー・書評

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  • 米原万里の書評をまとめた本。とても面白い。リズムよく紹介される本たちは、多岐のジャンルに渡る。本の素晴らしいさと、作者の読書欲にびっくりする。何冊かここから注文した。こんな人が早くに亡くなってしまってるのほんとうに残念。

  • 紹介されている本は、主にロシアの、政治的な本が多い。少しロシアに興味を持った。翻訳物の本が多いけど、私は横文字の名前が覚えられないので、読むのが難しいなぁ。後半は、日本の作品も多い。色んなジャンルの本が幅広く紹介されているが、難しい本ばかりで読むのに気合いがいりそう。岸田秀さんの本が出てきたのが嬉しい。最後のプロフィールで、著者が亡くなっているのを知った。合掌。

  • 20190506 打ちのめされるようなすごい本  米原万里

    この人の本をもっと早くに読めばよかったと思った。丸谷才一、佐藤優、下山事件、チェチェンに興味があるように感じた。

    ○自然界に飛び込んで鳥や樹木、風の音を聞いたとき、私ははじめて自分にも後ろがあり、三百六十度の方向が与えられていることに気がついた。
    ○だからいったでしょ。『進歩的』な女の人は、いつも『新体制』の前で張りきっちゃうんだって。
    ○子供にとって、もう取り返しがつかない、ということはない。いつも、なんとか取り返すことができる、というのは、人間の世界の『原則』なのです。
    ○最初の五頁で没にすべき原稿は分かる、「偉大な作家など、おいそれといるものではない。いるのはただ推敲に長けた文章家ばかりである。(中略)文章の 90 パーセントまでは推敲にかかっている」と豪語する著者が説くのは、この推敲術である。
    ○修飾語の多用を極力控え、月並みな比喩を避け、安易な会話依存を戒めるという具合に具体的な事例をもとに叩き込んでくれる。
    ○脳には自分に都合の悪いもの、不快なものは記憶しないどころか、無いも同然となってしまう「自動忘却装置」が備わっている。一種の自己肯定欲というか自己保存本能みたいなものか。
    ○実物を生の感覚で確認しない限り、コトバや映像だけでは同一かどうかは確定できない。
    ○特に官僚的機構を取り入れた大企業ほど弊害が著しい。独創的アイディアは、大企業ではなく職人的中小企業の水平的ネットワークからこそ生まれ、経済と暮らしを活性化させる源泉ともなる。
    ○フーコー、ランボーの著作が並ぶ充実した本棚のある家、本当に美味そうな食卓、手作りのソーラーハウス。社会の規範からはみだしているからこその個性と自由と気楽さが 横溢 している。そして、欲望の抑制にこそ幸せの秘訣があるのではないか。
    ○良心的な研究者が陥りがちな盲点は、無意識のうちに目線を上に置いて弱者を救おうという主張をする。
    ○日本の文学者には本居宣長の主要作品や、『源氏物語』を全文読んでいる人が少ない。
    ○癌を治す究極の四カ条は、 ① 生活習慣の見直し、 ② 癌の恐怖からの解放、 ③ 免疫を抑制する治療を受けない、 ④ 積極的に副交感神経を刺激する。
    ○日本近代文学には貧乏を崇拝する特殊なジャンルがあった──貧乏を自虐的に描く「私小説」と集団の貧乏を高みから理屈っぽく描く「プロレタリア文学」。
    ○個人の内面的倫理が確立されておらず、個人の行動の規準が権力との一体化のなかにあるため、常に上級者の顔色をうかがい、自分の行為が上から正当化されるのを求める。
    ○常に上からの圧迫を感じているから、下へ威張り散らすことで発散しようとする。上からの圧迫は、常に下へ下へと送られ、最も弱い存在に責任転嫁されていく。これが、「抑圧移譲の原理」。
    ○犯罪を防止する抑止力として、コミュニティー住民の縄張り意識と当事者意識を重要視するのが『割れ窓理論』である。
    ○画一化するメガメディアと並んで、技術革新によってインターネットやケーブルテレビなど小規模の多様な情報提供が視聴可能になったことによって、それぞれの市民が自分が視聴したい報道や娯楽のみを視聴するようになったために、敵対する、あるいは異なる社会グループがお互いの意見や情報を共有できなくなり、一人ひとりの市民が得る情報は逆に狭くなるというパラドクス。
    ○共産主義も市場原理も実力主義も徹底していくと人間社会は必然的に破綻する。
    ○四つの限界が原因
    ① 人間の理性には限界があるため、論理の本質を見抜けず、大衆に行き渡るのはワンステップの単純化された論理で、論理以外のファクターは排除されるため、国際化のために幼時から英語を学ばせ国語を疎んじ、結果的に国際的に軽蔑される無内容な国民を量産するような愚かな論理がまかり通る。
    ②人間にとって最重要なことが論理だけでは説明できない。
    ③ 論理には出発点が必要で、この出発点の選択は、論理ではなく、人間の情緒という、人間の総合力から生まれる。
    ④ 純粋論理は、〇か一かの二者択一の世界だが、一般の世の中には絶対的な正しさも絶対的な間違いも存在しない。だから論理では人間社会の深淵に到達できない。
    ○その国の小説が堪能できるほどの語学力こそ通訳能力の必須条件。逆に通訳できるほどの語学力がなくては小説の理解はおぼつかない。もちろん、まず何よりも母語の日本語で。
    ○大胆不敵な冒険魂と、人間に対する飽くなき好奇心と愛情と、自己を含めあらゆる対象を冷静に詳細に見つめる観察眼と、歴史や世界情勢に関する見識と柔軟な思考力と、それを的確に表現する文章力、以上を支える独立独歩の自由な精神。
    ○よそ者である調査者に、心開いてよそ行きでない本来のしゃべり方で話してもらうには、小手先の技術では到底無理。全人間的ともいうべきコミュニケーション力が試される。
    ○お気付きかと思うが、日本の新聞や雑誌に載る書評は、基本的に褒めることを旨としている。決して貶してはいけない。貶すぐらいなら書くな、とまで言われる。
    ○圧倒的多数の人々は自由なる意志に基づいて、己の意見や立場を決定していると無邪気に思い込んでいる。あたかも自身の意志で、さして必要もない商品を嬉々として買い求め、インタビューに際しては一〇人中九人が自分自身が考え抜いた意見であるかのように、テレビキャスターや新聞の論調を反復する。そして選挙ともなれば、自分や自分と同じ境遇の人々の利害に明らかに反する政策を推し進める政党に投票したりする。それが、情報操作の結果であるなんて露ほども疑わない。
    ○なんでも断定せず、柔軟な心を保とう。断定することは、学ぶことをやめることを意味する。
    ○成就したいことがあれば、すべて自分で行動せよ。

  • 読了。
    著者の薦める本の紹介も素晴らしいけれど、やはり、卵巣癌を手術した後の民間療法を自らの体を使って記録を残したいと書き綴った体験記が1番すごい。「私が10人いれば、全ての療法を試してみるのに」という。身を以て色んな治療法を検証したことが書かれてある。
    今読めば怪しげな療法も含まれている。彼女はある意味冷静に怪しげな療法に向き合っているようにも見えた。この本を読むまで彼女が近藤誠氏に傾倒していたことは知らなかった。民間療法に走らなくても長くは生きられなかったのかもしれないが、早すぎる彼女の死が悔やまれる。

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  • 前々から欲しかった本。安くなってたので。

  • 米原さんのは、本当に読んでみたいなと思わせる書評だな。有能なロシア語通訳者であり、優れたエッセイストでもある彼女には、もっともっと長生きしてもらいたかった。

  • はじめて買った、米原作品。

    何でもっと早く読まなかったのかと、大いに後悔した。

  •  著者の米原万里はロシア語通訳でエッセイストとしても有名な方だが、2006年にガンで亡くなった。その年、著者の業績の集大成のような形で出版されたのが本書だ。前半は週刊文春に連載したコラムで、時事問題へのコメントと関連する書籍の紹介。後半はひたすら書評。著者が様々な媒体に発表したすべての書評が収録されているそうだ。

     軽妙な文体ながらそれぞれの本の素晴らしさが熱く語られており、ぜひ読んでみたいと思うこともしばしば。本書の中で「ここ二〇年ほど一日平均七冊を維持してきた」というくだりがあるが、それほどの速読でありながらこれだけ丁寧に評が書けるのはすごい。ただ本書自体の初版が2006年なので90年台の書評が多く、すでに絶版になっているものも少なくなかった。

     エッセイで語られる時事問題も当然10年以上前の話題なので、今読むとさすがに古いテーマになってしまっているが、切り口は明確だ。小泉やブッシュでさえこれだけこきおろしていた著者が安倍やトランプの振る舞いを見たら、どう語っていたか読みたかった。

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著者プロフィール

1950年、東京生まれ。翻訳家、エッセイスト、小説家。『不実な美女か貞淑な醜女か』で読売文学賞、『?つきアーニャの真っ赤な真実』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2006年没。

「2016年 『こんがり、パン おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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