獣の奏者 全5冊合本版 (講談社文庫) [Kindle]

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  • 【あらすじ】国の資産である「闘蛇」を世話する母は、処刑される寸前、禁忌を犯して娘・エリンの命を救った。やがてエリンは、闘蛇と同様に国が大切に保護する「王獣」に惹かれ、母と同じ「獣ノ医術師」を志す。想いの強さから王獣と心を通わせるようになったエリンは、王国の戦いに巻き込まれ、過酷な運命を背負うことになるーー。外伝1冊を含む、全5冊の合本。
    ***
    【感想】
    本編4冊を分解すると、前半2冊はエリンの子ども時代で、自らのルーツを探していく過程。後半2冊は、結婚し、子どもを持ったエリンが、自らの運命と戦っていく話。本来は前半2冊で完結していたはずの物語らしいけれど、後半もあってよかった。個人的には、後半の方が面白く読むことができた。前半は、闘蛇や王獣の謎を解いていくSF的な要素が多いけれど、後半は政治的な駆け引きなどが中心になっているからだと思う。闘蛇や王獣という存在は、おそらく例えでしかない。便利なものを得た時に、それをどう使うかは人間次第だし、戦いが止むことはない。それが人の性だから。「児童文学」というジャンルらしいが、むしろ大人向けの作品ではないかと思った。

  • まじでおもしろいっすわ。
    親と子の関係もそうですし、生物の生き様から人の生き様とか、人の生末とかを見たりできます。親から教えてもらったことの意味を自分が大人になって理解できるように、物語の中で登場人物が成長していく様が見れます。それを見ながら自分もそうであったなあと思ったり、その痛みあ温かみを感じたりすることができるのです。それをファンタジーの中で、空想上の生き物、王獣、闘蛇という重要なキャラクターの生態を解き明かしながら進んでいくのです。ああ、よくできている世界観。
    よし、この著者の他の作品を読んでみよう。

  • すごい面白い

  • 超ボリュームあった

  • 再読。これは、大人になって読み返すと、昔とは全く違うことが見えてくる。複雑に絡まった政治的な抗争の中で生きるエリンの幸せを願わずにはいられない。イアルとエリンの馴れ初めもしっかり二度読みした(笑)

  • 5巻分1760ページ読み終わりました。
    私とこの「獣の奏者」との出会いは、昔NHKのアニメで「獣の奏者エリン」というタイトルで知ったのが一番最初の出会いでした。
    面白かったので最後まで見て、そして文庫本を手に取りその頃発売されていた「獣の奏者 Ⅰ闘蛇編」、「獣の奏者Ⅱ王獣編」まで読んで、すごく感動したのをおぼえていた。
    知能が高い王獣でも言葉が通じず本能の赴くまま生きる王獣の思いを知りたくて竪琴を弾くエリンの苦悩と葛藤、そして人と獣の間にある深い淵に立ちながらも心を通わせていくエリンの姿をすごく美しいと思った。

    そしてアニメーションではなかった、「Ⅲ探求編」、「Ⅳ完結編」にて物語は幕を閉じる。人によってはハッピーエンドではないかと思うけど、私はエリンが求め続けていた答えを見つけることが出来たという点においてはエリンは幸せだったのではないかと思う。

    そして外伝という位置付けになる「Ⅴ刹那編」では、エリンとイアンの出会いやエリンの母ソヨンの話などこのエピソードを読んだ後に読み返すとまたそれぞれの登場人物に対する違った思いがあるので、さらに面白く読めると思った。

  • 全世代読めて、何十年後も読まれているんだろうなっていう良い文章だった。

    知的好奇心、集団と個人、制約みたいなことについて思いを馳せながら読んでいた。
    学んだところで争いはなくならないけど、見て学ぶことでそれについて目を背けずに考え続けることができるってのは1つの救いかなと思った。

  • やはり上橋菜穂子さまは素晴らしい!

    IIの王獣編で、ちょっと残念だったと感想書いてしまいましたが、すべて読み終えると、そんなふうに思ったことも忘れて、もう満足感しかない!

    エリンの最期はショックやったけど。
    そういや、しょっぱなに母があのような形で処刑されたのもショックやったな。読んでいてつらかった。。子どもは読めないだろう。
    ついついお話の世界に入り込んでしまう私。中年にもなって。

    生物を、人間の都合でその生を、歪めてしまってよいのか。そうした歪められた生を生きる獣は、そのことをどう感じているのか?わからない。かわいそうだと思っているのは、ただこの私。わかりえることはない。。
    現実には、人間は、人間自身の生をもコントロールしている。どこまでいけば、自然でないことになるのか。それで、真に幸せになるのかーそれもまた、人それぞれで、わかりえない。。

    平和であるために人々に事実を知らせないことよりも、リスクをおかしても、真実を人々が知るべきであるのか。国の平和のために、防衛はどうあるべきなのか。
    いくつものテーマが、私の生きる現実に重なって、そこもまた、ひきこまれる一因だろうな。

    アクション満載の本編から外伝にうつると、ワクワク感が急激にダウンして、恋愛話のトロトロ感にとまどうのだけど、入り込みすぎてた頭を冷やすのにはちょうどよかったかも笑

  • 主人公エリンの内にある、青白く燃え上がるような怒りと悲しみ。
    読みすすめるのが痛い、辛い、悲しい、苦しい。それでも読んでしまう。
    「精霊の守り人」でもそうだが、主人公の強く激しい生き方は、凡庸な私には天地がひっくり返っても真似できない。なのに、白けることなく感情移入できる。
    なによりもそこが凄いと思う。

  • 主人公が王獣や闘蛇の謎を解いていく先には災いがまっていると知りながら、謎を解いていくところに、人間は好奇心を抑えることが難しいと感じた。

  • ずっと主人公のエリンの行動に違和感を感じながら読んでいたけど、最後にその違和感の理由が分かった。
    これは科学者の葛藤のお話しだったんだなー。

  • おもしろかった、けど、重かった、とてつもなく悲しかった。
    「長い年月 、たくさんの 〈示道者 〉たちが道を探しつづけてきたけれど 、どれほど巧みに身をくねらせても 、争いからは逃れられない 。人の命は短すぎて 、思想はいつも 、充分に成熟せぬままに途切れていくのよ 」
    「ああ時間が欲しい !知りたいことを解き明かしていく時間が !人の一生は 、短すぎるわ … … 」
    「わたしがしてきたことには 、なにか意味があるのかしら 。わたしは 、なにか 、できたのかしら 」
    「人は殺し合いをやめない 。これからも 、きっと戦は続いていくでしょう 。わたしたちは 、ばらばらで 、言葉を持っていても 、思いはけっして 、思うようには伝わらない 。でも … …それでも人は 、道を探しつづける 。きっと 、人というのは 、そういう生き物でもあるのよ 」
    「人は 、知れば 、考える 。多くの人がいて 、それぞれが 、それぞれの思いで考えつづける 。一人が死んでも 、別の人が 、新たな道を探していく 。 ─ ─人という生き物の群れは 、そうやって長い年月を 、なんとか生きつづけてきた 。知らねば 、道は探せない 。自分たちが 、なぜこんな災いを引き起こしたのか 、人という生き物は 、どういうふうに愚かなのか 、どんなことを考え 、どうしてこう動いてしまうのか 、そういうことを考えて 、考えて 、考えぬいた果てにしか 、ほんとうに意味のある道は 、見えてこない … … 」
    次の世代に伝えていきたいことがなければ、人生なんてなんの意味もないのではないかもしれない。

  • 王獣って核みたいだ。

  • 『鹿の王』が面白くて、他の上橋さんの本にも興味を持ち、5冊一気読み。途中でなかなか止められずに、つい先まで読み進めてしまった。「大人が読んでも面白いファンタジー」とのことだが、人間と獣の生き様は、児童書扱いだけだと勿体無い。多くの大人にも読んで欲しい。
    「王獣」「闘蛇」という架空の生き物を描いているのだが、その描写がリアル。息遣いが近くで聞こえてくるかのよう。政治のために獣の生き方を制限してしまう人間の業の深さと、獣を獣のように生きさせたいと願うエリンの苦悩。獣だけでなく、エリンを取り巻く人間達・・・イアル・ジェシ・ヨハル・ジョウン・セィミヤ・シュナンなど多くの人物がそれぞれの悩みを抱え、魅力的に描かれている。
    Ⅰ(闘蛇編)・Ⅱ(王獣編)で当初完結する予定であり、後日書き進められたⅢ(探求編)・Ⅳ(完結編)。Ⅱ巻で完了した方が良かったという意見も多くあるようだが、私はⅣ巻(そして外伝)まで読めて良かったと思う。母としてのエリン、そしてエリンの想いを継ぐ息子ジェシなど、若い頃だけでは描ききれなかった世界に出会えたから。
    上橋さんご自身は、王獣編までを「獣と人の物語」で、探究編以降を「人と獣の歴史の物語」と表現されている。探究編以降は少し暗めだが、それでも暗さの中にあるわずかな希望が救い。外伝で少し気持ちを切り替えられるかもしれない。
    壮絶であり壮大な物語に、読み終わった今も心奪われている。物語を辿りながら、「エリンと一緒に生き抜いた」という表現が相応しいか。

  • 読む前から分かっていた。名作。

    闘蛇と王獣。二つの生態に関する数々の秘められた知識。それらを解き明かすことがなぜ禁じられているのか。

    エリンが考えて考えて進んで行く道の先に、きっと幸福は待っていない。それでも、私が彼女と同じ立場であれば、止まることなんて出来なかったと思う。

    もっと知りたい、考えたい。それは切実な欲求。

    なぜ世界はこのように在るのか。なぜ生き物はあのように生きるのか。なぜ人は無為に争い傷つけ合うのか。人という種が世界から淘汰されないのはなぜなのか。世界は、どこへ向かっているのか。

    思考の海に誘ってくれる良書でした。


    *以下引用*

    「人というものが、こんなふうに物事を考えて、進んでいく生き物であるのなら、そのまま行ってしまえばいい。人という生き物が殺し合いをしながら均衡を保つ獣であるのなら、わたしが命を捨てて<操者ノ技>を封印しても、きっと、いつかまた同じことが起きる。そうやって滅びるなら、滅びてしまえばいい・・・。」(p848)

    すべての生き物が共有している感情は、愛ではなく、恐怖であるということ。それは、冷徹な真理なのだろう。
    人は、獣は、この世に満ちるあらゆる生き物は、ほかの生き物を信じることができない。心のどこかに、常に、ほかの生き物に対する恐怖を抱えている。だから、己の生を消されぬよう、ほかの生き物を抑えるために様々な工夫を凝らし、様々な拘束の手段を生みだしてきたのだ。
    武力で、法で、戒律で、そして、音無し笛で、互いを縛り合ってようやく、わたしたちは安堵するのだ・・・。
    生き物の性に目を凝らしても、見えてくるのは、こういう虚しさだけなのだろう。(p893)

    (ー知りたくて、知りたくて……)
    エリンは、心の中で、リランに言った。おまえの思いを知りたくて、人と獣の狭間にある深い淵の縁に立ち、竪琴の弦を一本一本はじいて音を確かめるように、おまえに語りかけていた。おまえもまた、竪琴の弦を一本一本はじくようにして、わたしに語りかけていた。
    深い淵をはさみ、わからぬ互いの心を探りながら。
    ときにはくいちがう木霊のように、不協和音を奏でながら。
    それでも、ずっと奏で合ってきた音は、こんなふうに、思いがけぬときに、思いがけぬ調べを聞かせてくれる……。(p931)

    知識は、万人に平等に与えてよいものではない。どの職種にある者がなにを学ぶか、それを統制することで、国の秩序が保たれているのです。(p1085)

    小さな群れの貧しき平和。大きな群れの諍ひ多き豊かさ。(p1286)

    人が昔の記憶をなつかしむように、この獣も、思い出をなつかしむことがあるのだろうか。それとも、思い出になど、なんの意味もないのだろうか。(p1354)

    訳もわからず唐突に起こることほど、恐ろしいものはない。(p1355)

    (生きていくことを……)
    ゆがめるのは、間違っている。
    ~中略~
    どれほど多くの事情が絡み合っていたとしても、生き物の生をゆがめるのは、間違っている。(p1424)

    どれほど努力しても、どんな工夫をしても、きっと、人の群れは、この広大な世界の中で争いつづけるのだろう。(p1596)

    他者に勝ちたい、すこしでも他者よりよい条件で生き残りたいという衝動があるかぎり、人は戦に勝てる手段を探しつづける。(p1598)

    戦は、群れで縄張りを持つ人という獣が、生来持ってしまっている、どうしようもない衝動なのではないかという思いすらある。(p1599)

    野生の王獣は、〈児やらい〉をするのでしょうか?(p1714)

    「その言葉で包めば、包めてしまえるものは多いけれど、隠れてしまうものも、多いような気がします。それでも、かぶせてしまえば安心できる……」~中略~
    「わたしは、幸せという言葉を使って、自分がやっていることを納得してしまうのが怖いのです。」(p1766)

    自分が、親にとって、もっとも大切な存在ではないのだと気づいたときの、あの骨を噛むような気持ちは、よく知っている。(p1841)

    人は、自分たちがなにをしていて、それがどんな結果を招くのか知るべきだと思う。どんな知識も、隠されるべきではないと思う。人という生き物が愚かで…どうしようもなく愚かで、知識を得たときに、それを誤った道に使ってしまうとしても、…それでも(p1944)

    「人は、知れば、考える。多くの人がいて、それぞれが、それぞれの思いで考えつづける。一人が死んでも、別の人が、新たな道を探していく。人という生き物の群れは、そうやって長い年月を、なんとか生きつづけてきた。知らねば、道は探せない。自分たちが、なぜこんな災いを引き起こしたのか、人という生き物は、どういうふうに愚かなのか、どんなことを考え、どうしてこう動いてしまうのか、そういうことを考えて、考えて、考えぬいた果てにしか、ほんとうに意味のある道は、見えてこない…」(p1945)

    「運命に不意打ちをくらうのがいやなんです。気が小さいんですね」(p2007)

    人は群れで生きる獣だ。群れをつくっているひとりひとりが、自分がなにをしているのかを知り、考えないかぎり、大きな変化は生まれない。かつて、木漏れ日のあたる森の中で母が言っていたように、多くの人の手に松明を手渡し、ひろげていくことでしか、変えられないことがあるのだ。(p2101)

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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