イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る 雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言 (講談社+α新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • アナリストって何??って 
    いう次元の私ですが、国宝というワードにつられて読みました。

    前半は経済についての お話だったので、
    少々斜め読みしちゃいました。

    今回驚いたのは 文化財保護の修復をする業者っていうのが
    こういう風に決まっちゃうの?っていう感じでした。
    日本は木の文化で いつかは腐っちゃうから 
    その修復の技を伝承するために
    あちこちの 神宮などでは 一定の周期で 移設をしたりしているのに、
    このままの 日本ではそういう地味だけど 重要な技術の継承が 危ぶまれているのは 残念ですよね。

    こういう技術は 日本の伝統なのだから 国でバックアップして残していってもらいたいですね。

    そして、その美しい日本の建造物や芸術品を見に
    多くの海外の方が 来て 観光国として 継続できることを祈ります。

  • 外国から見た日本。
    お・も・て・な・しは失礼。
    コンセンサスは時間の無駄。
    サイエンス(数字)必須。

  • 日本の文化遺産保護の欠点。観光産業の欠陥を指摘。

  • 日本人は一読すべき本だと思う。自国で思う自分像というか日本人像は、他国からみた日本人とは大きくかけ離れている。globalな視点が必要になったときに、こういった視点に切り替える必要がある。日本は特に観光産業という意味では大きく後退している。ヨーロッパなんかでは、やはり観光スポットを担う人は、数カ国語しゃべれて、洒落を混じえながら自分たちの魅力を面白くプレゼンできるのである。そして「おもてなし」の精神。読んでみて納得である。日本におけるおもてなし精神は、他国におけるhospitalityとは異なる。やはりもてなす側の都合あってのものであることが多いように感じる。もちろんいいところもたくさんあるのだけれど。日本人が求めるもの、と、海外の人が求めるもの、が一緒だという概念は間違いであることに気づく。

  • 評判なので、読んでみました。
    常々、変だなと思っていた点についての指摘に結構、説得力がありました。
    "パースベクティブの変換"的面白さですね。

  • 世界と比較して圧倒的に少ないと言う、我が国の文化財修理予算。 ここに投資して、外国人観光客流入増を図り、観光立国化と雇用の増加へ。 考えに唸りつつ、英国人から見た日本の“不思議”への指摘がまた厳しい。 「客を納得させる」クレーム対応など、耳が痛い…。サービスを変えずに、客に合わせさせる対応が、『おもてなし』なのか。と。 相手の好みを先回りして『もてなす』 保守的な日本への厳しくも愛のある提言。

  • いやあこれは爽快、バブル崩壊後に日本にメガバンクは四つあれば良いと書いた元アナリストで、現在は寺社仏閣などの文化財修理会社小西美術工藝社社長のデービット・アトキンソンさんの日本社会への提言。日本はまだまだ遅れた部分がある、だからそこを伸ばせば成長できるとこういうストーリーだが日本社会へのだめ出しっぷりが気持ちいい。

    例えば非科学的なことを大真面目に語るミステリアスジャパニーズ現象の数々
    メガバンクの頭取がプライベートバンキング部門を新設するとコミット、どれだけ人員を割きますかという問いへの答えは「5人!」、しかし日本人アナリストは「買い」推奨(笑)なぜかというと「頭取の目つきがいつもと違っていた!」だ。日興銀の頭取は合併を主張し、その根拠として「利益も少ないし、含み益はあるけど人も店舗も少ない、しかし実態を無視して株価は高い」と説明するアトキンソンさんに「この興銀の廊下から壁から。これまで日本経済を支えてきた産業界、経済界の人々のパワーが出ている。それが利益に反映されていないだけだということが、株が高い理由です」だと。元々銀行幹部はアナリストは「俺が言ってることを黙って書けばいいんだ」という態度だったらしいがそれは外国企業には通じないわなあ。ゴールドマン時代の英語が達者な日本人社員も小難しい話を長々するが「ちょっと何を言ってるかわからない」しかしそうハッキリ言ってもその意図が相手に伝わらない。

    そんなアトキンソンさんの日本の現状の基本認識はこうだ。日本の一人当たり購買力平価GDPは世界25位、上位は主に人口が少なくはっきりした収入源のある国が並ぶ。人口が1千万を越えてくると資源国の順位が高い。そして先進国ではアメリカ53143$で10位、ドイツ43332$で17位フランス、日本、イギリスが36千$台で24〜26位だ。世界一の技術大国だというならアメリカやドイツに並んでいないとおかしい。世界一の技術を誇る業界はあっても平均するとそこそこだということだ。そしてこれから少子高齢化は進むのでGDPは下がっていく。

    ウーマノミクスはどうか。女性就業率が62.5%から男性並の80.6%に増加すると710万人の雇用と12.5%のGDP押上効果が見込めると言うのだが数千万人の人口規模の国で女性就業率が70%を越えている国はひとつもない。他の先進国のGDP押し上げ効果は日本と変わらないと言うことは現実的には日本の女性就業率はそれほど劣っていない。就業率ではなく「重要ポストへの登用」による新しい価値観の導入の方が意味があるのではという見立てだ。

    GDPに占める輸出入の割合が小さいのは成長のための大きなポイントになる。輸出ですら世界シェア3.9%でドイツの半分以下だ。しかも明らかに自動車に偏っている。そしてここからが本題で観光業には大きな可能性があるが日本は観光客が望むものを理解しているとは思えない。「お・も・て・な・し」を勘違いするとせっかくの資源が無駄に終わるよと言う話。少し早くついてもチェックインさせない客の都合より自分たちの都合を優先する高級旅館があったりする。また銀行の話に戻ると「クレームに対応するのではなく、行員は説得する役割です。」クレームを入れる人は「誤解している」らしい。アトキンソンさんは裏千家で茶道をやっておりお茶の基本は「もてなすための臨機応変」だという。普通の町の人の小さな親切の方がおもてなしとしては本筋なのだ。

    例えばクールジャパンで取り上げられる和食ブームもまだブームと言うほどの件数にはなっていない。あるサイトには和食を支持する理由に「ヘルシー」「消化しやすい」に続いて「洗い物が少ない」「調味料が場所をとらない」があったという。他のこともそうだが自分たちの望む結論へ導くための都合の良い話をくっつけるのではなく数字に基づいた分析と、細かい改善を積み重ねていくことしかない。

    イギリスでは観光客の多くが文化財を見に来るのに日本の文化財保護予算は余りにも少ない。しかもアトキンソンさんの修復には国産漆を使いましょうと言う訴えはなかなか受け入れられなかった。ただコストを下げろといのではだめで、観光客はその世界を取り巻くストーリーを体験しにくるのが「文化」なのだと。そして観光業が雇用も経済成長も呼ぶのだ。日本の予算はイギリスの1/10しかなく入札が無防備で工事終了後の検査制度がなく、つまりちゃんとした仕事もやっつけ仕事も入札金額でしか評価されていない。

    アトキンソンさんの重要な指摘は「シンプルアンサー」を求める人が多いことだろう。アベノミクスで景気が良くなるとかもそのわかりやすい例だ。逆にすぐに効果がないと切って捨てるのも同様なのだが。サッチャーもレーガンも効果が出るまで5〜7年はかかっていた。15年度の税収は予算を上回り54.5兆だとか。新規国債の発行は4兆円減らして37兆円。そして文化財保護費用は81億ほどで、観光業収入は149億ドルとマカオの1/3以下。だからといってカジノやIRに飛びつくのが「シンプルアンサー」だ。観光地でお金を落とす国民で日本に来ているのはアメリカと中国くらい。オーストラリアやヨーロッパのリピーターが来る様な施策が必要だ。外国人観光客が日本に来て食べたい料理はステーキ、しゃぶしゃぶ、すき焼き、お寿司、鉄板焼きと言う順。イメージとの違いはやはり数字に基づいた分析と細かい改善を積み重ねていくしかない。

  • オックスフォード大学で「日本文化」を学んだ後ソロモン・ブラザーズを経てゴールドマン・サックスでアナリストとして活躍。
    その後、日本の「小西美術工藝社」の社長になるという移植の経歴の持ち主。
    日本人のもつ固定観念をアナリストの経歴から数字で分析し解明し誤りを指摘する。日本人が世界第三位のGDPを誇りにしているが、これは人口が多い故の事でそれほどのことではない、一人あたりのGDPで見ると普通の国。
    安倍総理になった観光立国を目指すという方針がでている。この実現に向けてのさまざまな具体的な指摘と提案がおもしろい。それらも数字の裏付けを持ってのもの。
    第三章の『日本の経営者には「サイエンス」が足りない』の批評もおもしろい。
    観光は輸出額に算定される。現在の外国人観光客1,000万人は日本のポテンシャルからは如何にも少ない(フランスは8,000万人、中国5,500万人、タイ2,600万人など)。観光開発への提言も理解できる思しろい内容。

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著者プロフィール

デービッド・アトキンソン
小西美術工藝社社長
1965年イギリス生まれ。日本在住33年。オックスフォード大学「日本学」専攻。裏千家茶名「宗真」拝受。
1992年ゴールドマン・サックス入社。金融調査室長として日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。2006年に共同出資者となるが、マネーゲームを達観するに至り2007年に退社。2009年創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、2011年同社会長兼社長に就任。2017年から日本政府観光局特別顧問、2020年から政府の「成長戦略会議」委員などを歴任。
『日本人の勝算』『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』(山本七平賞、不動産協会賞受賞)『新・生産性立国論』(いずれも東洋経済新報社)など著書多数。2016年に『財界』「経営者賞」、2017年に「日英協会賞」受賞。

「2023年 『給料の上げ方 日本人みんなで豊かになる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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