未来の二つの顔 (創元SF文庫) [Kindle]

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#SF

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  • 1979年に発表された、2028年の未来社会を舞台に機械の反乱をテーマに描いた作品です。

    月面掘削工事における機械の誤作動を発端に人工知能の安全性に対する疑義が持ち上がり、人工知能が将来的に人類にとって脅威になるのか、はたまた心強い味方であり続けるか(=未来の二つの顔)を賭けて、アニメ『機動戦士ガンダム』に登場するスペースコロニーのような宇宙空間上に造営された巨大な人口居住地『ヤヌス』を舞台にして壮大な実験が試行されることになります。ヤヌスを支配する人工知能『スパルタクス』に対し、研究者と軍人たちはさまざまな攻撃を仕掛けることで、自主学習によって急成長するスパルタクスの行き着く姿を見届けようと試みます。

    当時の人工知能研究者の協力を得て綴られた本作は、ディープラーニングに該当する概念や飛行型ロボット「ドローン」が登場するなど部分的に現在の科学ともリンクする先見性を持ち、そのテーマは発表当時よりも、シンギュラリティなどが話題となる現在のほうがより現実感を伴って楽しめるのかもしれません。

    一方で、作品内での主人公であり人工知能研究の先駆者であるダイアーを中心とした主に科学者と軍人からなる登場人物たちや彼らの関係性の描写については、ダイアーが万能すぎる点も相まって全体的に平板で魅力に乏しく、かつ冗長に感じる部分も多く、SFというメインディッシュに対して盛られた付け合わせのパセリのような印象を受けてしまいました。また作品のストーリーとして致し方ない部分ではありますが、人工知能の危機そのものが本作の場合マッチポンプ的なものであるため、危機に対処するキャラクターたちへの感情移入が生まれにくいという点も挙げられます。

    総評としては、『星を継ぐもの』などで著名な作者の代表作のひとつにも挙げられる本作は、SF作品としての先見性に秀で、思考実験としての面白さとその結末に興味を抱かせる強みを持つ反面、主に人物描写を中心とした小説としての魅力の弱さや冗長さを感じさせる作品でもあり、本書のテーマやSF作品全般、または著者の作品にとくに興味をもつ読者が当たるべき著書と言えそうです。

  • はちゃめちゃに面白い!!!!! 人工知能の認識拡張について、現実にも起こり得るできごとを圧倒的な説得力で、ストーリーとしても面白く書き上げた傑作……
    最初から最後まで機械を機械として、安易に擬人化することなく書いているのが素晴らしい………
    登場人物の多さに戸惑って一時積読していたのですが、改めて読み終えて本当によかった

    翻訳でコンピュータ用語の「ローカル」を「地元」と訳してしまっているので、これから読む方には注意が必要かも
    今誰がどっちを向いてどこにいるのか、とか、どういう風景で何が起きているのか、とかは正直想像するのが難しいんだけど、基本的に「つまり、こういうことだな」「要するに、こうなんだな」というのを作中登場人物があとから補足してくれるので、わからないところはわかんないままでも十分楽しめるはずです
    一番最後の結論のところにたどり着くためににここまでの説明が全部あったんだな……読んでよかった……と感じる読後感………
    今の時代だからこそ新訳や新装版が出てほしい本だなと感じました

  • 基本的にはAIと人間の共生をあつかった話。1979年の作品なのに、情報パッド(これは『2001年宇宙の旅』にもある)とかドローンとかがたくさんでてくる。
    月の建築現場で自己学習型コンピュータが〝効率的〟な爆撃によって問題を解決した事件がきっかけで、全地球の制御AIが暴走しないかという点が問題になり、システムの更新が停止され、建設途中の宇宙コロニー〝ヤヌス〟をつかって、生存本能をもった自己学習システムが攻撃されたときに、どういう反応をし、人類がスイッチを切れるのかどうかという実験が開始される。実験は数千人規模の壮大なもの。AI〝スパルタクス〟は人類による電源切断の嫌がらせに対して、最初は自己を分散して電源を確保するなどの防御的反応を示すが、自分を攻撃してくる〝影像〟=人類が元凶だと推論すると、積極的に人類を殲滅にかかり、武装ドローンやら、宇宙空間で使える兵器やらを考案して、以後は泥沼の戦闘に突入していく。最終的には、ハッピーエンドなんだけど。

    主人公はAI研究者のダイアー、男運の悪いプログラミング研究者のキンバリー、ちょっとオタクな研究員のクリスとロン、リンゼイなどの軍人たち、そして、ヤヌス計画の記録を残すために参加している文系のローラ(ダイアーと恋に落ちる)などがでてきて、それぞれに魅力的。

    翻訳は読みにくい。何となく思うが、理学系の人が訳したSFはわかりにくい。外国語が一対一で翻訳できると思っているような節があると思う。原文も難しいのだろうが、もうちょっと翻訳の腕をみせてもらいたいところである。
    新訳が出たら、もう一冊買うかも。

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