ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (電撃文庫) [Kindle]

著者 :
制作 : さんば挿 
  • KADOKAWA
4.18
  • (4)
  • (6)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 42
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (372ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • カトヴァーナ帝国とキオカ共和国の間で繰り広げられる壮絶な戦争を背景に、一風変わった少年イクタの物語を描くファンタジー戦記シリーズ。イクタの戦略的な思考は戦場だけに留まらず、人間関係や政治的な駆け引きにも及びます。彼がどのようにして敵を出し抜き、同時に仲間たちの信頼を勝ち取っていくのかは、この物語の中でも特に魅力的な点です。

    本書のテーマは「才能とは何か、またそれをどう生かすべきか」という問いに対する探求です。イクタの卓越した知性と独自の哲学が、戦争という極限状況の中でいかに彼自身を、そして周囲を変えていくのか。その過程が深く考えさせられるのです。

    まず、イクタのキャラクターは、表面的には怠け者で女好きという特性を持ちながらも、実は卓越した戦略家であり、深い人間理解を持つ人物として描かれています。彼のこの二面性は、一見矛盾しているように見える特性が、実は人間の複雑さ、そしてそれぞれが持つ多様な能力や価値観を象徴しているとも言えます。これは、「人は一面的には理解できない」という哲学的な問題提起にも繋がります。

    次に、物語の舞台となる戦争状態は、イクタや他の登場人物たちを取り巻く社会的、政治的な諸問題を浮き彫りにします。戦争の理不尽さやその中での個人の選択、倫理的なジレンマなどは、古今東西の哲学者たちが議論してきたテーマであり、この物語を通じて現代におけるそれらの問題への新たな洞察を得ることができるかもしれません。

    さらに、イクタの成長過程では、「名声」と「実際の自分自身」との間のギャップに苦しむ場面も見られます。これは、「自己同一性」と「他者からの認識」の間の緊張関係を示しており、私たち自身が社会的な役割や期待と自己認識とをどうバランスさせるかという問題に直面する際の参考になります。

    私が本書を読んで、特に印象深かったのはイクタとヤトリシノとの関係です。二人の間に流れる微妙な心情や、お互いを深く理解しながらも複雑な立場にあることが描かれている部分です。イクタがヤトリシノを守るため、そして彼女自身が持つ信念を尊重するために苦悩する様子は、この物語の中でも際立って感動的でした。

    総評として、「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」はただのファンタジー戦記小説に留まらない深みを持った作品だと思います。イクタが示す「才能」とは何か、それをどう生かすべきなのかという問いかけは、読んだ後も長く心に残ります。彼の挫折や成功を通して見えてくる人間性の多様性や複雑さが、この物語を他と一線を画すものにしています。また、細部まで計算され尽くした戦術や戦略が織り成す戦闘シーンは圧巻であり、そのスリリングな展開には目が離せません。

    イクタや仲間たちの経験から学ぶことで、私たち自身も困難な状況下でどう行動すべきか、またそれを通じて何を学び取ることができるかを考えさせられました。

  • 主人公たち以外に漂う昭和臭が凄いな!
    盲信からの思考放棄とか特に。

    相手の視野を狭めて選択肢を潰し、同罪であるかのように誘導してから共犯を持ちかける・・・・・・。
    ゾクゾクする話術だね。

    暴力的には全く相手にならない状況で、話術のみで脅すクソ度胸。
    自分にもこんな胆力が欲しい。

    人材は人財
    物の財は失っても取り戻せるけど、人の財はそうそう取り戻せないでしょう。
    理解していな上役って現実でも多いよね。

    論理が理解できる人間とは話し合う価値がある。
    論理が理解できずに感情優先の人間とは話しても時間のムダ。
    言葉が通じる通じないは、言語が同じかどうかってことじゃないよね。

    非常識なのではなく常識というフィルターをかけていないだけ。
    それだけで選択肢は増えるから不思議。
    みんななんで自分から縛りプレイしたがるんだろうね。

    楽をする。
    ということには、人類はいまだかつて一度もうち勝てたことがないらしい。

  • やる気の無い、でも頭の切れる人物が主人公の作品は
    面白い。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

2010年に「神と奴隷の誕生構文」(電撃文庫)でデビュー。「スメラギガタリ」シリーズ(メディアワークス文庫)、「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」シリーズ(電撃文庫)を刊行。

「2023年 『七つの魔剣が支配するXII』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宇野朴人の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×