禁忌 [Kindle]

制作 : 酒寄 進一 
  • 東京創元社
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感想・レビュー・書評

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  •  裁判シーンに入ってからはとても面白いのだけど、それまでが長い……。最初から「ある男の半生記」だと思って読めば大丈夫だったかも知れないのだけど、いつまでこれが続くんだろうと思ってしまった。
     この小説の肝は裁判での弁護士と刑事のやり取りだと思うし、このテーマが後の著作『テロ』でもっと深く取り上げられているんだろうなと思うと、そういう意味では興味深いのだけど、この話自体は「お前は結局何がしたかったんだよ……」と容疑者に聞きたいだけで終わった。
     シーラッハは基本的に読者がスッキリするような結末を用意してくれなくて、それがとても現実的で面白いのだけど、前半の容疑者の半生も、何ら彼を理解する材料にならないし、この内容なら短編で良かったかな……いや、これだけ一人の人物の半生を詳細に知らされたところで、何も他人には理解など出来ないのだという事を表しているのか。シーラッハだから、そんな気がしてきた。現実に何か事件が起きた時に、被害者や加害者の事を根掘り葉掘りする事が何の意味もないという事を教えているのか。
     タイトルの『禁忌』も、あれもこれも当て嵌まるような気がして、一体どんな意図で付けられたのか分からず、日本の読者向けにわざわざ書いてくれた後書きも、何だか噛んで含めるような感じで、シーラッハの頭脳に屈伏させられた気分。
     この表紙の顔にも深い意味があるそうなのだけど、訳者後書きを読むまでは全く気付かなかった。自分の未熟さや浅はかさをこれでもかと思い知らされた。
     話の内容そのものより、読後に色々と考えさせる目的の小説なのだろうな。

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