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感想・レビュー・書評
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再読するであろう良書。
明治初期の国家運営の制度設計から当時の「官僚像」まで描いた力作。
誰か一人を題材にしたものよりより明治、大正史を俯瞰できる。
藩閥→実力主義→官僚制→民意→政党制→ポピュリズム、腐敗→政党と官僚の連携→制度充実→腐敗(省益=あらたな閥)
どの制度も必ず腐敗し、どの時期に今があるのかを常に考えることが重要か?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
紙版を読了したことを忘れて、Kindle版を購入してしまった。
明治政府誕生前後から大正時代までの間に、日本において官僚(および制度や行政機構)がどのように成立したのかを、丹念に描き出す。新書らしからぬ硬派な中身と厚さの新書である。
・徴士は大久保、西郷など維新元勲らによる第一期とそれらのもとで大量登用されて第二期がいる。
・大隈重信は外交問題で成果を認められた。信教と布教の自由を訴えるパークスを代表にたてた列強に対して、大隈はキリスト教徒の意義を認めた上で、国家の統一の妨げとなった歴史をあげつつ、懸念を表明したそう(p38あたり)
・1870年7月に布告が発せられ、大学南校という洋楽教育機関に各藩からのエリートをあつめた課程を設けることとなる。これを貢進生という。ここで抜群の博覧強記ぶりをはっきしたのが鳩山和夫であり、鳩山一族繁栄の足場をつくった。1874年に貢進生の中で選抜された一期10名が留学する。留学先は米英仏の超一流大学であった。
官僚制度の歴史をいきいきと描いていて読み物としておもしろい。当時のエリートたちは留学した先で成績優秀者として表彰されたものが少なくない。当時の日本と列強の国力や知的水準の差を考えると、彼らがいかに抜きん出た知力をもっていたかが察せられる。
「地方閥の形成ー長野県の場合」として、長野県出身の高文官僚の数などのデータが掲載されているのが長野県民としてはうれしいところ。青木一男の名前もでてくる。