- 本 ・映画
- / ISBN・EAN: 4959241756848
感想・レビュー・書評
-
終戦近い神戸は連日、B29の空襲に見舞われていた。幼い兄妹・清太と節子は混乱のさなか、母と別れ別れになった。
清太が非常時の集合場所である国民学校へ駆けつけると、母はすでに危篤状態で間もなく息絶えてしまった。
家を焼け出された兄妹は遠縁に当たる未亡人宅に身を寄せた。
しかし、うまくいっていた共同生活も、生活が苦しくなるとしこりが出てきた。未亡人は学校へ行かず、防火訓練にも参加しないでぶらぶら遊んでいる二人に対して不満をぶつけるようになった。
清太は息苦しい毎日の生活が嫌になり、ある日節子を連れて未亡人の家を出た。そして、二人はわずかの家財道具をリヤカーに積み、川辺の横穴豪へ住みついた。兄妹は水入らずで、貧しくとも楽しい生活を送ることになった。食糧は川で取れるタニシやフナ。電気もないので明りには、蛍を集めて瓶に入れていた。節子は幼心に母の死を知っており、蛍の墓を見ながら偲ぶのだった。
しかし、楽しい生活も束の間、やがて食糧も尽き、清太は畑泥棒までやるようになった。
ある晩、清太は畑に忍び込んだところを見つかり、農夫にさんざん殴られたあげく、警察につき出されてしまった。すぐに釈放されたものの、幼い節子の体は栄養失調のため日に日に弱っていった。
清太は空襲に紛れて盗んだ野菜でスープを作り、節子に飲ませたが、あまり効果はなかった。
ある日、川辺でぐったりしていた節子を清太は医者に診せたが、「薬では治らない。滋養をつけなさい」と言われただけだった。
昭和20年の夏、日本はようやく終戦を迎えた。
清太らの父は海軍にいたが、生還する望みは薄かった。
清太は銀行からおろした金で食糧を買い、節子におかゆとスイカを食べさせるが、もはや口にする力も失くしていた。
節子は静かに息をひき取り、清太は一人になったが、彼もまた駅で浮浪者とともにやがてくる死を待つだけだった。
直木賞を受賞した野坂昭如の同名小説を高畑勲が映画化した戦争アニメ。
戦時中の日本を舞台に、両親を亡くした幼いふたりの兄妹が懸命に生きる姿を描く。 空襲や物心両面で貧しくなり、主人公二人が追い詰められ、畑からだけでなく空襲の際に空き家になる所から泥棒するまで堕ちる展開が、リアリスティックで戦争の恐ろしさを伝えてくれる傑作アニメ映画です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
見終わったら
-
2007年07月21日 15:47
とにかく観てほしい。
老若男女、職業問わず、政治家も教師も弁護士もコンビニ店員も……。
これを観たら、改めて戦争について考えさせられるのではないだろうか。
反戦アニメと言ってしまえばそれまでだが、実際にこういうこと、似たようなことは、たくさんあったのだと思う。
あの兄妹は、どうして自らおばさんのところから離れたのか、疑問に残る部分もあるが、戦時下という状況に置かれたことがないものには、分からないことがあるのかもしれない。
憲法9条のことや軍隊のことやら、いろいろ言われているが、
実際、戦争になったらこういうことになるんだ。と、この「火垂るの墓」を観て肝に銘じてほしいほどである。
あと、平和な未来のためにもぜひ学校の教材の一部として、使っていただきたい。 -
こんなに辛い話は滅多にない。しかも、こんなことが現実に起きていたわけで。これから生まれる子供達が、こんな目に遭わないようにと切に願う。
-
観るたびに「たら・れば」を考えてしまいます。お父さんがそばにいたら、お母さんが亡くならなかったら、おばさんがふたりの面倒を見続けてくれていたら、誰かに頼れたら、そもそも戦争がなければ……。登場人物の誰もが生きるのに精一杯なだけで、誰も悪くないはずなのに、やるせない。
-
見終わったら