イスラム国 テロリストが国家をつくる時 (文春e-book) [Kindle]

制作 : 村井章子・訳  池上 彰・解説 
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感想・レビュー・書評

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  • 「イスラーム国の衝撃」より先にこちらを読んだ。内容的に少し浅い感じがするし、引用が多く「現場感」がないのが残念。「イスラーム国の衝撃」とは違った視点でISILを分析している。あわせて読むべき。

  •  2014年大みそかの池上彰氏の年末番組を見ていた際に、紹介されたため手に取った。イスラム国で湯川遥菜氏と後藤健二氏拘束の一報が流れた折であり、イスラム国をいかなる実態を持った集団であるのかを判断する目的で再読した。
     著者のLoretta Napoleoni氏はイスラム国が歴史上初めてテロリストが国家をつくることに成功するかもしれないと発言し注目を集めた。
     序章のタイトルが「決算報告書」を持つテロ組織。つまりテロリスト集団でありながら国家としてすでに機能していることを表している。
     このイスラム国であるが、背景には冷戦後の二強体制崩壊による混沌としたグローバル社会の成立と9.11以後の中東社会の混迷、そこにSNSに代表されるIT技術が導入されることにより、「今風」のテロリスト国家が出来上がったといえる。
     衝撃的であったのは、イスラム国内部では虐殺した捕虜の首を蹴ってサッカーをしてきたという記述。思わず人間としての道徳心を疑いたくなるだろう。しかしこれは欧米視座からの話であって、欧米がイスラエルに巨額の武器提供をし、犠牲者を生んでいるにもかかわらず、それに関しては全く世界的に報道されていない。1人の首で遊ぶのと数百人単位の死体。前者は旧西側では報道され、後者は全く報道されない。数が問題なのか、あるいは人間の扱い方が問題なのかを深く考えさせられる記述であった。「首でサッカーをするとは...」と絶句せざるをえないが、われわれが属する西側諸国は、その何百倍の命をイスラエルの代理によって失わせているということも知る必要がある。そのように考えると、ニュースで報道されているように、イスラム国があまりにも残虐的と果たして言うことができるのだろうか。
     欧米諸国はイスラム諸国に対して自らの利己主義をもとにスポンサーとなってきた。混沌とするグローバル社会にあって一方を味方につければ、他方は敵となるが、今日ではいつそれが統合、逆転するかわからない。欧米の安易な援助がイスラム国というこの悲劇を生んだ結果といえるだろう。いかに自分の視座が欧米中心に偏っているのかを考えさせられる一冊である。

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