- Amazon.co.jp ・雑誌
- / ISBN・EAN: 4910077010351
感想・レビュー・書評
-
文藝春秋の3月号を読みました。
今月号で面白かったのは、以下のものでした。
①イスラム国との「新・戦争論」
②中国の野心は核でしか止められない
③一神教と多神教
概略は以下の通りです。
①イスラム国との「新・戦争論」:池上彰と佐藤優の対談
1月7日のフランスでの連続銃撃テロ事件~1月20日の後藤健二さんの誘拐事件までをベースに、イスラム国の発生、彼らが生まれた土壌、彼らの戦略、さらに関係国(欧米以外そして、サウジ、イラン、シリアなど)の錯綜した思惑をつまびらかに紐解いていく。
その濃密な内容に脳をガタガタ揺さぶられるほどに刺激を受けて面白かった。佐藤優は外務省時代にはこの地域を担当したこともあり、その分析力には舌を巻く。
一方池上彰も、イスラム国関連の本で、内容が濃いので評判の「イスラム国 テロリストが国家を作る時」(ロレッタ・ナポリオーニ)の文末の解説を彼が書いており、また殺された後藤健二さんとは中東関係の仕事では10年以上一緒に仕事をして、大手マスコミが手を引いた戦闘地域でのフリーのジャーナリストの立場・役割についても理解がある。
池上彰のように有名になればなるほど、外部から情報が入ってくるようなネットワークが出来上がるのが、実感として分かる。
【ポイント】
○1月7日のフランスでの連続銃撃事件の翌日にイギリス情報保安局のパーカー長官が「シリアのアルカイダ系グループが、西側に対する無差別攻撃を計画している」と発言⇒この事件を持って「イスラム国」は戦争を始めたという意味を含んでいる。
○2億ドルを受け渡そうとすると、百ドル札ならデパートの大きい袋で400袋。金塊なら4.5トン。「イスラム国」は2億ドルという無理な要求をすることで、日本国内および、日本とヨルダンの分断を図っている。
○安倍首相のイスラエルでの会見の数時間前にユーチューブに映像を投稿しており、会見の時間まで計算している。
○「アルカイダ」は主敵をアメリカやイスラエルなど外部に置いたのに対し、「イスラム国」はシーア派を殲滅しなければイスラム革命は出来ないという「内ゲバ」の論理を持っている。
○イスラム国の今後については、イスラム国のソビエト化が問題となる。初期の「コミンテルン(共産主義インターナショナル)」つまり、マルクスとエンゲルスが屋根裏で作った思想に世界は70年間煩わされたのと同じで、イスラムの場合は、さらに想像を超える悪夢になる。中途半端な対話をやるべきではなく、完全に解体しないといけないと断じる。
○対「イスラム国」へ、有志連合に入っていないイランが本格的に地上部隊を入れ、それをアメリカが黙認する可能性もある⇒その結果イランの核開発を止めさせる圧力がかけにくくなる⇒イランに反発するサウジの核の保有まで話が拡大する可能性がある。
②中国の野心は核でしか止められない:(シカゴ大教授)ジョン・ミアシャイマーと船橋洋一との対談
・中国の一人当たりGDPが台湾レベルまで到達したら、米国の2倍から3倍の富を蓄積でき、これまで見たこともない国が地球に登場する。
・米国のイラン接近は、イランと中国の接近を何としても避けたいからで、逆にウクライナ危機では、手を結んでおくべきロシアを中国に接近させてしまっている。
・日本の最大の安全保障リスクは台湾有事に巻き込まれることである。
この台湾有事ことは、国内では政府もマスコミも誰も喋らないのですが、海外から見ると当然と見えるのでしょうね。
③一神教と多神教:塩野七生
巻頭の「日本人へ・142」シリーズが偶然にも後藤健二さんの事件と重なり、タイムリーな読み物になった。
塩野七生曰く、「宗教イコール平和的という思い込みは捨てたほうがよい。宗教とは、それが一神教であればなおのこと、戦闘的であり攻撃的であるのが本質である。平和的に変わるのは天下を取った後からで、それでも他の宗教勢力に迫られていると感ずるや、たちまち攻撃的に戻る」「それでキリスト教世界は、一神教を守りながらもそれによる弊害からは逃れる道を探った。見つけたのが、政教分離である・・・(略)・・・大人になるとは、この種の抜け道を見つけ出すことである」
イスラム過激派がこの種の抜け道を見つけ、大人になるのは、何時になることやら?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
テロリストとは取引してはならないという大原則がある以上、交渉は常に難しいものとなる。日本政府は取引に応じると知られたら、世界中の観光地で日本人観光客を狙った誘拐事件が多発する。絶対に妥協してはならないが、賢くなくてはならないという非常に難しいかじ取りが要求された。しかし知恵は絞れば出てくる。
-
いつもどおり機内の時間つぶしに読む。外交/安全保障系の話題が多いですな。
-
池上さんと佐藤優の新戦争論。
-
芥川賞受賞作の小野正嗣「九年前の祈り」を読むべく購入。なるほど、受賞作として、充実した小品でありました。
-
アップルは「第二のソニー」になる
川端 寛