タックス・イーター-消えていく税金 (岩波新書) [Kindle]

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  • 税金に群がる族議員や事業官庁といったタックスイーターの行動原理を、官僚の予算策定
    の仕組みや族議員の予算編成に置いての差配など税がどのように使用されるかを通して詳
    細に著した労作。筆者自身の問題意識とも合致していたので、前著、タックスヘイブンより
    も充実した読書を堪能することができた。

    前著ではタックスヘイブンの詳細な仕組みは著してなかったが、公になっていた 2 つの事案
    をわかりやすく解説しているのも良い。

    高度経済成長期で実現した税収の増加。それを前提に予算を要求する事業官庁の姿勢によ
    り、国家財政の実質的な破綻を招いたことに著者は強い問題意識を持っている。また、平成
    の行政改革により農水族の力の低下など問題点を一方では改善しつつあるものの、もう一
    方では、執筆時点において安倍前首相が主導していたアベノミクスにより、再び財政規律が
    緩むのではと危惧している。というか抜け穴は常に開かれている、というように著していた
    と記憶している。

    では、無駄な支出を抑制して税に群がるタックスイーターを撲滅させることが可能か、とい
    うと相当難しいことは自明だろう。

    予算はゼロベースで作成するという規定があるが現実には前年度の予算を前提に作成して
    いる(これを粘着性とも言えるのではと私は推察していたが検索しても出てこなかったので
    間違い)。予算が削減されると族議員が支援団体に顔が立たないと官僚を詰める。そのよう
    な原理から予算が前年比アップを達成することになる。また特別会計に付け替えることに
    よって、巧妙に予算を獲得することも可能だ。そして債務が膨張していく。

    このような問題から結果、民主党政権が誕生したが、政権獲得前の大言壮語が仇となり短期
    間で下野し、自民党政権が政治舞台において政権党としての地位を取り戻し、それを謳歌し
    ている。東京オリンピック、コロナ対策と湯水のように公金が使われたのは記憶に新しい。

    ここで私見を述べると、現状、財政が拡大しすぎて、広範囲に及ぶ一般市民が既得権益者に
    なってしまっているのではないだろうか。そのため思い切った行政改革はかなり困難ではな
    いかと考える。複雑に入り組んだ利権構造を一気に解体すると、その既得権益者の結束も固
    まり、選挙に悪影響を与えるのではないかと想像する。

    この状況を止めることができないとどうなるか。増税による政府権力のさらなる増進、また
    はその破滅…。いずれにせよ未来は暗いのではないかと思わせる本書であった。

    また、このような本で国の債務を GDP 比でよく比較するが、ストックである債務とフロー
    である GDP を比較する明確な根拠がよくわからなく、資産と負債で比較したほうがいいの
    ではと、簿記を少し学んだ私は生意気にも疑問が湧くのである。

    しかし ROE を考えてみると純利益はフローで(繰越利益剰余金にもなるからストックかも
    しれない)、自己資本はストックだからそういう比較方法も当然ありだなと思った。いずれ
    にせよ、国際収支の黒字は財政赤字を埋め合わせているのかな。よくわからない

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