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- / ISBN・EAN: 4988113832397
感想・レビュー・書評
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ポランスキーは好きなので、観る機会があれば必ず観るようにはしてる。『テナント』、観た結果好きな映画でした。
作品って色んな評価軸があると思う。「面白いし好き」「面白くないけど好き」「面白いけど嫌い」など。「面白くないし嫌い」「どうでもいい」が評価としては最低かと。
で、『テナント』はそこまで面白くはないけど好きです。というのは、この映画ってポランスキーらしさが一番よく出てると思うから。主演も本人だし。
ポランスキーってずっと同じモチーフの映画を撮ってる。密室、アパートやマンションの一室の話。
『反撥』『ローズマリーの赤ちゃん』『テナント』『おとなのけんか』……『水の中のナイフ』や『戦場のピアニスト』なんかもそうか。
で、これはポランスキーの体験してきたことによる。
ポーランドのユダヤ人で、ゲットーから逃れてフランスに行ったけどそこでもユダヤ人狩りに遭う。
映画監督として成功したけど、アメリカでシャロンテート事件で奥さんを殺される。そして少女に対する淫行疑惑、その直前の映画が『テナント』です。
この頃はまだアメリカ脱出前だけど、ポランスキーは根無し草みたいな人生をずっと送ってる。
この映画でも、フランスに来たポーランドのユダヤ人、ポランスキーの行きづらさや孤独がものすごく出てる。
最後の方にユダヤ人狩りを再現したようなシーンもあるけど、まるで魔女狩りのように描かれてる。
面白さのピークは映画館のシーンで、あとは下がって行く。あそこが最高。メガネっ娘のイザベルアジャーニが最高にかわいくてエロい。ヌードとか一切ないけどエロい。
映画館で『燃えよドラゴン』をふたりで観るけど、ジャッキーチェンが雑魚敵としてやられる有名なシーンで、ジャッキーの顔がはっきりわかるから面白い!
この映画のキーワードは、たぶん無限後退だと思う。3箇所ぐらいその描写があって、ひとつめはアパートのトイレから自分自身を見るシーン。ふたつめは看板の絵。みっつめはラスト。
なんでエジプトとかミイラなのかはよくわかんなかったです。原作はあるらしいけど。
それと、この映画も『めまい』『裏窓』『サイコ』を混ぜたような映画です。ヒッチコック作品はもう、色んな人がフリー素材のように元ネタとして使いまくってますね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
怖いというより生理的な嫌悪感を抱く。若い頃安アパートに住んでた頃を思い出してしまった。当時ちょっとした音に敏感になっている自称病弱のおばさんや嫌がらせされたと大騒ぎするおじさんなんかがいて、この映画にダブってしまってつらい…
まあ個人的なことは置いといて、監督兼主演のポランスキーがいい演技してます。真面目で気が弱いのがよく分かり、だんだん病んでいくのがリアル。疑心暗鬼になった主人公目線だとどこまでが現実でどこまでが妄想か区別がつかないけれど、実際恐怖とかって当事者がどう受け取るかだからねぇ。真相は分からないけれど、物音一つ、視線一つにでも恐怖を感じれば周りがなんと言おうともその人にとっては死ぬほど怖いものです。 -
2015/6/16 古い映画だけど…準新作⁈
ロマン.ポランスキー監督 作品というだけで借りてしまった。以前に観た事あるような?デジャブに捕らわれながら観てしまった。主演もポランスキーだった。古いと言えど なかなか 魅せる映画でした ミステリーかと思いきや サイコみたいな怖い映画でした。途中から ちょっと 思わぬ方向に向かうので ミステリーではなくなった感じが残念だったけど…ホラー作品として観れば面白いかも まだ 若い頃の作品なのかな 監督としての
才能が光る作品ですね。最後の方はテレビぽくなってしまったけど…ポランスキーは俳優としても なかなか味がありますね。 -
いやー、これは怖かった。気ままな都会暮らしをしようとアパートを借りたのだが、引っ越したアパートでは大家ばかりか近隣の住民たちまでもが彼の暮らしぶりに介入してくる。近所のカフェに行っても、彼の好みのタバコ(ゴロワーズ)はいつまでも置いてくれず、マルボロを押しつけてくる。で、注文も聞かずにホットチョコレートを出してくる。もともときまじめな主人公はそうしたアパートの掟にできるだけ従おうとし、また、行きつけのカフェでも言われるがままにホットチョコレートを飲む。だが、そうした生活の中でだんだん神経衰弱を起こしてくる。そもそも彼が住んだ部屋の前の住民は窓から飛び降り自殺をした女性で、その女性の遺品がアパートの中にある。そんなこんなで彼のアイデンティティは崩壊していくのであるけれども、監督兼主役のロマン・ポランスキーの演技が真に迫っていて、本当に怖いのでありました。もうちょっと尺が短くてもいいと思わないでもないが、これはホラー映画としては傑作でありますな。