夏の庭-The Friends- (HDリマスター版) [DVD]

監督 : 相米慎二 
出演 : 三國連太郎  坂田直樹(新人)  王泰貴(新人)  牧野憲一(新人)  戸田菜穂  淡島千景  笑福亭鶴瓶  寺田農  柄本明 
  • オデッサ・エンタテインメント
3.35
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4571431211434

感想・レビュー・書評

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  • 昨年8月ある機関紙に投稿した内容です。
    時々こう聞かれることがあります。「あなたの生涯ベスト作品は何なの?」たくさん映画を観ているのだから、ベストならばいい作品に決まっているからそれを観たい、という下心(推定)のようです。今までもそういうベスト作品を幾つか紹介して来ました(「レオン」「七人の侍」)。でもそういう時に、いつも頭に浮かぶけれども紹介するのをためらってきた作品があります。レンタルにもDVDにもなっていない幻の作品だったからです。ところが、最近DVDが発売されました。相米慎二監督の「夏の庭」です。

    基本的にいい作品なのですが、誰にとっても生涯ベストになるかと言うと、おそらく否です。湯本香樹実の同名原作があり、新潮文庫「夏の本」にも選ばれています。私は94年に「岡山を考える市民のつどい」前夜祭の特別上映で観ました。その1度観ただけなのに、その後何度も思い返すことになる特別な映画になってしまいました。

    神戸の小学校6年生の3人組の1人がある日こうつぶやきます。「人は死んだら、どないなるんやろ」それで近所に住む今にも死にそうな傳法喜八(三國連太郎)の生活を見張ることにするのです。はじめは少年たちを怒る喜八だったのですが、やがて彼らとの交流が始まります。

    私も、小学生の時に突然同様の疑問に襲われました。私の近所の髭ぼうぼうの一人暮らしの老人が死んだのです。言葉を交わしたことはなかったのですが、親類の葬式さえ出たことがなかった私は、この「死」に驚き恐怖を感じました。以後この怖さをずっと持て余す事になります。大人になると不思議と何とも思わなくなるのですが、映画を観てあの時の気持ちを思い出しました。そして髭のおっちゃんと話をした気持ちになったのです。

    映画ではなんやかんやあって、喜八は小さな白い箱に収まります。そのとき葬儀屋(柄本明)が言う「死は穢(きたな)いものではなく、尊敬されるべきものなんです」との一言が忘れられません。

    最初は荒れ放題だった老人の家の庭を子供たちは草を刈り、部屋を綺麗にする。最後にはコスモスの咲く可憐な庭として残ります。24年前には、小学生の気持ちで観た私でしたが、今回見直して「私も、三國連太郎のように死んで行くかもしれないなあ」と思ってしまった生涯ベストでした。(レンタルはどうやらどの店にも置いていません。DVD3800円)

  • 神戸っ子の仲良し3人組は揃って小学6年生。祖母の死を一人から聞くことで死に興味を持ち、近所の独居老人に近づいていきます。夏休みの間に互いの距離が次第に近づき、老人から戦争体験や奥さんの話を聞き、老人が過ごしてきた人生を知り、親近感を深めます。夏の終わりに子供たちが老人宅を訪ねると、老人は子供たちを迎えるぶどうを用意したまま死んでいました。通過儀礼を描いた作品であり日本版「スタンド・バイ・ミー」です。相米監督は「お引越し」も観ましたが、子供たち目線で人生の成長過程を捉えるのが巧みですね。

  • ・相米が「お引越し」の翌年に監督した作品。引き続き子供映画として対になるはずだが、やや小ぶりで原作に沿った作り。つまり「ションベン・ライダー」的なヤケクソ演技指導はない(唯一、歩道橋の欄干の上を歩かせるくらい)。監督としての試行錯誤期だったのかしらん。
    ・原作からの逸脱としてはおそらく、病院で迷って霊安室へ……というところ。ここは「セーラー服と機関銃」の唐突・異様な室内シーンを思い出したが、そういはいっても児童文学に差し挟まれてもおかしくないレベルの幻想場面だった。
    ・実はこの病院のシーンは見覚えがある。1994年公開なので、95年くらいにWOWOWとかで放映していたのを、途中まで見ていたのかもしれない。
    ・私は1983年生まれなので、当時12歳くらい。作中の子供3人組と、年齢も時代もバッチリ呼応しているので、ノスタルジー込みで嬉しくなってしまう。緑。滲む光。蝉の声。声変わり前のかんだかさ。那須正幹「ズッコケ三人組」っぽい配置(性格はちょっとズレているが)。
    ・滲む緑や光の感じは、撮影やカメラの達成だろう。で、確認してみたら、撮影は篠田昇。見覚えがあるが、岩井俊二ラインで聞いたことのある名前だ。相米と組んだのは1985「ラブホテル」と本作。で、「打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか」は違うが、本作と同年の1994「undo」以降、8作も岩井と組んでいる。
    ・……自分の郷愁って、自分の中にあるものではなくて、この人たちの手で創り出されたものにあるのでは? と思ったりもする。
    ・庭に紐を張ってシャツなどの洗濯物を干したら、その白さが発光するくらいで、途轍もない美しさ。さらにギターの音楽(原作のタイトルの着想元)が彩り……なんてことない限定された場所なのに、無限に広がる感じがして、これぞ映像の魔法。
    ・3人と老人との交流において、家屋や庭を直して綺麗にする、その過程が楽しく描かれる。老人側から一段階抽象的に捉えれば、再生であり、同時に死の準備、ということであろうが、子供たちにとっては、秘密基地作りの気分だったのではないか。年配者にとって時間は限られているが、子供の時間はたっぷりある。このギャップこそが、原作や映画で言外に描かれる世の真実ではないかと思った。子供時代への郷愁って、どれだけ浪費してもたっぷりあった時間感覚への愛惜、ということなのだろう。「いつか死ぬ」が実感されたときが、大人になるということか。
    ・作中、戦争の記憶や、後悔、戦争後遺症、夫婦の件などが描かれ、そちらに重点を置いた感想もあるだろうし、話の筋を追えばそちらがテーマと言えるだろうけれど、個人的には先述した深層のテーマを感じ取った。
    ・ちなみに老人が戦争について語る場面。台風の夜、子供たちが老人の家に集まって、戦争の話をせがむ。老人サイドからすると語りたくない過去に向き合うことであり、子供サイドからすると「人殺したん!?」というある種野次馬的な興味。もちろんその後、元夫婦の牽引役になる彼らなので、下卑た野次馬ではないが、ここにもギャップを感じた(「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」のアルを連想)。映像的には、窓硝子が木枠で分割された鏡のようになって、バラバラに寸断された四人が映るのだが、この画の不穏さといったら凄かった。
    ・その不穏さ、取り返しのつかない感じは、ラストでも感じた。あんなに楽しかった再生家屋が、老人の死後、ずんずんと崩壊していく……。その映像では描かれないが、カメラの外で少年3人はそれぞれに成長していき、あの日々の輝きを顧みることはほぼなく……。でもいつか、彼らが草臥れた中年になってから、回想した思い出が、この映画のようであってほしい、と思う。
    ・三國連太郎と淡島千景の演技とか、見所多数で、決して派手ではないが、小品だからこそ強い輝きを放つ作品だと思った。
    ・黒沢清好きにとっては、清が湯本香樹実原作「岸辺の旅」を映画化するとき、亡き師匠のことを思わなかったはずがないので、いずれ影響関係を考えてみたいところ。

  • 3人の子供たちと、一人暮らしのおじいちゃんの交流を描く。相米慎二監督作品。

    子供たちの視線で瑞々しい、カメラワーク。
    そして、アサド兄弟のギター音楽がすばらしい。
    素人の子役たちの演技と共に、この映画のすがすがしさを決定づけている。日本の話(しかも関西の)に、これほどまでブラジルの音楽が似合うとは。

    私は有名な原作も読んだことがないので何とも言えないが、三國連太郎の「おじいちゃん」は、少しかっこよすぎるのではないだろうか。もっとどこにでも居そうで、ひょろひょろしたお爺ちゃんが、話に似合いそう。

    死、戦争という重いテーマを扱いながらも、少年たちの未来に希望を見いだせる、力強く、躍動感あふれる映画。

    原作は小学校の課題図書にもよくなっているようだが、現役の小学生が読むとどう感じるのだろう。大人の私からすると、こういう経験を小学生がしてほしいなと思うが、自分が小学生のころにこういう話を聞くと、絵空事というか、大人からの理想の押し付けをされている気分になった。

    とにかく、まずは小説読んでみなければ。

  • 原作者の作品は、「夏の庭」「ポプラの秋」のに作品を読んでいます。二作品とも子供とお年寄りの交流を通して、命を意識させてくれるもなです。3人の少年たちは、演技者としては、優れているとは思えないんですが、それが自然に感じられます。三國連太郎さんの演技は、やっぱり迫力があります。「死」から遠い彼たちが、死に近づいていく老人から受けた影響の大きさを感じます。原作者は、なぜ少年少女の気持ちを、忘れてないんでしょうか。

  • 偏屈な爺さんと少年たちの心の交流を描く、「ウォルター少年と夏の休日」みたいな話。

    想定通りのストーリーではありますが、3人の少年がとても良い子でしたね。

    驚いたのは、心を閉ざしてた爺さん(三國連太郎)が、戦中に人を殺したことを生々しく告白したこと。従軍経験のある日本人は戦地での加害行為を話したがらなかったというではないか。これは余程のこと。本作で最大の衝撃でした。

    BS松竹東急にて。

  • 東京と神戸と場所的には離れているが、前に見た「モリのいる場所」とよく似た雰囲気。

  • 小学生の時に母と一緒に見たのですが、詳細を忘れたまま、日本版『スタンド・バイ・ミー』のような作品、という記憶だけが残っていました。改めて見直しますと、当たらずしも遠からず、ただしこちらは、おじいちゃんと三人の子どもたちとの交流がメインですね。主題歌がZARDというのも印象的です。

    文句なしの名作ですが、これは英語字幕の付いたものを見たい。関西弁ですし、「関取」というニックネームなど、日本独特のものもあるのですが、それでも英語の字幕を付けられて、日本語のまま放映されているのをぜひ見たい。英語であのおじいちゃんと子どもたちのやりとりが、どう訳されているのか見てみたいのですね。

    さあ、しかしかなり教育的な話と言えば教育的な話ですから、小学生時分の自分が見て、良い作品だと思えたかどうかは別ですね。大人が見て子どもに見せたいと思う作品の大半は、子どもの受けが悪いものです。とはいえ、小学生の私に、母が「名作だ」と言いながらこれを見せたのは印象に残っていますし、今でも彼女はこれを「いい映画だ」と言います。確かに良い映画です。音楽も非常に良い。ただしこれは、大人の感性でよい映画だと思います。子どもが主人公であっても、子どもに気に入られるかどうかというのは別の問題です。

  • 中学生の時、課題図書だった作品なのでタイトルは覚えていた。映画になっていて、相米監督そして大好きな三國連太郎出演なので、ずっと観たいと思っていた作品。
    少し期待はずれだった。
    タイミングが合わなかったのかな?
    まぁ、最後おじいちゃんが死んだあとが1番印象深い。ファンタジーさとリアルさの映像。

  • 孤独だったおじいちゃんとズッコケ三人組の夏

    神戸の住宅地を舞台にしたSTAD BY MEを見ているみたいだと思った

    三國連太郎さんの強面だけど実は優しいおじいちゃんはステキだった

  •  相米慎二が、子どもたちと老人のやりとりを丁寧に描いた良作。終盤、井戸から虫たちが出て行くさまは、いささかファンタジーに寄りすぎかと思ったが、これはこれでいい気がした。老人が、次第に心を開いていく様子は、やはり演出と役者の腕。老人が亡くなり、火葬場で長らく離れていた妻が正座をして、「お帰りなさいまし」とお辞儀する演出は、やはり感性がほとばしっている。


    【ストーリー】
    小学6年生のサッカー仲間、木山諄、河辺、山下の3人は、ふと人の死について興味を抱き、近所に住む変わり者の老人・傳法(でんぽう)喜八に目をつけ、彼がどんな死に方をするか見張ることにした。荒れ放題のあばら家にひとり住む様子を観察する3人に気づいた喜八は最初は怒り出すが、やがてごく自然に4人の交流が始まる。老人の指示通り子供たちは庭の草むしりや家のペンキ塗りを行い、庭にはコスモスの種を巻き、家は見違えるようにきれいになっていった。子供たちは喜八から、古香弥生という名の女性と結婚していたが別れたという話や、戦争中、兵隊をしていた時にジャングルの小さな村でやむを得ず身重の女の人を殺してしまった話などを聞く。3人は喜八の別れた妻を探し出すことにし、やがてそれらしき人を探し当て老人ホームに訪ねるが、部屋には担任の静香先生がいた。先生は何と弥生の孫だった。弥生はボケているのか夫は死んだと答えるばかりだったが、静香は喜八は自分の祖父に違いないと確信し、彼を訪ねる。だが喜八もそれを否定した。そんなある日、子供たちはサッカーの試合の帰りに喜八の家に寄ってみると、彼は既に息絶えていた。葬儀の日、3人の子供たちや市役所の職員、遺産のことばかり気にする甥の勝弘らが見守る中、静香に連れられ弥生がやって来る。じっと棺の中の喜八の顔を見つめていた弥生は、生きている相手に向かうかのように正座して「お帰りなさいまし」とお辞儀した。数日後、取り壊しを控えた老人の家を訪ねた子供たちは、暗い井戸の底からトンボや蝶、ホタルが次々と飛んでいくのを目撃する。それはまるでおじいさんが3人に別れの挨拶をしているかのようであった。
    真夏の神戸を舞台に、ワンパクざかりの男の子3人と老人との交流を描くドラマ。湯本香樹実の同名児童小説(福武書店、新潮文庫・刊)を原作に、「お引越し」に続いて相米慎二が監督。脚本は「夢二」の田中陽造、撮影は「ワールド・アパートメント・ホラー」の篠田昇が担当。主演の小6トリオはオーディションにより選ばれた。94年度キネマ旬報日本映画ベストテン第5位、同読者選出日本映画ベストテン第8位。1994年3月12日より大阪・京都・神戸先行公開。

  • 日本映画専門Ch。
    相米監督ならではの説得力。
    わざとらしい演出をしないだけでこんなにも泣ける。
    子役に歩道橋の欄干の上を歩かせるサディストぶりも発揮。

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