夏の災厄 (角川文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 平凡な郊外の町に、災いは舞い降りた。痙攣を起こしながら倒れる住民が続出、日本脳炎と診断される。
    撲滅されたはずの伝染病がなぜ?
    後手にまわる行政の対応。
    その間にもウイルスは蔓延し…。
    戦慄のパンデミック・ミステリ。

  • まだまだ続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)緊急事態宣言です。本屋にも図書館にも行けません・・・。まさに巣ごもり生活、だんだんストレスも溜まってきますね。最近の本でウイルスパニックを扱ったフィクションってあるのかなと思って調べてみると篠田節子さんの「夏の災厄」が評判よさそうです。最近とはいっても2015年刊行と少し古いですが外出しなくても買えるKindle版で読んでみました。
    場所の設定は西多摩のあたり、夜間救急診療所や保健所が最初の舞台となります。医療者と保健所のお役所仕事のせめぎあいなど冒頭からCOVID-19の日本を思わせる展開。日本脳炎をより悪性化したウイルス感染症がじわじわと拡大していきます。少しネタバレですがこの新らしい脳炎ウイルスはじつは東南アジアでいまだに流行中の日本脳炎のために日本で開発していたバイオ・ワクチン(分子生物学的手法でウイルス抗原タンパクを無害のウイルスに組み込んで接種するもの)の失敗作が逆に高い病原性を持ってしまったものだったんです。これってCOVID-19でもありえる話ですよね(武漢研究所説)。
    感染の拡大とともに街がすさんでいく様子や、昔のニュータウンが時間経過の中でさまざまな機能不全を起こしていくことなどをからめながら主人公の保健所員がウイルスの出所を解明するために診療所のナースと大活躍。
    反ワクチン運動やワクチンの認可にかかわる厚労省との折衝も後半の重要な要素となります。COVID-19でもよく聞くワクチンの実用化まで1年以上かかるのは、そういうお役所的な事情があるのか・・とわかります。
    オチまで書いてしまってはだめなので、以下Kindleのメモ機能で本書から抜書きした「感染症あるある」をいくつか紹介しましょう。5年前の本とは思えませんね。
    ・この手のごまかしが、統計や検査結果報告書にはまかり通る。
    ・情報の集積のない新しい事態に、機動的に対処する術を官庁は持っていない。
    ・病気で死ぬのは市民の責任だが、副反応で死んだら行政の責任なんだ。
    ・食材のケータリングサービスなどの宅配業が盛んになった。
    作者の篠田さんは「女たちのジハード」など今を生きる女性像を多くの作品で描いていますが、この作品でも実は行動力抜群の肝っ玉ナースのほうが真の主人公なのかもしれません。Kindle版は税込み832円です。Stay Homeのおうち読書の一冊としてぜひ。
    ウイルス・パニックと言えば昔「アウトブレイク」という映画がありましたが、今世間で評判の映画は「コンテイジョン(感染)」(2011アメリカ)です。リンク先の記事でもわかるように9年前の映画なのに今の世界をぴったり予言しているそうです。NetflixやAmazon Videoで見ることできるらしいのですが・・少々怖くてまだ見ていません。緊急事態が解除されるようなことになったら見てみようかな・・とは思いますが。

  • 20年以上前に書かれているのに、今現在のコロナを彷彿させる。予言か!!
    てことでレビューはこっちで書いてます。
    https://ameblo.jp/harayou1223/entry-12707114640.html

  • 新型コロナウイルスが流行する前に書かれた本とは思えないほど、今のコロナ禍を思わせる状況設定に驚きました。

    なかなか面白かったです。
    ラストには思わずえっと声を漏らしてしまいました。

  • テーマ:タイトルに"夏"がつく本
    夏度:★★★★☆
    ジャンル:パンデミック・サスペンス
    読了感:面白い、恐怖、人に薦めたい
    コロナ禍できっとジワジワ読者を増やしていくであろう小説。これが1995年に書かれたことに驚く。未知の感染症への恐怖と不安、何処からともなく生まれる差別…。まさに今、2020年現在。
    THE若者という感じの市役所職員と、フットワーク軽めのオバチャン看護師、同業者から孤立している変わり者の診療所医師が、市内の山間部から突如流行り始めた日本脳炎に立ち向かっていく話。先が読めても読めなくても面白く感じると思う。おすすめ。
    Kindleにて200621読了

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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