アクアリウムの夜 (角川スニーカー文庫) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
3.60
  • (1)
  • (5)
  • (3)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 58
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (181ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 親友の高橋に誘われて〈驚異の科学魔術 カメラ・オブスキュラ〉を見に城址公園へ行った「ぼく」。だが、その日から高橋はカメラ・オブスキュラが見せた現実と違う水族館の幻像に憑りつかれ、やつれていく。「ぼく」と幼馴染の良子は高橋を救うため水族館の謎を調べ始めるが、そこには明治に興った新興宗教が関わっていて……。1990年発表のオカルト少年小説。



    『桜庭一樹の読書日記』でチラッと触れられていて、いつか読んでみたいと思っていた作品。書き出しはティーン向け小説のなかでも特別ゆる~い感じで、これ本当に面白いのかと不安になったが、それはティーン向けに偽装しているがゆえのものだった。ストーリーのオカルト濃度が上がるにつれて、文体も硬質な幻想文学のものに変わっていく。この文体乗っ取りが面白い。
    文体乗っ取りはまず挿入されたテクストのかたちで始まる。図書館の書庫で見つけた古新聞の切り抜き、白神教の教主が書いたチベット密入国記、24年組の少女漫画みたいな文化祭劇の脚本など、地の文と全く異なるテンションの文章が入り込んでくる。特に出門鬼三郎の自伝はいきなり十蘭のパロディになって楽しい。
    終盤、藤村さんが学生時代を語りだすと完全に地の文が乗っ取られ、薄暗い少女小説になる。そして主人公がついに極へ到達すると、一気に主観がおかしくなってノンストップのオカルト語りが繰り広げられる。このパートを読むためにこそこの小説はある。
    一見軽いようで、いろいろ凝った仕掛けのある作品だった。なにしろ鎌田東二が帯書いてるティーンズ・ノベルってヤバすぎるよ。

  • 著 二階堂奥歯「八本脚の蝶」 (河出書房新社) を読んでたら、そちらで本書のタイトルが挙げられていたので電子書籍にて購入。

    現実と非現実の狭間で、終わらない夢を見せられているような不思議な作品でした。
    過去から現在、そして未来へとすべての出来事が繋がっていて、得体の知れない恐怖を肌で感じながら読み進めました。
    なんとも一度読んだだけでは楽しみ尽くせなさそうな作品なので、また読みたいと思います。

  • 描写が丁寧で、淡々と悪夢と幻想の世界に誘われていく。現実に起きたことと、幻想とがだんだん混濁していき、最後は、何もかも謎のまま、不吉な予感を残して終わる。わからないものは怖いので、怖いと言えば怖い。
    元々1990年が刊行とのことで、昔のホラー要素が随所に散りばめられていて楽しい。
    ただヒロインが自分のことを名前で呼ぶのが苦手。

  • 高校生くらいに読んだ以来の久しぶりの読み返し。
    当時読んだころはオカルトなテーマが散りばめられているような印象をもちつつゾクゾクするような感想を持っていたと記憶してました。
    改めて読み返してみると、陰鬱とした世界観などの雰囲気が恩田陸さんの六番目の小夜子とか、ラヴクラフトな雰囲気を感じながら読み終わりました。
    高校生生活を舞台としたダークな世界観のミステリーを読みたいという方は手に取ってみてはどうでしょうか。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

1954年大阪府生まれ。本名、横山茂雄。京都大学卒、博士(文学)。英文学者、作家、奈良女子大学教授。横山名義の著書に『聖別された肉体—オカルト人種論とナチズム』(書肆風の薔薇)、『異形のテクスト—英国 ロマンティック・ノヴェルの系譜』(国書刊行会)、 訳書にマーヴィン・ピーク『行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙』、ヒレア・ベロック『子供のための教訓詩集』(共に国書刊行会)、 編著に『遠野物語の周辺』(国書刊行会)、『危ない食卓— 十九世紀イギリス文学にみる食と毒』(新人物往来社)など。『日影丈吉全集』(国書刊行会)の編集、全巻解説も手がける。稲生名義の著書に『アクアリウムの夜』(書肆風の薔薇、のちに角川スニーカー文庫)、『アムネジア』(角川書店)がある。近刊に『映画の生体解剖』(高橋洋と共著、洋泉社)。

「2013年 『定本 何かが空を飛んでいる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

稲生平太郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
劉 慈欣
劉 慈欣
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×