ザ・ラストマン 日立グループのV字回復を導いた「やり抜く力」 (角川書店単行本) [Kindle]
- KADOKAWA (2015年3月10日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (188ページ)
感想・レビュー・書評
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7000億円を超える赤字を抱え、沈没寸前だった巨艦、日立製作所。子会社の日立マクセルの会長を勤め、70歳を目前にしてぼちぼち引退しようと考えていた著者に、異例ともいえる日立製作所社長への就任要請がなされた。ザ・ラストマンの覚悟をもって2009年4月から5年間、日立製作所の舵取りを行った著者は、見事「二〇一四年までの五年間で、日立グループを、過去最高益を出すところまで復活させることができた」。その著者が、自らの成功体験に則して語るリーダー論。
ザ・ラストマン=「最後に責任を取ろうとする意識のある人」。
著者が日立日立製作所社長・会長として行った主な改革は、意思決定時間の短縮、選択と集中、組織体制の強化など。
・「改革は、スピードさえあれば何とかなる」ことを踏まえた、意思決定者を少なくするなどの「日立時間」(決断や実行が遅い、かつての日立製作所の体質)短縮。
・上流と下流を合わせ、「社会イノベーション事業に集中する」方針を決定。半導体、プラズマパネル、携帯電話事業から撤退(上流=製品の企画・開発、中流=製品を組み立てて・流通、下流=販売・サービス)。
・上場子会社の完全子会社化と、「社内カンパニー制」の導入。
「ラストマン」として意思決定をして、実行するためのプロセスは、 ①現状を分析する ②未来を予測する ③戦略を描く ④説明責任を果たす ⑤断固、実行するだが、反対勢力・抵抗勢力に妥協すること亡く断固実行することこそそのキモだという。
本書の中で心に残った言葉は、「ラストマンは「情」を理解しつつ、「理」をとることができる人間」、「小事には情、大事には理」、戦術は変えても「戦略は変えない、ぶれさせないのがラストマンの役目」、「早く、小さく失敗する」、「リーダーは〝慎重なる楽観主義者(cautious optimist)〟であるべきだ」など。
「経営方針や経営計画のような大きな決断はトップダウンで下し、現場レベルの提案はボトムアップで吸い上げるという二つの働きが循環しているのが、企業として理想的な姿」という言葉にも頷ける。
著者は、「読書で精神を向上させるべき」とも言っている。本書で著書が上げた書籍は、孔子の『論語』、佐藤一斎の『言志四録』、バートランド・ラッセルの『幸福論』、カール・ヒルティの『幸福論』、藤沢周平の『三屋清左衛門残日録』『海鳴り』『風の果て』など、ドストエフスキーの作品。『幸福論』などいずれ読んでみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日立の経営再建を牽引した川村さんが経営に対する考え方について述べた本。2009年から5年間社長・会長を務めている。日立は2008年に8,000億円近い巨額赤字を計上。川村さんは子会社社長で本流ではなかったが抜擢されて社長に就任している。ラストマンとは最後の責任を引き受ける人を指す造語。
淡々とした口調で語られていて、人柄が感じられる文章。当たり前のことを当たり前にやることの必要性を再認識できる。
以下、備忘録。
・会社の緊急時はトップダウンで決断する
・「普通の製品と違って、株には保証書がない。私は保証書のない製品を初めて売ったのです。多くの投資家の皆さんは日立を信じて買ってくれた。これから私たちは、その期待に応えていかなくてはなりません」(増資への株主説明を経て)
・ラストマンは「情」を理解しつつ、「理」をとることができる人間
・部下の指導には、自分の時間の2割を割く
・自分の役目が終わったらサッと退き、次の人が活躍できる場をつくる -
この手の本は、ページをめくっても
めくっても自慢話、という展開が多いが
この著者は違う。
謙虚で努力家。
参考になる情報が多い。 -
私は、「部下の指導には、自分の持っている時間の二割を割け」とよく言っています
自分が下っ端だった頃、こういう風に思って指導して頂いていたのでしょうか。今となっては定かではありません。
今、自分が指導する立場になって見たところ、これ、かなり難しいと思います。どうしても自分でやったほうが早いと思ってしまいます。手綱の微調整がなかなかうまくいきません。
前は結構手取り足取りだったので、今は少し放置気味です。これの正しさは現実でこなしていくしかわかりません。一歩ずつ、マネージャーの練習を進めていきたいと思います。 -
良書。凄い覚悟、経験と知見。