ワシントン・アーヴィング(Washington Irving)
世界文学を代表する典型的なキャラクターである〈イカボッド・クレイン〉や〈リップ・ヴァン・ウィンクル〉を創造し、アメリカ・ロマン派文壇の覇権を握るに至ったワシントン・アーヴィングは、そのたくましい創作力と高い教養を広汎に駆使することで旺盛な文学活動を展開した真摯な国際的文人だと言える。華々しく文壇デビューを飾ることになった瞠目の作品『ニューヨーク史』(1809)から畢生の大作『ジョージ・ワシントン伝』(1855-59)に至る作品群のほとんどすべてが、豊かな感性と間然するところがない見事な構成に貫かれていると言っていいだろう。なかでも軽妙洒脱な筆致で独自の世界を築いた短編集『スケッチ・ブック』(1819-20)のなかの代表作「リップ・ヴァン・ウィンクル」や本書の「スリーピー・ホローの伝説」、あるいは伝承に基づく優れた紀行・説話文学の代表格として知られる『アルハンブラ物語』(1832)などの名作は、いまも日本の多くの読者から圧倒的な支持を受けている。
「2024年 『スリーピー・ホローの伝説』 で使われていた紹介文から引用しています。」