西洋美術史入門 (ちくまプリマー新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 「美術なんてよくわからない」と、正直思っていた。わたしには縁遠い世界だと。どうやらそう思っていたのは、わたしが美術の「読み方」を知らなかったからのようだ。美術と仲良くなる最初の一冊として、本書は好適である。

    識字率の低かった昔、美術は情報伝達手段だったという。つまり、決して高尚な芸術ではなくて、現代でいう広告のようなものだったのだ。画家や建築家はコピーライターや広告プランナーのようなもので、パトロン(スポンサー)の意向に沿うような絵や装飾を作っていた。絵画技法の変遷も、パトロンの経済力の変化と関係している。絶対権力者がパトロンだった時代はコスト度外視の技法が用いられ、商人が台頭してくるとより経済的な技法が主流になる、というように。
    ここから2つのことが言える。ひとつは、美術は決して肩肘張って鑑賞するものではないということ。もうひとつが、美術を楽しむにはそれが制作された背景を知る必要があることだ。美術が広告である以上、何か伝えたいことがあるはずだからだ。
    「必要性が無いかぎり絵が描かれることはない──これが原則なのです」(第三章)。

    美術とは感性で観るものではない。少なくともそれだけではない。そう知るだけでも、敬遠する気持ちが薄らぐ。それが本書の功徳ではないだろうか。

  • 芸術が「趣味」として成立しているのは近代になってからなので、絵画や他の美術品は必ず誰かが作るように芸術家に依頼したものだ。だからそれらの作品には当時の社会的な存在理由が必ずある。また、識字率が低かった時代では、絵画はメディアとしての役割も果たしていた。
    こういったことが具体例も交えて簡潔にわかりやすく書かれていて興味をそそりながら読めた。

    たまに行く美術館ではオランダの絵画を厳選して展示しているコーナーがあり、いつも「なぜオランダ?」と思っていたのだけれど、その疑問も解決して嬉しい。
    大航海時代の後半に台頭したオランダは、次第に商人たちが富と権力を手にするようになっていき、絵画もそれに合わせて家に飾れるようなサイズ、内容(風景画や風俗画)になっていた。独自の技術や手法なども発達していった。

    西洋においてのざっくりとした時代による変化なども知れたので、次に美術館に行くのが楽しみになった。もっと背景や図像学についても知りたくなった。

  • タイトル通り、西洋美術史の入門書。

    巻末にここから先を知るための文献リスト付き。

  • キャンバス画は繊維産業が盛んだったヴェネツィアで始まった、とか、買う人の要望によって絵のモチーフは変わる、と言ったことから、その時の体制や風俗まで読み解ける、というのが面白かった。

  • ○結果的に、昔の芸術作品はわからないことだらけです。失われて久しいコードを再び手にしないと、絵を〝読む〟ことはできないわけですから、いろいろと調べてコードを再発掘する作業が不可欠です。この再発掘作業のことを「図像学(イコノグラフィー)」と呼びます。
    ○ディスクリプションとは、絵を文章で説明する作業であり、言い換えれば視覚情報を言語情報に直すことです。
    ○〝いつ、誰が、どこで、どのように(どのような素材と技法で、など)〟について調べる段階はこの学問に不可欠なものです。
    ○識字率が上がってきたからこそ、プロテスタントは偶像崇拝の禁止を主張できるだけの条件が 揃ったと言えるでしょう。
    ○対抗宗教改革後のカトリック教会が、美術に〝感情移入のしやすさ〟を求めていた
    ○必要性が無いかぎり絵が描かれることはない──これが原則
    ○十九世紀の画壇で人気を二分していたアングルとドラクロワも、オダリスク(ハーレムにいる女性)やトルコ風の浴室といったオリエンタリズムのモチーフをたびたび描いており、ドラクロワにいたっては、国の外交使節団の一員として自らイスラム圏を旅しているほど
    ○画家は常に美しく描きたいと考え、注文する側は必要とする絵を求めてきました。「技法」と「主題」という美術作品のふたつの側面は、まさに画家と注文者との関係性によって作られたもの
    ○純粋に趣味的な創作活動が登場する近代以前には、すべての芸術作品に、それを創る人とそれを買う人がいるという事実です。
    ○趣味的な創作活動はごくごく〝近代的な行為〟にすぎず、ほとんどすべての芸術作品はパトロンがあってこそ生まれたと言うことができます。
    ○今日では、大きな展覧会で発表するのと、ほとんど変わらないか上回るほどの影響力を、ユーチューブなどの投稿サイトが持つようになっています。
    ○誰もがネットなどに自由に投稿できる時代にあっては、芸術家の「プロ」と「アマ」の区別が失われていくという点です。プロフェッショナルである必要があるのか、そもそもプロの芸術家とは何者か。お金を稼ぐかどうかだけの差なのか──。

  • とても面白く読んだ。その絵画がなぜ描かれたのか、どうしてその技法が採られたのか。社会的、精神的背景からやさしく解説していく。これは初心者向けなので、もう一歩進めて、詳しい解説を読みたくなった。後半に参考図書が挙げられているのもGOOD。Kindleで読むとせっかく例示された絵画がつぶれて見づらいのでご注意を。

  • とくさんのツイートで知って、他の方もお勧めされていたので。まだ全然見れてないけど。

  • Kindle 版が半額 551円になっていたのに惹かれて買った本だが、なかなかの良書だった。

    著者の大学一年生向けの講義のダイジェストで、西洋美術史の世界へ誘う。絵に込められたメッセージを、当時の時代背景に照らして読み解く、当時の人々の考えを理解する、それが美術史。
    入門書らしく、ちゃんとさらに学びたい人のための文献リストと解説がついているのもよい。

    高校生・大学生の頃、高階秀爾『名画を見る眼』『続 名画を見る眼』を読んだ覚えがあるが、実はなかなか高度な内容なのだとわかった。もう一度読み直してみようかな?

  • 「美術史とは、誰がいつどんな技を使って絵を描いたかを調べ、
     数々の技法の変遷を調べる学問である」
    と理解していた私は、本書を読んで「美術史」が対象にしている
    世界の広さと奥深さを知りまして衝撃を受けました。

    小学生の頃に図画が苦手だった私は、大人になりまして
    (美術館で絵画や彫刻を味わえるとカッコいい)
    と思い、幾度となく美術館や●●展に足を運びましたが、
    正直、心から感動することはありませんでした。

    しかし本書を読みまして、
    「美術史とは、美術作品を介して『人間を知る』ことが目的」
    という視点を持つ事ができました。

    今後は「もっと人間を深く知りたい!」という気持ちで
    美術館に足を運ぶことにします。

  • この本は「入門」と言っているだけあって、どのように美術、特に絵画と接していけばいいか書かれている。ポイントとしては絵画は「読む」べきものであるということ。どんなに素晴らしい小説でも、文字を読めなければその良さがわからないのと同じように、絵画においても読み方を知らなければ作品の価値を理解することはできない。この本はそういった視点を読者に与えるところから始まる。

    絵画を読むためには「◯◯は△△を意味する」とだけ知っていればいいのではなく、それが描かれた時代背景まで把握している必要がある。これだけ聞くと西洋美術は難しいと思ってしまうが、よく考えてみたらアニメも同じようなものだ。「金髪ツインテールならツンデレ」というような「お約束」を知っているかどうかで理解の深さは大きく変わる。表現というものは何かの文脈の上に築かれるのだ。

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著者プロフィール

池上英洋(いけがみ・ひでひろ)
美術史家・東京造形大学教授。広島県生れ。東京藝術大学卒業、同大学院修士課程修了。専門はイタリアを中心とした西洋美術史・文化史。著書に『ルネサンス 歴史と芸術の物語』(光文社)、『神のごときミケランジェロ』(新潮社)、『レオナルド・ダ・ヴィンチ 生涯と芸術のすべて』(第四回フォスコ・マライーニ賞受賞)『西洋美術史入門』『死と復活』(いずれも筑摩書房)など。日本文藝家協会会員。

「2021年 『美術でめぐる 西洋史年表』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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