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感想・レビュー・書評
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本屋では良く目にする名前、ドリアン助川。真面目な小説らしいけど、どうも名前のせいで手が出なかったのですが、先日ネッ友(死語?)さんが褒めているのを見て読んでみることにしました。
ハンセン病を扱った話です。
主要登場人物が皆、世間の波に踏み留まろうとして叶わず、それでもなお何とかしようと苦闘します。でも暗澹としているだけでなく、どこか柔らかな眼差しがあります。自らの運命を悲嘆するだけでなく、そこに他者を思う心があるからでしょう。
私が子供の頃に「ハンセン病は伝染力は極めて低く、完治可能な病気である」事は教えられてきました。それでもなお続く偏見。主人公の仙太郎もアン作りの名人・徳江さんが元ハンセン病患者と知り、頭では理解していても一瞬の怯みを見せます。私はどうでしょう?
多分、大丈夫だと思うのですが、大丈夫と言い切れない事が問題なのでしょうね。。。
色々考えさせられる良い話でした。
そういう意味で(小説の出来だけでなく)で★5つです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
病院の待合室で読んだのですが、何度か涙が出て困りました。
ハンセン病の元患者さんの講義をきいたことがあります。本にもあった通り、本名を使えない、子供をうむことを許されない、自由になっても帰る場所がないなど、胸が痛む事実ばかりでした。
関心を持ったせいか、本やTVも目に入るようになり、少しずつ社会が関わり始めたと感じます。この本も映画化されるとか。
こんなにも、ハンセン病に真っ直ぐに向き合った内容が小説や映画として成り立つことがうれしいです。
主人公の不器用な優しさにジンときました。 -
映画が話題になっていたが、、まず原作から。
この物語は、ハンセン氏病の元患者のことがメインで描かれている。らい病と言われて隔離政策を取られていたのはずっと昔のことだと思っていたけど実際は20年たってないんだってことを知って驚いた。
差別って自分はしてない、しない人だと思っていても、実際その立場になるとしてしまうことはある。
鼻水からは感染しないって聞いていてもあとで熱っぽくなると感染したのかと疑ってしまう。
そういう誰にでもある弱さが自然に描かれていた。
差別はいけないって声高にさけんではいないけど、差別されるつらさが心底伝わってきた。 -
誰にも生まれてきた意味がある。の言葉にうたれました。若い頃にハンセン病を患い何年も療養所から出られなかった徳江。罪を犯し違う意味で塀の中にいた千太郎。二人は餡で繋がりをもつ。重い話だが魂がこもってるストーリー。
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樹木希林が出ていた映画と同じタイトルだなぁと思い手に取った。たんたんとした文章につられて読み進めたら、意外に重い話だった。でも読み終えた今、優しい気持ちになっている。星が4つなのはもっと読みたいという気持ちから。
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one of my バイブル
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自身の弱みを克服するためにする努力はうつくしい。
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映画を見て、良かったのでこちらを。
実は、映画を見たときには原作があるとは知らず。
本屋で見かけて、タイトルと表紙から「これあの映画?」と手に取り、読んだ次第です。
元ハンセン病患者との交流を描いた内容で、しんみりとその悲哀が伝わってきました。
物語が終わった後、千太郎とワカナちゃんが幸せになれますようにと願わずにはいられなかったです。 -
久しぶりに小説を読んだ。ドリアン助川といえば“叫ぶ詩人の会”という認識しかなかったが、小説が日替りセール対象になって評価が高かったので読んでみた。
どら焼き屋を営む主人公とそこに現れたあん作りの上手な老婦人、それに店の客である女の子の交流を軸に、ハンセン病患者の辛く長い歴史が語られる。 読後に調べたら1年ほど前に永瀬正敏と樹木希林で映画化されていたようだ。
ハンセン病患者の隔離を定めた「らい予防法」が改正されたのは1996年で、今から20年前のことだ。しかしその後も、観光地の旅館が宿泊を拒否するなど残念な報道は何度か目にしている。法律が変わっただけで人の意識がすぐに変わるわけではない。この小説に登場する無理解な女性オーナーのような人も大勢いるのだろう。
人の意識と書いたが、具体的には偏見と恐怖であり、そのいずれも無知に基づくものだから教育や啓蒙で変えられるはずだ。しかし世の中を変えるには長い時間が必要であり、その間にも患者たちは人生を終えていく。
この小説はそんな社会に憤りをぶつけるのではなく、ただ静かに、それでいて力強く生きていく人の姿を描いている。それがあまりに切なく、涙を誘う。読み終えてから冷静に考えるとベタな展開だなとも思うのだが、読んでいる時はとてもそんな斜に構えた気持ちは出てこず、素直に泣いた。 -
いままで、自分がどれだけ恵まれた環境にいたのか気づかされた。
どんなに今の仕事が忙しくても、それが一生続くわけではないんだよなぁ…と。