ぼくは勉強ができない (文春文庫) [Kindle]

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  • 文藝春秋
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レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (235ページ)

感想・レビュー・書評

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  • 私は現在教員であるが、どこか教員としてなにか教えなければならないと考え過ぎていたかもせれないと気付かされた。恋人の桃子さんや母親との会話からは不思議と幸せな脱力感のようなものを感じた。句読点の多い文体が読み始めは気になったが、すぐに慣れた。肩の力を抜くのにもよい作品だと思う。ここに書く段階では忘れてしまっているが、読んでいる段階ではさらに多くの細かな感慨を受けていたはずである。それを常に心にとどめておけないのは残念であるが、然るべき時や、この本を再読した時に思い出すことができるのとを願って、読了とする。

  • 『ぼくは勉強ができない (新潮文庫)』が正直かなり面白かった。

    主人公の秀美は「僕は勉強ができない」という通り、
    優等生ではない。かといってまったくの不良かというとそうでもない。

    真面目に考えて、真面目に不真面目に生きている。
    それが面白いし考えられさせもする。

    年上の彼女の桃子さんやクラスの悪友たち、そして頭の固い大人たちなど、秀美の周りの人間も自分の人生をそれぞれ自分なりに考えて、ぶれたりずれたりしながらも必死に生きている。

    登場人物は必至で考えながら生きているが決して暗くはなく、むしろ明るくバカをやってる。

    それが魅力であり、この小説の特に面白いところは、会話の返しや考え化が絶妙にユーモラスなところだ。

    「桃子さんのような大人の女は臆せず生意気でない礼子のような女の子が大好きなのだ」

    というような核心をついた発言があったかと思えば、

    「なぜ君はそんなに吝嗇なんだい?」
    「処女だから」

    といったように人を食ったような発言が出る。

    友人が死んで涙した友人に対し、

    「なんだよ、泣くなよ。そこまで親しくなかっただろ」

    という慰め方も本書ならではだと思う。

    ーーー

    個性的な登場人物が多いその中で、秀美の母親、祖父と担任の桜井先生は一味違う。

    生き方に迷いがない彼らは秀美のよき師であり悪友でもある。

    本書から学んだことは、やはり家族との関係性、常に自分を支えてくれる人の存在の大きさだ。

    秀美は父親がおらず母親と祖父母との2人暮らしだ。
    だが、その2人からしっかり愛されていることがかなりよい影響になっているということははっきりと見て取れる。

    秀美が世の不条理に立ち向かうことができるのは、自分の存在を受け入れてくれる人がたちがいるからこそだと感じさせられる。

    普段は老いてなお盛んなくそじじいっぷりを発揮する祖父も孫が困っているときはしっかり相談になる。

    以下の言葉はかなり深いと思う。

    「そんなつもりでなくやってしまうのは、鈍感だということだよ。賢くなかったな、今回は。おじいちゃんのいってることがわかるか。」

    ーーー

    今のご時世、昔からかもしれないけども、
    言いたくても言えないこと、漠然と感じていた納得のいかないこと、それらと正面から向き合いつつも、明るく楽しく過ごしているこの小説は、まさに閉塞感をもっている人に読んでほしい1冊。

    最近読んだ小説の中で最もよい小説。オススメ!

  • もっと若いうちにこの本を読んでおけばよかった。そのころにこの本はあったのかな。

    ○自然体を装うほど不自然なことはない。特に、もてている時期の男が自然体を装って好感度を上げようとするほど、浅ましく愚かなことはない。
    ○女の子のナイトになれない奴が、いくら知識を身につけても無駄なことである。
    ○知識や考察というのは、ある大前提のその後に来るものではないのか。つまり、第一位の座を、常に、何か、もっと大きくて強いものに、譲り渡す程に控え目でなくてはならないのだ。
    ○ささやかなことに、満足感を味わう瞬間を重ねて行けば、それは、幸せなように思える。
    ○下がった眉は、常に、 信憑性 を奪うと思う。
    ○嫌いな音は、人間を狂気の世界に誘う。
    ○人が人を無責任な立場から裁くことなんて出来ない。そのことだけ解ってれば良い
    ○ぼくは、ぼくなりの価値判断の基準を作って行かなくてはならない。
    ○自然体ってこと自体、なんか 胡散臭い。自然体っていう演技している。本当は、自分だって、他の人とは違う何か特別なものを持っているって思っているくせに、優越感をいっぱい抱えているくせに、ぼんやりしている振りをして。あんたの方が、ずっと演技している。あんたは、すごく自由に見える。そこが、私は好きだった。
    ○人には、視線を受け止めるアンテナが付いている。他人からの視線、そして、自分自身からの視線。それを受けると、人は必ず媚という毒を結晶させる。毒をいかにして抜いて行くか。ぼくは、そのことを考えて行かなくてはならない。
    ○自分の時の流れは、水とは違い上に向いていたように思っていたが、どうやら錯覚である。
    ○生きていることは錯覚ばかり、とぼくは思ったけれども、残す空気は、形を持たずして、実感を作り上げるのだ。
    ○いつのまにか、着ている洋服が小さくなり過ぎているのに気付かなかったから破けてしまったらしい。いやはや、今さら繕っても仕方がないし、ぼろをまとってこのまま行く。
    ○煙をつかむのに手間をかけて何が悪い。 格好の悪いことでは決してないぞ。物質的なものなんぞ、死んだら終わりだ。それなら煙の方がましだ。
    ○過去は、どんな内容にせよ、笑うことが出来るものよ。
    ○自分の現在は、常に未来のためのものだ。

  • 秀美くんより、私の息子達の方がイケてると、自信を持たせてくれる一冊。

  • タイトルは小さい頃から本屋で目にしていた記憶があり、満を持して読んだ。
    軽妙で疲れの来ない文体を使って、人の価値観の根っこを揺さぶるような事を畳み掛けてくる。これが比較的短い本の中に凝縮されていて、すごくパワーを感じた。
    星5つにしたのは、何というか内容も文体も全部ひっくるめて、小説の一つの完成形みたいに思えたので。

  • すごく素朴な言葉の一つ一つが、価値観の根源を震撼する。
    私にとってはシビれる本だった。
    ただ、最後の綿矢りさの解説で秀美君の今後がネタバレされたのはかなり萎えた。
    まだ読んでなかったし、何も知らない真っ新な状態で読みたかったから恨めしい。
    もう綿矢りさの本は読みたくなくなった。(笑)

  • 秀美みたいに鋭い感性を持った人間は、嫌なことも多いだろうなと思います。少し鈍感なくらいが、生きていく上では楽なのかもしれません。

  • 時間潰し用に購入したのだが、これが思いのほかおもしろかった(うっかり電子書籍で登録してしまったけれど、ほんとは文庫本)。

    高校3年生男子、勉強ができないけれど人気者の主人公が、なかなかのキャラクターだ。
    恋多き美女であり編集者として多忙な生活を送る母と、老いてますます盛んという祖父と3人で暮らし、父親の顔は知らない。大人のバーで働く年上の女性と付き合い、家族とはセックスの話もオープンで、素敵な男性に育てたいという母の教育方針のもと、他人になびかない価値観を持っている。
    25年前に書かれたと言うが、物事の本質をとらえているため、まったく古く感じさせないのはさすがだ。

    主人公の小学校時代の担任は、社会の決まりごとから外れないことを最重視して教え込もうとしている、典型的な日本の大人。その対極にいるのが、話のわかる現担任や、奔放な母親である。とても魅力的で、こんな大人が周囲にいてくれたら、子どもはのびのび育つだろうなと思う。
    主人公と同年齢の、勉強嫌いの息子を抱える親としては、我が子を枠にはめようとしていることの愚かさを突き付けられたようでもあり、読後は後ろめたい気分にもなった。でも小心者の私は、やはりそこまで強くもなれず、キモも据わらないのが現実で…。
    ともあれ、受験の気分転換に、息子にこの本を渡してみようかな。

  • ずっと気になっていたけど、なかなか読めなかった一冊。もうほぼ四半世紀前の作品であるが、書かれていることは、今でも十分、怖いくらいに当てはまることだらけで、すごいと思った。大切な一冊に追加。

  • 再読したけど、やっぱり面白かった。

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著者プロフィール

山田 詠美(やまだ えいみ)
1959年、東京生まれ。明治大学文学部中退。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。同作品は芥川賞候補にもなり、衝撃的なデビューを飾る。87年には『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞受賞。89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年 『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16「生鮮てるてる坊主」で川端賞を受賞している。その他の著書に『無銭優雅』『学問』『タイニー・ストーリーズ』『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』などがある。

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