神々の山嶺 下 (角川文庫) [Kindle]

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  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • ドラマの裏にあるのは、舞台の地、ネパールの政治の混乱と貧困。それは、グルカ(ネパール兵によるイギリスの外国人部隊)、犯罪者たち、自然破壊を生み出す。

    またこの本にはカトマンドゥの街のように、様々な匂い、苦しみ、悲しみ、欲望をまとった多くの男女が登場する。ハチミツをたっぷり入れた紅茶も。

    そして、極限の世界。
    この本を読んでいる間、暖房を消し、冷え切った部屋で、かじかんだ指で頁をめくった。そうして読まないといけないような…

    多くの言葉であふれている本。...深町のあの一言は余計だったけど。

  • シェルパ族とグルカ兵はどちらも貧しいネパールにとって外貨を稼ぐ貴重な職能集団だが、どちらも外国人のために働くのが宿命。

    オーディブルは神々の山嶺がついに終わってしまった。深町の覚悟の決まらなさに何度も憤り、羽生のどこまでも不器用で、どこまでも真っ直ぐな生き方におそれ慄き、二人の熱量が乗り移って感情が昂り、走りながらも嗚咽の声が漏れ出て、じつに困った作品だった。酸欠で朦朧となった羽生の手記に、幻覚や幻聴に侵された深町の独白を見事に演じ切った読み手に感謝。

  • 上巻が謎解きを含んだ展開だとしたら、下巻は純粋にエヴェレストに挑む男達から生きる意味をつきつけられるような展開でした。

    なぜ山に登るのかという問いに対してそこに山があるからという有名な言葉がありますが、物語の羽生という男はおれがいるから山に登るという言葉を残しました。これほど山以前に自分の限界に向き合った物語はないと思います。

    羽生は南西壁冬季無酸素単独登頂という誰も成し遂げたことのないルートで登頂を試みますが帰らぬ人となりました。頂に到達したのかどうかは明らかではないですが、後にノーマルルートで登った深町が羽生の遺体をみつけ、きっと頂に到達した後の下山途中に命を落としたのだろうということになっています。

    なぜ山に登るのかはなぜ生きるのかと同じようなことで、答えがあるわけではなかったです。ただ自分のそれぞれの限界に挑むことが生まれてきた人がなすべきことだという強い思いは感じました。

  • 世界的な難所、グランドジョラスでの単独行で滑落、負傷しながら奇跡の生還を果たし、伝説となった羽生丈二。カトマンドゥで別人として生きる男が狙うのは、エヴェレスト南西壁、前人未踏の冬季無酸素単独登攀!導かれるように羽生に邂逅した深町は、彼を追ってエヴェレストに入る。羽生の挑戦の行方は?深町が目撃したものとは?山に賭ける男たちの姿を描ききり、柴田連三郎賞に輝いた夢枕獏の代表作!

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著者プロフィール

1951年、神奈川県出身。第10回日本SF大賞、第21回星雲賞(日本長編部門)、第11回柴田錬三郎賞、第46回吉川英治賞など格調高い文芸賞を多数受賞。主な著作として『陰陽師』『闇狩り師』『餓狼伝』などのシリーズがあり、圧倒的人気を博す。

「2016年 『陰陽師―瀧夜叉姫― ⑧』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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