スペードのクイーン/ベールキン物語 (光文社古典新訳文庫) [Kindle]

著者 :
制作 : 望月 哲男 
  • 光文社
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レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (159ページ)

感想・レビュー・書評

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  • 初めてロシア文学というものに挑戦してみました。現段階ではまだ『スペードのクイーン』までしか読んでいませんが、本編は勿論のこと、巻末の作品解説も素晴らしいです。本編が10倍面白くなりました。

    フリーメイソンの儀式の下敷きとなっている「ヒラム殺害の伝説」についてはネルヴァル著『暁の女王と精霊の王の物語』で知りましたが、私自身はあの伝説と老伯爵夫人殺害はあまり関係が無いように感じました。
    当初、フリーメイソンのことをよく知らない私には、ゲルマンはまるで「錬金術書の読み方を誤解した挙げ句に頭がおかしくなってしまった似非道士」のように見えました。

    ところが、『スペードのクイーン』読了後に、ふとトランプについて調べてみたところ、色々と興味深いことが分かったのです。

    まずスペードのマークは剣や貴族を象徴し、特にスペードのエースは様々なゲームで最強のカードとして扱われながら、一方で「死」を象徴するカードとされているそうです。

    また、西洋では古くからトランプの絵札に固有の歴史人物や女神などを当てはめる習慣があり、では「スペードのクイーン」は誰かというと、なんと戦略と技芸の女神ミネルウァ(パラス・アテネ)だというのです。
    (参考:オラクルカード専門店『カードの履歴』-> http://www.phgenki.jp/original7.html

    そう聞くと、冒頭で若き日の老伯爵夫人が「モスクワのヴィーナス」と呼ばれていた、という件が周到な伏線のように思えてきます。ヴィーナスを殺害し、ユーノー(結婚を司るゼウスの神妃)の面子を潰したゲルマンの所へと、終には底意地の悪いミネルウァが訪れて鉄槌を下した…そんな風にも思えます。

    また、3、7、1または12という数字の組み合わせに関しては、タロットの大アルカナに当てはめてみるのも一興です。
    3は「女帝」で、フリーメイソンの一員だったウエイト博士のタロットではヴィーナスのシンボル「♀」が描かれています。
    7は「戦車」で勝利を意味し、1は「魔術師」で永遠性を象徴するといいます。
    ところが12は「吊された男」です。試練や忍耐を意味するそうですが、次の13は「死」ですから、「死」の一歩手前のカードとも言えます。それこそ最後にゲルマンが置かれた状況を端的に表すカードなのではないでしょうか。

    このように『スペードのクイーン』は、中世からルネサンス期にかけて書かれた錬金術書宛らに、読者の創造力を掻き立てる不思議な力を具えています。つまり噛めば噛むほど味の出るスルメのような短編なのですが、そう言えばイカの頭の形はスペードに少し似ていますね。

    この後読む予定の『ベールキン物語』も楽しみです。

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