スペードのクイーン/ベールキン物語 (光文社古典新訳文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  •  この話の中心は賭博である。おそらく賭博は当時のロシアを背景とする物語を書くときに欠かすことできない事柄の一つだったのだろう。

  • 初めてロシア文学というものに挑戦してみました。現段階ではまだ『スペードのクイーン』までしか読んでいませんが、本編は勿論のこと、巻末の作品解説も素晴らしいです。本編が10倍面白くなりました。

    フリーメイソンの儀式の下敷きとなっている「ヒラム殺害の伝説」についてはネルヴァル著『暁の女王と精霊の王の物語』で知りましたが、私自身はあの伝説と老伯爵夫人殺害はあまり関係が無いように感じました。
    当初、フリーメイソンのことをよく知らない私には、ゲルマンはまるで「錬金術書の読み方を誤解した挙げ句に頭がおかしくなってしまった似非道士」のように見えました。

    ところが、『スペードのクイーン』読了後に、ふとトランプについて調べてみたところ、色々と興味深いことが分かったのです。

    まずスペードのマークは剣や貴族を象徴し、特にスペードのエースは様々なゲームで最強のカードとして扱われながら、一方で「死」を象徴するカードとされているそうです。

    また、西洋では古くからトランプの絵札に固有の歴史人物や女神などを当てはめる習慣があり、では「スペードのクイーン」は誰かというと、なんと戦略と技芸の女神ミネルウァ(パラス・アテネ)だというのです。
    (参考:オラクルカード専門店『カードの履歴』-> http://www.phgenki.jp/original7.html

    そう聞くと、冒頭で若き日の老伯爵夫人が「モスクワのヴィーナス」と呼ばれていた、という件が周到な伏線のように思えてきます。ヴィーナスを殺害し、ユーノー(結婚を司るゼウスの神妃)の面子を潰したゲルマンの所へと、終には底意地の悪いミネルウァが訪れて鉄槌を下した…そんな風にも思えます。

    また、3、7、1または12という数字の組み合わせに関しては、タロットの大アルカナに当てはめてみるのも一興です。
    3は「女帝」で、フリーメイソンの一員だったウエイト博士のタロットではヴィーナスのシンボル「♀」が描かれています。
    7は「戦車」で勝利を意味し、1は「魔術師」で永遠性を象徴するといいます。
    ところが12は「吊された男」です。試練や忍耐を意味するそうですが、次の13は「死」ですから、「死」の一歩手前のカードとも言えます。それこそ最後にゲルマンが置かれた状況を端的に表すカードなのではないでしょうか。

    このように『スペードのクイーン』は、中世からルネサンス期にかけて書かれた錬金術書宛らに、読者の創造力を掻き立てる不思議な力を具えています。つまり噛めば噛むほど味の出るスルメのような短編なのですが、そう言えばイカの頭の形はスペードに少し似ていますね。

    この後読む予定の『ベールキン物語』も楽しみです。

  • プーシキンの短編は以前パラパラと読んでおもしろかった記憶があり、ちゃんと読みたいと思っていた。ある意味先の読める話ばかりながら、歯切れのいい進行と肩の凝らない軽やかな語り口が好みだった。時折見られるヌメッとした不気味さと、最後のロマンチック・コメディの落差が凄い。

  • スペードのクイーンには「ひそかな悪意」という意味があるそうだ。
    エースだと思って選んだカードがクイーンに変わってたのか。前に読んだときは気付かなかった。
    もし主人公が遺言通り養女と結婚していたら、カードはエースのままだったのかもしれない。

    ベールキン物語は、アンデルセンの絵のない絵本のように読みやすく愛らしい短編集だった。

  • 「駅長」
    ドストエフスキーの貧しき人々では最後、ワルワーラちゃんは、マカールさんの元を離れ、好きでもない金持ち旦那と結婚する事を決意する。
    駅長も、娘は父親を捨てて、金持ちのミンスキー将校と駆け落ちする。
    貧しき人々では、その後のワルワーラちゃんは幸せに暮らしているかは描かれていないが、もし駅長と同じ筋書きならば、金持ち旦那を愛し、子供も産み、幸せに暮らしているはず。
    しかし、駅長は、好色な男が若い女をたぶらかして後には捨ててしまい、豪華な暮らしをしていた女は一変して乞食同然の暮らしを余儀なくされると苦言を呈している。
    ワルワーラちゃんは幸せに暮らしているだろうか。


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