鍵のない夢を見る (文春文庫) [Kindle]

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  • 文藝春秋
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感想・レビュー・書評

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  • 今まで読んできた辻村深月さんの作品とは全く雰囲気が違っていて驚きました。
    どこにでもありそうな物語を、著者の文章力の高さで読み応えのある作品に仕上げています。

    5つの短編に出てくる主人公の女性たちは、みんな何かしらの閉塞感を持って生きていて、それを打破しようともがいています。ちょうど嫌な夢の中で鍵を見つけて逃げ出そうとするように。
    一人称語りの主人公のには共感させず、「こんな人嫌だな」と思わせるのはさすがだと思います。

    文庫本の最後に収録された林真理子さんとの対談も面白かった。2人とも静岡出身なのですね。
    東京に憧れながらそこまで田舎でもない微妙な地方の閉塞感も、作品の背景には込められているのだと思いました。

  • さぁーっと読めます。感情の爆発。

  • お、お、重い。重かった。
    なんとも言えない、いろんな重さ。
    5話全部しんどかった。

    なかなかどれも想像を超える主人公だった。
    もうこれしかない、とか、私はこの人にこう思われているはずとか、他者からどう思われているかで自分の存在価値を見出すというか。その思い込みが激しくなっちゃうのかな。

    最終話は赤ちゃんと2人の生活は大変だよねと思って読み進めていたけれど、、
    最後まで、こうでなければ、こうするしかない、となってしまうのが怖い。
    お友達の照井理沙さんもなかなか怖かった。
    それぞれの立場の「なんで気遣えないの?」的な怖さ。

    4話芹葉大学の夢と殺人では、「善意」や「清く清く、正しい彼氏」という言葉が出てきて「傲慢と善良」への、最後の林真理子さんとの対談では「噛みあわない会話とある過去について」への構想の片鱗も勝手に感じられて面白かった。

  • 女性が主人公の5話の短編集。
    どの話も辻村ワールド炸裂で、細かな描写、登場人物のキャラ、心情の揺れ、温度感、立体感が伝わり、女性が主人公にもかかわらず、男性の私でもすごく感情移入ができる。
    おすすめです。

  • 2020/04/10読了
    #辻村深月作品

    全て女性主人公の短編作品。
    どの話も想像の斜め上をいく展開で
    登場する男はなかなかのクズ揃い。
    心臓をザラッと撫でられるような
    読後感が辻村さんぽい作品。

  • 外出して、ポケットをふと探る。そこに、あるはずの自分の部屋の鍵がない。
    そんな悪夢ばかりの現実。
    私の心の小窓の鍵は、何処へ。

  • 辻村さんの直木賞受賞作。短編集でどのお話も手に汗握る展開で一気に読んでしまいました。
    追い詰められた人の思考力が無くなり、視野がどんどん狭くなって行く様が怖かったです。

  •  辻村深月さんの直木賞受賞作。
    地方都市で暮らす普通の女性達が小さな事件を起こしたり巻き込まれる5つのお話。

    『仁志野町の泥棒』
    鉢合わせしちゃった場面が不気味で怖かった。お母さんは盗みをやめたいと思ってるのかな、子ども達を傷付けてるって気付かないのかな、気付いてるけど止められないのかな、、、病気なんだろうな。子ども達の気持ちを考えると胸が痛かった。

    『石蕗南地区の放火』
    小さな町での生活は安心感がありそうだけど、息が詰まりそうでもある。それにしてもお姉さんこじらせてたな。

    『美弥谷団地の逃亡者』
    絵に描いたようなダメ男。でも、そんな男にすがっちゃう女の子。「みんなと同じように彼氏がいる私」でいたいのか、誰かに選ばれたって事で安心したいのか。娘がこんな男と付き合ったらどうしようって怖くなった。

    『芹葉大学の夢と殺人』
    辻村深月さんの『盲目的な恋と友情』を思い出した。終わり方も怖かった。亡くなったわけでなく意識不明の重体で、この後障害とか残るんじゃって恐怖もあるけど、ラブホテルでの事件で、生きてて今後の生活もあるのに職場と名前も報じられてしまって、、、この時点では被害者の可能性が高いのに。マスコミ怖過ぎる。意識が戻ったとしても生き地獄が待ってる。加害者は刑務所でポエムでも書きそう。

    『君本家の誘拐』
     育児の精神的・肉体的な辛さを久々に思い出したけど、主人公は自分で自分の首を絞めてるよなって思う。自分流があり過ぎて、旦那さんを蚊帳の外にしてるのに、気が利かない、頼れないって怒り出すとか怖過ぎる。自分の理想通りに物事を進めたい人で、、、子どもの中学受験とかにものめり込みそう。苦手なタイプだわ。。。

  • 2012年第147回直木賞受賞。5つの短編を収録。
    【仁志野町の泥棒】
    主人公のミチルは、参加したバスツアーで、ガイドとなった小学校の同級生律子と再会しました。律子は母の盗難癖のために、転校を繰り返していました。しかし、仁志野町では地域住民の優しさに支えられて4年間を過ごします。ミチルも母娘の窃盗場面を目の当たりにし、大きなショックを受けながらもクラスメートとして一緒に小学校を卒業します。しかし、高校生で再会した律子はミチルを覚えておらず、ほろ苦い思いを抱きます。

    【石蕗南地区の放火】
    短大卒業とともに財団法人に入社した主人公笙子は現在36歳。実家向かいにある消防団施設が放火され、現場検証で消防団員大林と再会します。執拗に誘われて一度デートをしたことのある大林が逮捕されたことから、放火理由が自分会いたさからなのではないかと勘繰りますが、ただ単に「ヒーローになりたかった」だけと分かり、その幼稚な理由にやりきれない思いを抱きます。

    【美弥谷団地の逃亡者】
    主人公美衣は、恋人の陽次と千葉を旅行中。高校卒業後のフリーター時代に、ご近所サイトで知り合った5歳上の彼は、相田みつをを紹介してくれる等、ロマンティストなところもありながら、次第にDVになり、母に相談して警察に行くまでに発展します。旅行中は美衣のクレジットカードを使い、自由気ままに行動する彼ですが、夕食に入ったお店で御用となります。美衣の自宅に押し入り、母を刺し殺し、彼女の金で千葉のリゾートマンションに住もうという浅はかな考えの恋人から、最後まで逃げようという意思のなかった美衣の人間性も切ないです。

    【芹葉大学の夢と殺人】
    ラブホテルの駐車場に、私立高校美術教師の二木未玖が意識不明の重体で倒れているのが発見されました。10日ほど前には、工学部教授が殺害され、指名手配中の羽根木雄大容疑者は二木の同大学、同級生で、元恋人。
    工学部2年生の頃、同級生で美少年の雄大と付き合い始めた美玖は、彼の夢に愕然とします。仮面浪人して医大を受験し、サッカー(大学の選択授業で週に1回やっている)のプロ選手になって活躍し、引退した後は医師になるというものだったからです。美玖はイラストレーターになる夢を諦めて美術教師となりますが、雄大は留年し続け、挙句の果てには折り合いの悪かった教授ともめてしまったようです。その元彼から「愛してる」と電話がかかってきて飛んで行った美玖は、結局は彼をつなぎとめることができない絶望感に、最終手段として彼の目の前での投身自殺を図ります。

    【君本家の誘拐】
    大型ショッピングモールにいた君本良枝は、ふと気づくと生後10カ月の娘を乗せたベビーカーがないことに気づきます。錯乱状態の良枝を、警備員、支配人も協力しますが、携帯を忘れた彼女は、一度自宅に帰って家族に連絡することにします。すると、自宅にはベビーカーと泣き疲れて眠る娘の咲良がいるではありませんか。良枝は、就職、恋人、結婚、出産、育児、と、先だけを見て計画通りに人生を進めてきましたが、子育ては計画通りにはいかず、ついつい手をあげてしまうなど、ノイローゼ気味になっていきます。判断力の鈍った良枝は、その場を取り繕うことしか考えられず…。

    本の題名がどの短編の題名でもなく、不思議な感じがしました。また、出てくる主人公が全てイタイ女性で、面白い内容ではありましたが、読み直すには少し重すぎる印象をもちました。

  • 女性が主人公となる5つの物語。
    一番印象的だったのが、岸本家の
    誘拐。やっと子供を授かった女性
    が、里帰りから新居のマンション
    で、初めての育児に不安を抱えな
    がら生後間もない娘との生活。
    夫は、妻に気を遣っているが、
    育児には仕事を盾に非協力。
    育児に追い込まれる母親の心境が
    エスカレートしていくので、引き
    込まれた。
    他に、30後半に差し掛かり、親か
    ら結婚を迫られ、焦りを感じた女性
    と、女性に言い寄る消防団の男との
    物語も、最後はとんでもない結末が
    待っている。
    直木賞受賞作と聞いて納得した。

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

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