日経サイエンス 2015年 11 月号 [雑誌]

  • 日本経済新聞出版社
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  • / ISBN・EAN: 4910071151159

感想・レビュー・書評

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  • まずはノーベル賞特集。早いものでもうそんな季節。
    今年の発表は、生理学・医学賞が10月5日、物理学賞が翌6日、化学賞が続く7日。
    今号では、これまでの日本人受賞者が推す分野と編集部が注目する10テーマを紹介。
    今すぐ受賞しそうなものから、先を展望するものまで。
    紹介されているもののうち、個人的には、ゲノム編集のCRISPER/Cas9系と細胞内掃除システムであるオートファジーに注目している。
    CRISPER/Cas9は強力なツールだが、使い方を誤るととんでもないことになりそう。いろんな意味で注目されるが、少し新しすぎるところが受賞対象としては懸念される点か。iPS細胞を上げるまでもなく、ノーベル賞も以前ほどは古い研究ばかりではなくなったと思われるが。
    オートファジーはギリシャ語で「自分を(Auto)食べる(phagy)」の意。一時期、家電等で流行った曖昧さを意味するファジー(fuzzy)とは関係ない。真核生物の細胞に見られる、ある種のリサイクルシステムである。栄養不足に陥ると細胞は自分の中で使われていないタンパク質やミトコンドリアを呑み込み、生きるために必要なアミノ酸に分解して再利用する。パーキンソン病やアルツハイマー病などとの関連も提唱されている。現象としてはおもしろいが、不明な点も多く、ノーベル賞級ではあるだろうが、受賞はもう数年先かもしれない。
    物理学(天文学)に関しては、門外漢なのだが、何となく、系外惑星が取りそうな気がする(根拠はありませんw)。ダークマターはおもしろいけど、受賞はまだ先じゃないかな・・・?
    太陽電池(半導体・量子ドット)やリチウムイオン電池の話も興味深い。エネルギーを考える上で、高性能の電池が生まれることは非常に大きなことだろう。
    さて、実際に受賞するのはどんなテーマか。発表を待つとしよう。

    神経科学から「隠された難聴」。
    車の音、コンサート、工事現場。現代は騒音に満ちている。これまで、騒音によって一時的に音が聞こえにくくなったり耳鳴りがしたりした場合でも、いずれは回復すると考えられてきた。しかし、聴神経が恒久的にダメージを負っている場合もあることがわかってきた。こうした際、音がしていることがわかっても会話の内容が聞き取れなくなることがある。騒音が激しい場所で働く労働者の場合、4000Hz付近の音がまず聞こえなくなり、次第に1000Hz~2000Hzまで広がっていく。このあたりはちょうど会話で使用する領域である。聴力を調べる際に、「ピーとなったらスイッチを押してください」という検査があるが、これをオージオグラムと呼ぶ。これは聞こえるかどうかを判定するもので、音のセンサー(蝸牛の中の有毛細胞)の損傷を評価するものだ。会話の場合は、複雑な音を聞き分ける能力が必要となり、神経線維が無傷であることが重要になるが、オージオグラムではわかりにくい。
    どうやら騒音で発生する損傷は、有毛細胞よりも神経に損傷を与えているらしく、聴神経のシナプス(信号を伝えるために必要な接合部)が騒音によって恒久的に破壊されている可能性があることがわかってきた。
    騒音を可能な限り避けるに越したことはないが、シナプスの損傷がある種の難聴の原因であることが確かであれば、シナプスを再形成させる治療を試みて改善が望める例も出てくるかもしれない。


    進化の話題から「オオカミからイヌへ」。
    人類の最古の友、イヌ。ずっと昔にオオカミから進化したとは考えられるが、その道筋に関しては、意外にわかっていない。
    オオカミとイヌの違いはかなり大きい。オオカミは「おあずけ」に従わない。鼻はイヌより長いし、ある種のイヌが持つような巻き尾も持たない。遠吠え以外に吠えることはほとんどない。ヒトに言いつけられた仕事をいそいそやることもない。一匹狼という言葉があるとおり、オオカミは基本、独立独歩の生き物である。
    DNA分析から、イヌは現代残るタイリクオオカミではなく、太古に絶滅した別種のオオカミから進化したらしいことがわかってきた。但し、現在までの過程で、イヌとして分岐した後にも、また別のオオカミなどとの、種を超えた交雑があり、それがイヌの進化を辿る研究を難しいものににしているようだ。
    家畜化の時期についても諸説あり、狩猟採集期であったのか、農耕定住期に始まったのかも定かでない。狩猟に役立つのは確かだろうか、野生のオオカミは勝手に狩るばかりでヒトの言うことなど聞きはしないだろう。ヒトがどうにかして手なずけたのか、それとも自然と性格のおとなしいものが「出現」したのか、謎はつきない。
    古代のヒトに寄り添うようにイヌが埋葬されている例もいくつか見つかっており、いずれにしても古くからヒトと暮らしてきたことは確かなようだ。
    これまでは対立する立場だった研究者たちが協力する動きも出てきており、いずれは論争に決着が付くかもしれない。

  • 特集ノーベル賞で
    有力テーマに、”ニュートリノ振動の発見 梶田博士”が載っていました。予想的中!ですね。
    大村先生は予想にはなかったです。

    その他、特集に
    ・ 西ノ島噴火・箱根山大涌谷噴火
    ・ 系外惑星を直接撮影
    等。

  • 太平洋プレートが小笠原諸島のあたりでかなり垂直に近い角度でフィリピン海プレートの下に沈み込んでいる(p.63) など面白かった

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