人類総プログラマー化計画~誰でもプログラミングできる世界を目指して~ [Kindle]
- 技術評論社 (2015年7月29日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (196ページ)
感想・レビュー・書評
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enchantMOONという手書きタブレットを世に出したUEI社創業者の清水さんの格闘記。enchantMOONは、ネットニュースなどでちらりと見たことがあったが、コンセプトは悪くないけれども製品についてはわりと酷評をされていたような印象がある。いずれにせよ、それほど強く印象を持っていたわけではなかった。こういった製品を世に出すのは、スポンサーシップやビジネス面も含めて簡単なことではないだろうなとは思っていた。
著者によると、プログラマーでない人間にもプログラムを体験してもらおうというのがenchantMOON開発のモティベーションだったという。本書の『人類総プログラマ化計画』というタイトルにもその思いが反映されている。6歳からBASICを触っていたという1976年生まれの著者。同じようなプログラミング体験をする人が今後の世代ではいなくなるのではないかと危惧しているという(同世代でも著者と同じような体験をした人は少ないと思うが)。「寝ても覚めてもプログラミングをするという資質こそが、僕が常日頃から掲げる「優れたプログラマ」になるための一つの条件」というが、そうでない人にもプログラミングの楽しさを提供するということが目標なんだと思う。
本書では登場人物がすべてフルネームの実名で登場する。おそらくはこの本を単に技術の話ではなく、人の話にしたかったということなんだと感じた。プログラミングというのが実に人間的なものであるかもわかる。また、嫌われることもいとわないリーダーシップが優れた製品作りには必要なのだということも教えてくれているように思う。enchantoMOONの”MOON”は不可能と思えたNASAの月着陸アポロ計画になぞらえている。S-IIやGEMINIなどもアポロ計画から取られている。人類を月に送る、という壮大な目標を共有して突き進んだアポロ計画に、日本の小さなベンチャがハードとソフトのすべてを作り上げて製品化するということの目標の高さを投影している。そのプロジェクトは、この本の最後のあたりでもにおわされているが、まだ現在進行形のものであるようだ。それは日の目を見ることができるのだろうか。
自分はほとんどプログラミングをすることなくここまで来た。資質的なベースは向いていないと思っていないので、少し残念にも思っている。enchantMOONの話だとは思わずにタイトルに惹かれてこの本を買ったのだが、その辺の思いもあったりするのだ。
enchantMOONのホームページ
http://enchantmoon.com/ja/
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この本を読んでまもなく、enchantMOONの販売中止のアナウンスが流れてきた。詳しくは以下の2015年12月2日付のブログポストを。本の中でも、このブログの中でも語られているとおり、新しいハード+ソフトを準備中だとのこと。清水さんはそのことを力強くときに自らにも語り掛けるように語っている。
http://d.hatena.ne.jp/shi3z/20151202/1449013058詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1058円
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enchantMOON、大変だったんだなぁ……というのと同時に、逆にAppleやGoogle、Amazonら現代のハードウェア巨人たちのすごさが際立つ。
清水さんの思想にはすごく共感する。必ずしも「コーダー」である必要はないというが、思いついたらすぐ実装というフットワークの軽さに憧れる。