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感想・レビュー・書評
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まずは1巻。ナチスドイツ占領下のユーゴスラビア。祖国を侵略され戦争に翻弄される少年たち。
題材がまず渋いうえにかなり本格的。これは全巻読むしかないな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
以前から読んでみたかったんですが、
入手困難だったのでKindleで。
こんなとき本当に電子版は有り難い。
さて、これ原作本があると思ってたんですがね。
こんなテーマで長編作品を描く作者に脱帽。
そしてそれを支えた読者にも。 -
難解だが凄く面白い。
ナチのクズどものせいでユーゴがメチャクチャになる。というかもともとめちゃくちゃ。
王党派大セルビア主義チェトニックと共産主義パルチザンが、ナチスおよびナチスの傀儡政権でクロアチア人主体のウスタシャに抵抗する。しかし、チェトニックは反共精神旺盛なのでナチやウスタシャのみならずパルチザンを攻撃するクロアチア人やムスリムを殺しまくるぞ。後半にはドイツ同盟国のイタリアから軍事支援されるまでに至る。こいつ本当に反ドイツなのか?ウスタシャは当然のことセルビア人とパルチザン、ついでにユダヤ人とジプシーや同胞であるはずのクロアチア人の反対派を殺しまわる。共産主義パルチザンは英米との協調を目指すソ連に全く指示されず、チェトニックと合流しろみたいに言われる。あーもうめちゃくちゃだよ。中東かな?
漫画の読みどころとしては、やはり悲惨な収容所生活を送るヒロインや、(アルプス造山帯のあたりだから)山の極寒の中次々に栄養失調で死んでいくパルチザンの仲間だろうか。パルチザンの生活もすごくキツイ。全く連合国やソ連の支援がないから略奪経済でゲリラ戦をする必要がある。雪に埋もれた塹壕を掘って薬莢を探しているシーンとか作者想像力の塊かよって感じ。本で読むのとはまた違う残虐さがある。人間が人間でいられなくなるような世界の中、かろうじて正気を保とうとする主人公とヒロインが輝いている。
物語の最後は、「人間性とは想像力だ」ってことを言ってるのかな? 生まれたときから何色にも染まっていなかった自由な心は社会の混乱(暗闇)で失われる。何が善で何が悪なのかを考えるのは重荷である。いくつものイデオロギーや宗教が手を差し伸べてきて、それを選ぶのはエネルギーがいる、それよりは巨大な権力に委ねた方がラクでいい。一つの灯台、力の虹だろう。
しかし、それは人間の才能を活かさず、殺してしまう行為だ。先生が最初に言うように、「人間の才能」とは、人間が過去へも未来へも行けること、記憶、思い出、理想、憧れであると言う。こう言ったものを失わないこと、鍾乳洞を「石の花」と呼べることが自由なのかな。
モルトヴィッチおよびギュームはなんなのだろうか。人間というのは自由を謳うが自由を恐れるもので、自分の力で考えるよりは奴隷的に答えを受け取ることを好むらしい。彼と出会うと「力の虹」をつくるらしい。「力の虹」とはナチスの提供した、社会での模範回答のことだろう。このイデオロギーを選びなさい、この宗教は誤りです、あの民族は欠陥品です、など模範回答のインプリンティングが社会の混乱(暗闇)を鎮める「力の虹」だろうか。モルトヴィッチくん、悪の化身であるか?
先生の正体も明らかではない。これは多分アレか。不自由の化身たるモルトヴィッチと、それに対抗する自由の化身のフンベルバルディンク先生だろうか。