日英同盟 同盟の選択と国家の盛衰 (角川ソフィア文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 著者は元海上自衛隊に勤務し、その後防衛大教授を務めた人で、この本が刊行された2015時点で82歳。
    この本は書き起こしではなく、2000年に刊行された同名書の大幅な改稿だそうですが、それでも元気ですね…
    この本の範囲は日英同盟の締結と解消を中心に、幕末から太平洋戦争まで。
    日本の同盟政策について、安保条約を意識しつつ保守的、リアリスト寄りの態度で扱っています。

    過去の例を引き、戦争では派兵を中心とした具体的な支援の有無有無が国家の信頼を左右し、また平時では理想主義に走らず、安全保障のための同盟を重視し国益を確保すべきとしています。
    まとめでは、アメリカの核兵器を日本国内に配備し、共同運用すべきと踏み込んで提言しているぐらいなので、かなりタカ派の立ち位置から書かれた本と言えるでしょう。
    多国間の平和条約や国連などの国際協調の枠組みは軽視され、第一次世界大戦から第二次世界大戦の間のワシントン体制やロカルノ条約は第二次世界大戦を阻止できなかったと切って捨て、国連に至っては連合国の戦勝クラブ、参加国のスパイ活動が活発、そして「宣伝戦の舞台であり、それ以上の何物でもない」と批判して、国連に金を出すな、中韓の反日宣伝に対抗するための宣伝に使え、というエキセントリックな主張まで繰り出します。
    政治や経済の安定による地域の安定化に役立ったり、米軍の武力行使の時も国際的に強調して実力を行使するための枠組みを提供しているのではないかと思いますが…

    さて、興味深かったところと微妙なところを1つづつ挙げます。
    同盟の意義を、適切な同盟を結んでおくと自国を守るのに役立つという部分に加えて、さらに踏み込んで同盟の必要性を訴えている。
    同盟関係が存在しなかったり、または、存在しても協力を渋る(つまり、同盟のために血を流さない)ことが、国家の立場を不利にする、というのです。
    同盟関係不在によって生まれた緊張の例として、第一次世界大戦の最中、アメリカが日本から侵略を受けるのではないかと疑心暗鬼になり、対米輸出の減少を恐れた日本側が「日本はアメリカに攻め込みません」という新聞広告を出すまでになったという事を紹介していて、これは大変興味深かった。

    微妙なところは、日英同盟を中心に同盟関係を回顧する構成でありながら、現在の韓国や中国の対日政策を批判するなど、本筋から離れて、著者が書きたいことを書いている部分があって、何を言いたい本なのか伝わりづらくしていた。
    この本に限らず、新書だと著者の緊張感が足りないというか、書きたい文章を思うままに書き連ねていないだろうか。
    本の販売部数減を出版点数の確保で補おうとして内容の薄い本が増えているのだろうか?

  • 著者は、『「先の戦争」に至ったのは日本もアメリカも、そして中国も悪かった。総てに、それぞれ責任があるという「複数の正義の歴史観」』に立って本書を執筆。現代人の視点では無く、その時に海外諸国が日本をどう評価し、日本人はどのように感じて行動したかを当時の新聞雑誌の記事を使って解き明かそうとしている。
    アメリカ、イギリスを初めとした欧米諸国が如何に人種差別を当たり前としていたかという事に憤りを覚えると同時に、日本人がその頃からエコノミックアニマルよろしく利潤追求で動いたか(どこの国も同じとはいえなくもないが)国民大衆がヒステリックに戦争を求めていた事に歯がゆい思いを抱くのである。
    結局は戦争は避けられなかったのかという思いと、今も大きなところは変わっていないという思いである。
    戦前の諸国の行動様式、日本人としての行動様式が大きく変わってきているとは思えない中、果たして日清日露から太平洋戦争という流れを教訓とすることができるのだろうか。

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著者プロフィール

元・防衛大学校教授。NHK「坂の上の雲」海軍歴史考証・海軍指導担当。

「2010年 『日露戦争を世界はどう報じたか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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