Mommy/マミー [DVD]

監督 : グザヴィエ・ドラン 
出演 : アンヌ・ドルヴァル  スザンヌ・クレマン  アントワン=オリヴィエ・ピロン 
  • ポニーキャニオン
3.92
  • (29)
  • (38)
  • (28)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 239
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988013407084

感想・レビュー・書評

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  • とある世界のカナダでは、2015年の連邦選挙で新政権が成立。
    2ヶ月後、内閣はS18法案を可決する。
    公共医療政策の改正が目的である。
    中でも特に議論を呼んだのは、S-14法案だった。発達障がい児の親が、経済的困窮や、身体的、精神的な危機に陥った場合は、法的手続きを経ずに養育を放棄し、施設に入院させる権利を保障したスキャンダラスな法律である。
    ダイアン・デュプレの運命は、この法律により、大きく左右されることになる。
    多動性障害を患うスティーブとダイアンの愛憎半ばの親子関係を、障害がある息子を理解しようとしてもどうしても限界を越えると苛立ちが先に立ってしまう難しさ、手加減なく言い合っていても強い絆で結ばれている母子の愛憎関係、お気に入りの曲に合わせてダイアンとスティーブが踊るシーン、死んでしまった父親を忘れられないスティーブの心の傷、キャラクターの心情を適格に表現する「Wonder Wall」などの挿入歌の素晴らしさ、スティーブが訴えられた裁判をきっかけにした母子の試練、ヒリヒリするような母子の愛憎関係を描いた傑作映画です。ラストでダイアンの決意が引き起こしたのが、希望なのか絶望だったのかは、ぜひ見て確かめてください。

  • 障害を持つ息子と、その母親の姿を通じて、何よりも愛おしく大切なのに、のしかかる肉体的・精神的な疲弊や葛藤、経済的負担のために、共にはいられない関係を、映像や音楽などの総合的な演出を駆使して描いた、グザヴィエ・ドラン監督作品の一つです。

    重度のADHD(多動性障害)のために施設に入所していた15歳のスティーヴは、施設の食堂に放火して重症人を出したことから、強制的に施設を退所させられ、母親のダイアンに引き取られます。

    しかし、夫と死別したシングルマザーのダイアンの生活は苦しく、働くためにも、四六時中スティーヴの面倒を見ているわけにはいかない。また、青年期に差し掛かって体力も腕力もある息子の、障害によるものとはいえ、衝動的で時に暴力的ですらある行動を、女手一人では抑えこむことすら簡単ではない。

    それでも、休職しているとはいえ、教師である、隣人の中年女性・カイラの協力を得ながら、何とか息子を社会に適応させようと奮闘するダイアン。

    三人は、束の間の幸せな時間を過ごしますが、スティーヴがかつて起こした放火事件は、二人の生活に重くのしかかってきて…。

    ドラン監督の普遍的なテーマである、「愛しているが故に、傷つけあい、疲弊し、側にいられない人々の姿」を、「母子」という、どう足掻いても永久に変わらず逃れられない関係性の中で描いた本作。

    それまでのドランらしい、奇抜さや虚実入り混じる浮世離れしたシーンはほとんどありませんが、閉塞感を感じさせる1:1比率の小さな正方形の画面の中に、豊富な色彩と登場人物たちの激しい感情の応酬を配置した演出は、他者では決して踏み込めず、ある種隔離された「母子」の脆い世界を象徴しているかのようで、惹きつけられます。

    狭い正方形の画面が時折拡張するのが、「外の」世界からもたらされる母ダイアンの心の揺らぎや、おそらくは願っても叶わない明るい未来を幻視した時であるのが、これまた、胸にひどく重苦しく突き刺さります。

    ダイアンの下した決断も、物語の結末も、非常につらいものです。

    しかし、たとえ、ダイアンのような障害児の親でなくても、例えば、老人介護を抱えている家庭などにも共通するような、家族として愛情があるがゆえに却って割り切れない感情や苦しみ、今後に対する不安、介護者と被介護者双方の疲弊や衝突、経済的負担などといった、現実的な内容が、全編通じてこれでもかと盛り込まれていて、とてもリアルに胸に迫ってきます。

    家族の愛情や繋がりに終わらず、それでも一緒にいられない要因という現実を包み隠さず描いているという意味では、もしかしたら、(フィクションですが)究極的なドキュメンタリーといえるかもしれない作品です。

    「そういうお話」として覚悟して観られる方と、ドランの作品ごとに変化するこだわりの演出を観たいという方には、オススメな作品です。
    それ以外の方にはとてもつらいと思います。

  • "人生はきっと楽しい
    浮いても沈んでも自分の人生
    止まってほしい時
    早く過ぎてほしい時
    いろいろあるけれど
    一瞬でも素晴らしい景色が、
    体験がそこかしこにはあるんだね "

    ある人が言ってくれた宝石のような言葉をふと
    思い出しました。

    君をみていると 何だかつらい
    無邪気さと無鉄砲、その不器用な剥き出しの心は
    ただ愛を求めていただけだったのに

    喜びと切なさはいつだってセットなんだよ
    たとえ一瞬でも思いをぶつけ、受け止めて
    貰えたのなら人は幸せだ
    生きていけるだろう

    決してなくならない宝物を抱きしめて 囚われることのない自由な心を
    青い空に羽根を広げて
    一瞬が永遠に繋がる 素晴らしい景色を、、
    その記憶が 君を生かす

    • 嵐さん
      コメント無しでいいね!だけでごめんなさい。
      コメント無しでいいね!だけでごめんなさい。
      2016/06/24
    • kakerikoさん
      いえいえ、御丁寧にどうも(^-^)
      有難い限りです!
      いえいえ、御丁寧にどうも(^-^)
      有難い限りです!
      2016/06/24
  • 発達障害児の母親の困難が描かれている。母親がついに我慢の限界となって泣き叫ぶシーンや、スティーブが電話で母親への感謝の念を伝える場面で号泣した。障害児を母親が施設に入れられる法律ができた……という架空の設定がよく効いており、考えさせられる深い映画。かといって面白味がないわけではなく、むしろスティーブの巻き起こす騒動はユーモラスに描かれていて、絶妙。画面が正方形なのはどんな意味があるのだろうかと考えながら観ていた。スティーブが画面を押し広げるシーンもあり、人間社会を取り巻く制約、偏見、不自由の象徴か。

  • 多動性障害、発達障害の子どもと母親との生活。情緒不安定で激高しやすいので親子で激しい喧嘩もする。外に向かってもするので親としては手を焼く。特に放火事件を起こし損害賠償も求められている。これに障害のある子どもを簡単に入院できる制度がカナダにあり、そのことが裏目に出るという社会的メッセージも持っている。

    吃音のある隣人も含めてほぼ3人が出ずっぱりで愛憎が交錯する熱演。面白いのは1:1の左右カットのサイズの映画で、制作費を安くしているのかと思ったら、二度ほど大きくなる。一つは子どもが両手で画面を開く仕草をして広くなる。あえて狭くするというのは珍しいのでは。

    発達障害の子どもと母子の関係などあまりないテーマではないかと思うし熱演は分かるのだが、テーマ自体が興味の対象外。見ていてしんどいばかりだった。法律についてはカナダの話だし。

  • 音楽、カット、展開、どれも秀逸。特に人物の映し方にグザヴィエドラン監督の才能を見た。
    メインの3人、皆それぞれの人生に全力でぶつかっている。やはり母親の子どもへの向き合い方、自分たちの生への向き合い方が、大きな感動を生んでいる。特に母親役の女優さんの演技が光る。クライマックスの寝室でのシーンは何かが憑依したかのよう。何かをぐっと堪えているようでもあれば、身体中から迸るようなものも感じる。傑作である。

  • 「わたしはロランス」で喪失の物語を描いたグザヴィエ・ドランが、今度は失った愛情を取り戻す過程をひたすらに美しく切り取った。無限に広がる母としての愛を自覚しながら、現実という陸地の縁で立ち止まらざるを得なかった彼女の苦しみが胸に刺さる。

  • 2017.2.12
    監督グサヴィエ・ドラン

    見よう見ようと思いながら、この度やっと視聴することができた。「たかが世界の終わり」を映画館に観に行き、すぐさまドランに魅了されてしまった。
    どちらにも共通するのだが、微笑ましい場面、クスクスと笑ってしまう場面がありながらも、ストーリーは重たく、ラストにどどどどっと重いものがのし掛かるような、そんな感じ。人物同士の会話はテンポよく激しさがあり、騒々しさすら感じる。

    演出や映像や音楽には監督の拘りやセンスが詰まっていて、その中に吸い込まれるような感覚になる。とても美しい。

  • 何か解決策や希望を見せることはないので重苦しさはあります。独特の狭い画面で状況 のギリギリな感じを加えていますね。それが三人揃ってサイクリング(彼はロングボードでカートを押しているんですが)のシーンと三人揃って海辺にドライブに出かけるシーンで画面が広がり、開放的な気分になります。母親の毎日を一生懸命生きている姿がとてもたくましい。

  • 最初は驚いたものの、観終わってみれば間違いなく必然性のあるアス比と画面使いだった。
    映像美と演出の巧みさにも舌を巻いた。

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