多摩川物語 (ポプラ文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 泣ける短編話の連作8編。「越冬」だけは泣ける話ではなくほっこりする話だった。「本番スタート」は感動的でウルウルでした。「花丼」「月明りの夜に」はしんみりと。「黒猫のミーコ」は動物物で泣けるのは必須ですね。

  • ーーーーーーーーーーーーーーー
    映画撮影所の小道具係を辞めようかと悩む隆之さん、客の少ない食堂で奮闘する継治さん、月明かりのアパートで母をしのぶ良美さん…。
    多摩川の岸辺の街を舞台にくりひろげられる人生のドラマ。「黒猫のミーコ」ほか、名もなき人びとの輝ける瞬間が胸を打つ連作短篇集。
    ーーーーーーーーーーーーーーー
    小説です。
    なんで買おうと思ったのかは忘れたけど、短編で重すぎず、さくっと読めそうだから買ったんだろうと思います。
    重たい小説は、最近全然読む気になれないんだよねぇ。。
    読みたい気持ちがないわけじゃないんだけど。。。。

    内容は多摩川沿いに暮らす人々の話で、全部で8篇。
    それぞれのお話の中で、少しずつ登場人物がかぶるんだけど、最後に彼らがまとまってどうにかなるとか、そういう驚く展開はないです。
    ストーリーにもよるけど、全体を通して、静かで、少し悲しく、少しあったかい、そんな感じの内容が多いです。

    登場人物みんな、どこか満たされてなくて、ある部分をあきらめたり、妥協したりしてます。
    ある人は旦那に、ある人は夢に、ある人は親に。。。
    最後のお話が「月明かりの夜に」ってタイトルだからなのかもしれないけど、全体を読んで
    「あー、生きるってことは、月の満ち欠けと一緒で、満月の時間はほんの一握りなんだなー。
    しかもその満月の時期も曇りで見えないことも多かったりするから、みんなどこか欠けた状態で人生の大半を過ごしてるんだなー」
    とセンチメンタルなことを考えたりしました。

    どの短編も面白かったけど、私が個人的に好きなのは、「黒猫のミーコ」と「月明りの夜に」かなーー。


    ワタクシ的名文
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    「人として、こういう見方が間違っているのは、お父さんにもわかるよ」
    父親はそういう前置きをした。
    「こんな時代だから、生きてりゃいろいろある。ホームレスになってしまう人もいるだろう。
    でもはっきり言おう。一生懸命真面目に働いていれば、人はホームレスなんかにはならない。これは事実だ。
    どこかであの人たちには油断というか、怠惰な時期があったんだろう。もちろん、だからといって
    あの人たちを見殺しにするような国ではないけどね」
    (中略)
    「あの人たちが盗みを働いているという噂もある。やむにやまれずの場合もあるだろう。お父さんだって
    同情はするよ。でも、お前には一切関係ないことだ。お前は学校にも塾にも行っているんだから、まずそこで
    友達を作れ。その方がいい。だからあの人たちには今後一切近づくな。
    「台風のあとで」より
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    名文っていうか、考えちゃったセリフですね。。。。
    学校でちょっと浮いてる男の子が、河川敷のホームレスと仲良くなり、そのことに対してお父さんが息子に言ったセリフ。
    うーーーーーん。自分が親だったらどうするんだろう…。
    自分の息子がホームレスに嫌がらせとか暴力ふるってたら全力で叱ることは確定だけど、
    自分の息子がホームレスと仲良くなってそれが噂になったとして、別にみっともないとか思わない気がするんだけど…。
    息子じゃなく自分自身がホームレスと話せって言われたら、
    「においがくさかったら長時間一緒にいるのきっついなー」とか、
    「お金たかられたら困るなー」とか
    気になる点はぶっちゃけあるんだけど、自分の息子が普通にただ話し相手として話すぶんにはわざわざ止めない気がする。。。止めるのかな。。。
    私の人生の前半(10代まで)で、ホームレスをお目にかかったことがないからか、ホームレスについて自分はどういう考えなのか、
    そのスタンスが自分でもよくわかんない。。。。
    現実でほんとにそうなったらやっぱりこの親のように「付き合わないように」っていうのかしら…。
    なんか、、、、、、ちょっと、、、、そうは言いたくない自分がいるんだけど。。。
    まぁお金たかられる問題は、実際問題ありえるだろうから、
    「話し相手としてはいいけど、お金とか物を要求されてもそれはちゃんと断りなさい」くらいは言いそう。
    あと、このお父さんは「一生懸命働いていれば、ホームレスなんかにはならない」と言ってるけど、そうなのかな…。
    油断や怠惰があったからホームレスになってしまうのだろうか。。。
    うーーーーん、こういう言い方はあんまりしたくないなーーってなんとなく思いました。
    このお父さんが言ってることはそれなりに事実な部分もあるんだろうなぁとも思うし、
    言いたくないっていう感覚は、単に自分がいい人ぶりたいってだけなのかもしれないけど。
    なんか、、、ちょっと、、、こういうふうには言いたくない。。。。


    ーーーーーーーーーーーーーーーーー
    だれも手を抜いて生きているわけではない。地の底を這うような思いを今みんなが耐えている。それでも
    客の戻らない食堂や、倒産する看板屋が出てくる。これが現実だ。
    「花丼」より
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    さっきのホームレスの人たちも、限界を迎える前はこういう心理だったんじゃないかなーって思うんだよね。。
    どこかで耐えられなくなったり、どうにもできなくなっちゃって、投げやりになってホームレスになるという…。
    果たしてそれは「怠惰」とか「一生懸命働いてない」というんだろうか。
    「言われたことだけやって、自分で考えないからだ」とか
    「努力の方向性が間違えてる」とか、
    「知恵を出さず、ただ闇雲に継続していることは頑張ることではない」とか、
    まぁ厳しい言葉を言おうと思えばたくさん言えるんだけどさぁ、実際、それができる人たちばかりじゃないよねぇ…って思ってしまって。
    不器用さんが不器用に生きた結果、心が折れちゃっても、それは不器用さんの自己責任で、不器用さんはそんなに生きにくい世の中でも、
    心折らずにに生きなければならないのだろうか。。。
    果てしなくしんどいなー。生きるって。。。

  • ふわっと暖かくて切ない感じ。
    最初の話で涙腺を破壊されたので、その後しばらく続きが読めなかった。
    だって猫が……っ!

    しかし、ほぼ全てラストが曖昧で投げっぱなしなのは短編ゆえに余韻を楽しんでねってことなのだろうか。
    でも、なんかモヤモヤする。

  • 多摩川沿いの町を舞台にしたた短編集。それぞれの短編があるところで繋がっていたりする。調布市、多摩市、稲城市あたりかな?

  • 期待した以上に良かった。でもネコが死ぬのは反則…

  • 多摩川周辺に住む、どちらかと言えば今の暮らしに困っている人たちが主人公の短編集。どれもすっきりとした幸せは迎えられないんだけど、救われてはいる。

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著者プロフィール

ドリアン助川 訳
1962年東京生まれ。
明治学院大学国際学部教授。作家・歌手。
早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒。
放送作家・海外取材記者を経て、1990年バンド「叫ぶ詩人の会」を結成。ラジオ深夜放送のパーソナリティとしても活躍。担当したニッポン放送系列『正義のラジオ・ジャンベルジャン』が放送文化基金賞を受賞。同バンド解散後、2000年からニューヨークに3年間滞在し、日米混成バンドでライブを繰り広げる。帰国後は明川哲也の第二筆名も交え、本格的に執筆を開始。著書多数。小説『あん』は河瀬直美監督により映画化され、2015年カンヌ国際映画祭のオープニングフィルムとなる。また小説そのものもフランス、イギリス、ドイツ、イタリアなど22言語に翻訳されている。2017年、小説『あん』がフランスの「DOMITYS文学賞」と「読者による文庫本大賞(Le Prix des Lecteurs du Livre du Poche)の二冠を得る。2019年、『線量計と奥の細道』が「日本エッセイスト・クラブ賞」を受賞。翻訳絵本に『みんなに やさしく』、『きみが いないと』(いずれもイマジネイション・プラス刊)がある。

「2023年 『こえていける』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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