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感想・レビュー・書評
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フランスにおいて、穏健派イスラム政権が樹立したことを想定して描かれた小説。主人公は大学教授であり、インテリを中心に描かれている。
非常に面白かった。ヨーロッパ世界への認識が、暗いものになりつつあるのを感じたし、あり得なくない想定で描かれてたので、臨場感があった。
しかし、実際にイスラム政権がフランスに樹立するのは考えづらく、また、本書で描かれたような想定が、実現するとは思えない。さらにイスラム世界への誤解もありそう。
でも、?は付くが、あり得なくはない未来を想定した小説だったので、興味深い小説だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
知識人階級である主人公のアンニュイな日常と、時折そこから逃れるべく盛り込まれる官能的な行為。 仏国における強力なイスラム・プロパガンダ物語を期待していたギャップを感じたまま読了も、佐藤優氏のあとがき・解説でぐっと納得感が深まる。 “インテリは脆い。イスラム国に対する恐怖と、EUへの不安。 ならば、イスラムの戒律に迎合する事での安定(服従)を” 読中・読後に英国のEU離脱と、二度目のフランステロ。 さて、明日はどっちだ?
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ISの膨張とテロへの恐怖、そしてヨーロッパへの難民流入が国際社会で大きな問題になっている今においてとてもタイムリーな内容であると感じた。イスラムの本質を理解していないと本書を理解できないかというと、そうでもないとは思う。ただ、日本からはイスラム世界は色々な意味で遠いと思う。ヨーロッパの人々が感じている感覚を理解することは難しいだろうなっと感じる。
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極右かイスラム政党かの選択を迫られてフランスがイスラム国家になってしまうというお話。センセーショナルとか現代の悪夢とか言われる割に突飛な印象はもたない。
普通に思えてしまうところが悪夢ということ?
それにしてもフランス男は一夫多妻になって女が一杯おればええんかいっ!と突っ込みたくなる部分はある -
仏作家ウエルベックの話題作。合法的な手段にてイスラム教に支配されたフランスを描く近未来SFである。自由主義のしんどさ、民主主義のアホらしさ、そして、知性的なヒューマニズムからのなしくずしの離脱。ウエルベックのテーマはいつも近代の黄昏だと思う。
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2022年、フランスにイスラム政権が誕生する。パリ第三大学の文学教授フランソワが「パリ=ソルボンヌ・イスラーム大学」と名前の変わった職場に残るには改宗が必要になり、彼は年金生活を選んで大学を去る。
説明なしに登場する固有名詞が多くて最初は戸惑うけれど、この魅力的な物語を追う妨げにはならない。
「イスラーム国」の脅威もあってヨーロッパでは反響を呼んでいるようだが、つまるところこの作品は、ヨーロッパとは何かという伝統的な問いかけへの回答のひとつなのだろう。
そう思うとヨーロッパ人には「ヨーロッパ」があって羨ましい。きっとそれは重荷でもあるのだろうけれど。
結末は、何となく学生時代に読んだ「1984」を思い出した。