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感想・レビュー・書評
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神経科医の症例集。
それぞれの患者について、どこに障害があるのか詳細に検討し、どうしたらより良い日常を送れるようになるのか、真摯に向き合っている姿勢が伝わってきた。
どこかの回路が働かなくなっても、他の機能で補って対応しようとしたり、まだまだ解明されていないことも多かったり。
改めて脳というのは、人間の高次機能を司る大事な部分なんだと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
脳に障害を持つ人々の様々な症例を語った一冊。ひたすら作り話を並べる男性の話が一番ズシンと来たし、本人の内なる孤独や不安はどのようなものだろうかと思う。心身の自由や記憶を失っても何かに縋り、何かを救いとして生きようとする。人はなんとも脆くて、それでいて時にしぶとい存在なのだと驚嘆する。
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脳や神経への損傷、欠損、過剰などによる様々な症例を記録したエッセイ集。著者の患者への思いやりや尊敬が感じられる。患者たちは通常現れない奇怪な症状を持っているが、それが果たして不幸なのかはわからないなと思った。
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「世界の見方が変わる」と教えてもらったので読んでみた。
神経学者の著者が自身が診てきた患者の例を紹介していく中で、人間が人間らしく生きるとは、という根源的なところを考えさせられる本。
紹介される24つの事例はいずれも平穏に暮らしている身からすると信じがたい不思議なもので、しかしそのような状況になりつつもそれぞれの患者は社会(本書では”本土”などとも称される)と何らかの形でつながったり、逆に断絶させられたりする。
初版は1992年で、ダイバーシティが叫ばれる世の中になるよりずっと前のお話。本書の背後には、才能を見いだされることなく異端者として社会と断絶させられた数多くの患者がいるのだろうと思いを馳せる。人間らしく生きることについて考えさせられるとともに、人の上に立つ人間としての覚悟についても考えた。
以下、印象に残ったところ。
・自然科学は、より一般的、普遍的な事象を取り上げ、対象のパーソナリティには踏み込まない。しかし医学においてそれぞれの症状には、その患者の背景こそ重要であり、現在に至るまでの背景なくして詳細分析はできない。
・記憶こそがわれわれの人生を作り上げるもの。記憶がなけらば人生は全く存在しない。
・戦争中は生の実感を感じられたが、戦後の生活を色あせたものとして語る元戦闘員は多い。
・一度その病気だと気がつくと、その後は簡単に見つけられるという病気(トゥレット症)
・「本土」は特殊なものを受け入れるだろうか?特殊という意味では障害も天才も同じ
・患者はその人なりに、病気とたたかい、人間としてのアイデンティティを取り戻そうと努力している
たとえ脳の機能は戻らなくても、それで人間たることが否定されるのではない -
人間は感情、意思、感受性を持った倫理的存在で、神経心理学はそれについて語ることはできない。しかし人間としては少なからず何かできるかもしれない(ルリア)
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知的障害とかアスペルガーとか痴呆とかあれとかこれとか、人の脳というのはいかに繊細で、誰もが欠陥持ちで、そもそもそれは欠陥なのかという程小さな違いでこんなにも違う。ほんとに紙一重だなぁとつくづく思う。