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赤い瞳、年をとらない身体―。誰にも言えない秘密を抱えて生きてきた、調香師の香具山紲は、都会を避け、軽井沢の別荘地でひっそりと暮らしていた。しかしそこへ、過去に最悪の別れ方をした元恋人のルイが姿を見せ驚愕する。「次に私の前に現れれば殺す」。別れ際、酷い言葉を残したルイは、今も紲も憎んでいるはずだった。あれから百年近く経った今になってルイが現れたのは、裏切りにも似た過去の紲の決断を裁くためなのか、それとも…。人間よりも麗しく、獣よりも狂おしい、人ならざる者たちの気高い愛の物語。
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淫魔で使役悪魔の紲は、「私の前に二度と現れるな――次に会ったら殺す」と凄絶な台詞を告げられ別れたルイと六十五年ぶりに再開する。
剣呑な別れ方といい、蒼真とルイの険悪な仲といい、いったい何があったのかと思いつつ読み進んでみれば、他愛もないことが、ルイの嫉妬心だったり紲の自分が淫魔で男だという引け目だったり、まあそれまでの紲の悲惨な経験だったりがもとでこじれただけだったみたい。
俺様なルイが、紲のことに関しては臆病だったり自信がなかったり、紲の一言に傷ついたり、まさに恋に翻弄される男そのもので、読んでるうちにかわいそうになってしまった。
紲は紲で、淫魔という特性のせいでずっとひどい目にあってて、簡単に人の愛を信じられないというか、愛してると言われるのを嫌悪するほどで、それはそれでかわいそうだったけど、結局は紲が腹を括ってルイと共に生きることを決めて、なんというか、長い長い痴話げんかだった、という感じがしないでもない。
一番かわいそうなのは、それに巻き込まれてる蒼真なのかもしれない。