工場日記 (ちくま学芸文庫) [Kindle]

  • 筑摩書房 (2014年11月10日発売)
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本 ・電子書籍 (266ページ)

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  • この本で初めてシモーヌ・ヴェイユの存在を知った。このような純粋な人がいたとは。彼女は哲学教師の資格を持ちながら、労働者を真に理解するために、彼らの中に入り、彼らと共に工場で働いた。「工場日記」はその時の体験を綴った日記。
    病弱で体調を崩しながらも日々過酷な労働をし、その体験をつぶさに書き留めている。日記の中には体調の悪さや労働の苦しさがリアルに描かれており、彼女の経験した苦しみが切実に伝わってくる。
    「よく眠れない。朝、食欲なく、かなり激しい頭痛。出かけるとき、胸をしめつけられるような苦しみと不安をおぼえる。」
    「憂鬱で、くたくたに疲れ切り、どうしようもない怒りのために胸がつまるような思いがし、自分の中の生命力がすっかり空っぽになってしまったような感じがする。」
    これほど苦しんでまで、なぜ彼女は工場労働を続けたのだろうか。彼女を突き動かしたのは、彼女の持つ本質的な欲求だった。
    「人々と同化し、人々と同じ色をまとうことによって、その人々の中を、さまざまな人間的環境の中を通って行きたいという本質的欲求を、わたしは持っております。それを、神の召命と呼んでもよいと思います。」
    苦しみを言い訳にせず、自分の本質的欲求に真っすぐに従う。なんて強い純粋さだろう。
    そんな彼女の以下の一言が重い。
    「決して苦しんだことのない人間の単純さ。」

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著者プロフィール

(Simone Weil)
1909年、パリに生まれ、43年、英・アシュフォードで没する。ユダヤ系フランス人の哲学者・神秘家。アランに学び、高等師範学校卒業後、高等学校(リセ)の哲学教師として働く一方、労働運動に深く関与しその省察を著す。二度転任。34─35年、「個人的な研究休暇」と称した一女工として工場で働く「工場生活の経験」をする。三度目の転任。36年、スペイン市民戦争に参加し炊事場で火傷を負う。40─42年、マルセイユ滞在中に夥しい草稿を著す。42年、家族とともにニューヨークに渡るものの単独でロンドンに潜航。43年、「自由フランス」のための文書『根をもつこと』を執筆中に自室で倒れ、肺結核を併発。サナトリウムに入院するも十分な栄養をとらずに死去。47年、ギュスターヴ・ティボンによって11冊のノートから編纂された『重力と恩寵』がベストセラーになる。ヴェイユの魂に心酔したアルベール・カミュの編集により、49年からガリマール社の希望叢書として次々に著作が出版される。

「2011年 『前キリスト教的直観 甦るギリシア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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