本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・電子書籍 (195ページ)
みんなの感想まとめ
この作品は、引きこもりというテーマを通じて、個人の苦悩や再起の過程を赤裸々に描き出しています。著者の人生は、かつての栄光や社会的期待に縛られながらも、自己を見つめ直し、どのようにして今に至ったのかを探...
感想・レビュー・書評
-
通学中に大便を漏らしたことをきっかけに、名門中高一貫校に通っていた「神童」は引きこもるようになった。引きこもった少年は逃げるように上京し、極貧生活を続けた後にコスプレキャラ芸人「髭男爵」の貴族としてブレイクすることになる。コンビの芸人で、ネタを書くほうが書く文章は基本的に面白い。生々しくも、どこか笑えてしまう筆致は流石の一言だ。
男爵ほどではないが人生がうまくいっていなかった時期が長い人間としては、共感できる描写には事欠かない。
> 僕は父と、いや両親と、「公的な」付き合いしかしてこなかったことに気付く。変な話だが、心底腹を割って、家族として話したことがなかった。プライベートの付き合いを親とできていなかった。(pp.115)
不倫がバレて左遷された父親の転勤を機に、島で父と暮らしている時を振り返って出るこの描写。虐待があるわけではないし、なんなら表面上は平穏だがコミュニケーションがひたすらうまくいっていない機能不全家族の雰囲気をよく表した一文だと思う。機能不全家族において、家庭内コミュニケーションは「公」なのだ。だから家庭外でもその雰囲気を引きずって、勝手にしんどくなって、社交嫌いになる。「私」のロールモデルがないから、他人と親密になることに多大な障害も抱える。男爵が時折ラジオでも見せる社交嫌いは「キャラ」ではあろうが、こういう下地があってのキャラだから説得力がある。
引きこもりを契機に、「まとも」とされる人生から大きく外れてしまった男爵は「人生が余った」という感慨を持つ。まだ若いのに、と思う人も多いだろうが、大きな挫折というのは人生へのモチベーションを容易に失わせる。
たとえば様々な挫折を抱えた少女たちが合唱を通して再生していく宮下奈都の青春小説『よろこびの歌』でも、16歳にして「余生」を送る少女が描かれている。『ヒキコモリ漂流記』を読みながら、私は肩を壊した元ソフトボール選手の話を思い出していた。
> 翌日になって腫れと痛みは増した。病院に行ったときには手遅れだった。肩は壊れていた。私の人生もそこで壊れた(宮下奈都『よろこびの歌』)
高校時代にメンタルの平衡を崩した時の私も、この「余生」感を味わっていた。余生を生きていると自分の人生が軽くなって、真剣に生きるなんて馬鹿らしくてやってられなくなる。
> 「人生が余った」などと思って生活している人間と、その人なりの能力の中で、一個一個、大事に積み重ねてきた人間とではまったく違う。そういう人にとっては、自分の人生とは、それはそれは惜しいものだろう。決して、雑には扱えないのである。(中略)30対0で負けてる試合だ。誰が真剣にやれるか。(pp.148-149)
現実は小説とは違う。肩を壊したソフトボール選手は合唱をきっかけに再生できても、中学校をドロップアウトした青年はなかなか再生できない。男爵は娘ができてようやく「時間が足りない」という感覚を得られたらしいが、染み付いた強迫観念には苦労している様子が見てとれる。
人は無意識に解決を求める。しかし男爵は解決できていない。両親とは未だにギクシャクしているし、下の娘には自分が一発屋であることをカミングアウトできていない。(上の娘には最近ようやくカミングアウトした) それでも売れていて、なんとかなっている。
こっちのほうが教訓的ではないか。男爵がことあるごとに言う「キラキラしなくてもいい」というフレーズは、まさに男爵が体現していることだ。自治体や公的機関から講演のオファーが絶えない理由がよくわかる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
結構ヘビーな引きこもり人生を送って来られたのだな、と驚きをもって読み進む。
地元の天才が、落ちぶれてコンビニでかつての同期と遭遇、なんて、想像するだけで悲惨で恐ろしい。
自分の小学生時代、地元の有名なデキル子が、テレビで「全国の天才少年」としてゴールデンタイムのスペシャル番組で紹介されたが、後に進学校で同級生を殴って退学した、という話があった。
「デキル子キャラ」ほど、ダメな自分を受け入れ難いのだと思う。
著者は、そのねじれを社会人になっても随分と抱えてきていたが、どうにか今の立ち位置までやってきて、このように示唆に富む本を書かれているのが「よくここまで頑張って来られましたね...」と乳母のような思いで読み終えた。
本人がどう思えるか次第だが、いつからでもどんな方向へも(茨の道かもしれないが)歩んでいけるものだ、と思った。
これを思うと自分のこれまでの苦労/困難なんて、臍のゴマ程にもならない些末なものだった。 -
たまにネット上で山田さんの文を見かけることがあって、語彙も表現も突出して面白いなあと思っていた。それで買ってみたのだが、本の内容は、あまりに赤裸々に描きすぎていて、面白いというより心配になってしまった。両親とか自分を馬鹿にした人を絶対今でも恨んでるでしょ。どういう気持ちで読んだらいいのかわからなかった。
-
すごく読みやすい文章をかく。内容以前に文体に驚いた。一人の人生がコントのように書かれている。ちゃんとオチまであって芸人だなと感じた。
内容は似たような状況、境遇にいるから、理解はできた。だけど共感はできなくて、一度本を開くのもやめた。
ただ、どうやって再起したのか気になりもう一度本を手に取った。この時はすごいドラマというか、泣ける、自分も頑張ろうと思えるエピソードや教訓をもとめていたのかもしれない。そんな幻想は一切なくて、突きつけられるのは現実。
生きづらさ、それに追い討ちをかけるように迫る現実に息苦しさを覚えたが、いい子であることをやめたら少しだけ楽になる、どうでもよくなる。「人生はおまけだ」程度の考えでいれば楽に生きられるのかもしれない。 -
ジェットコースターライフ
本棚登録 :
感想 :
