限界費用ゼロ社会 <モノのインターネット>と共有型経済の台頭 [Kindle]

  • NHK出版
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  • これまでの産業の進化と文化のつながり、その歴史の紐解きから、今起きていること、これから起こることを論じている。表面的な世の中の変化の根底にある流れを理解出来た。

  • 3

  • これからはすべてが費用ゼロで使えるようになってくる。
    そうすると、収益を上げて新規投資ができなくなるので、資本主義が成り立たなくなる可能性がある。
    貧困をなくすには電力を提供することが大切。

  • 3Dプリンターや自動配送のマシンが安く入手できる時代が来た時、この本に書かれている未来が到来するのだと思う。

  • いま、私たちは一大パラダイムシフトに立ち会っているらしい。なぜそんな変化が起こっているのか?パラダイムシフト後の社会はどうなるのか?が知りたくて本書を手に取った。

    著者はジェレミー・リフキン。欧州委員会やメルケル独大統領のアドバイザーも務める大物。限界費用ゼロ社会という切り口で、豊富な実例を根拠に、ポスト資本主義のビジョンを示す本。

    ■要約

    1 「資本主義から協働型コモンズへ」

    資本主義では生産性が極限まであがる。生産性が極限まであがると、利益が出せなくなる。資本主義は失敗によってではなく大成功によって終りを迎える。エントロピーの増大による気候変動などのつけも、それを後押しする。次に来るのは協働型コモンズによる共有型経済。移行はすでに始まっており、21世紀の半ばまでにはほぼ移行するのではないか。資本主義は残るだろうが、経済の端っこに追いやられる。

    2 「限界費用がほとんどゼロになる社会」

    財を一つ増産したり、サービスを一回増やしたりするのにかかるコスト(限界費用)がほぼゼロならば、それが生産性の最高水準ということになる。IOTが限界費用ゼロ社会を支える。IOTは3つのインフラ(コミュニケーションの手段、エネルギー源、移動手段)をより効率的する。

    3 「移行後の社会の価値感」

    無一文から大金持ちになりたい→持続可能な生活の質を求める
    所有→アクセス
    市場における交換型経済→共有型経済
    生産物の量で測るGDP→生活の質を重視する指標
    従来の通貨(見知らぬもの同士の集団的信頼に裏打ち)→地域通貨、時間通貨(社会関係資本に裏打ち)
    希少な「もの」を求める気持ち→実は潤沢に存在しているお互いの受容や信頼、仲間を求める気持ち
    などなど。

    ■まとめ
    気候変動をとめつつ、健全な社会を実現させるとてもよい移行という風に見えた。が、完全なシステムというのは存在しないと思うので、欠陥もあるのだろうか。すでにある格差はどうなるのか?人類には競争の本能があるからこんなユートピア無理では?それでも残るインフラの維持に従事する人は?などの疑問にも著者なりの回答をしていたように思うが、文章ぎっしりで、何回も寝落ちしながら読んだので、見落としていることが多そう。網羅的で読み応えのある本だったので、単元ごとに精読する形で再読していけたらいいなと思った。

  • これから起きる限界費用がゼロに近づく社会に関して大変革のメカニズムを説き、確かな未来展望を描かれていて、個人的にはESG投資とかの流れが来ているのもよく理解できました。
    ただし、エネルギー部分に関しては風力や太陽光は気候の変動が出版された時よりも大きいため、石炭や原子力の可能性も残しておく必要があるかと思う。

  • 概要:

    ・コミュニケーション/エネルギー/輸送に掛かる費用が0に近づいていくことで、資本主義が終わりに近づいて、協働型コモンズなるものが到来する

    ・そこではIoTやビッグデータ処理,自動運転,再生可能セネルギー等が重要な働きを持つ.

    2020年から見て限界費用ゼロ社会に近付いたかどうかと言われると,「コミュニケーションの無料化は進んでいるもののエネルギー,輸送は依然無料化には程遠い.また無料になったコミュニケーションも資本主義の枠組みを飛び出るものではない.」ではなかろうか.

    ・データとデータサイエンスを駆使したロングテールを回収するビジネスが可能になった.→コンテンツを解放し,行動履歴や利用履歴を利益の源泉とすることが可能になった.→コンテンツを解放するインセンティブが発生した.

    ・コンテンツがそもそも飽和しつつあり,デフレになっている.→大量に投下されるSNS投稿,動画,音楽,漫画,書籍などなど.→多くのコンテンツが無料,半無料で公開されるようになった.(サブスク,広告を伴い:資本主義の枠組みからでない.)

    ・エネルギーと輸送の無料化はまだまだ遠い.※輸送は資源や燃料といったコスト面の制約も強い.詰まるところエネルギー問題でこれは産業革命あたりからの永遠の課題


    所感(2020年からみた答え合わせ?):

    ・資本主義から協働型コモンズというより,

    ・こういう本は100%真に受けちゃいけないなあと感じた.
     ー限界費用ゼロ社会を実装する・しようとする人が書いた本ではなく,理想論なってしまう.誰が,どういうモチベーションで,どういうビジョンでIoTが張り巡らされたネットワークを設計し,実装し,展開するのか?という疑問もあるし,風呂敷を広げまくったせいか,抽象的な言葉や表現が多く,分量に割りに入ってこない.

    ・しかし,100%受け止めはいけないが咀嚼して,疑問を抱き,考えながら読むとちょっと先の未来が見えるかもしれない.GAFAの台頭はこの本と結び付けられるだろう.これらの企業はインターネットを中心にプラットーフォームを構築してデータドリブンなビジネスをしている.しかし,これらの製品を見渡してもエンドポイント同士が繋がるP2P的な仕組みは展開されてないように見える(データはプラットフォーマーの利益になることにしか使われないのが基本)

    ・知りたいところがスポーンと抜けているから理想論感があるんだろうなあ
     IoTなどの技術→グローバルNW構築(誰が,どうやって,実現性は?)→生産性の拡大(ここの間は何よ!)→財とサービスがほぼ無料になる.(資本主義社会がまさにやっていることでは?無料になった際はコモディティにとして価値が目減りして行っただけでは)
    現にIoT(現代ではスマホ,スマートスピーカー等)やそのデータを駆使する団体は利益を第一に私企業である.

    ・しかし部分,部分では正しいところもある.例えば,デジタルコンテンツの無料化はサブスクリプション,電子書籍や動画共有サービスの台頭で達成されている.(しかし,たとえそれが無料でも広告で稼ぐ,資本主義の枠組みで取り扱える商品にすぎないが)

    ・無料の財はたくさんあるしサービスもそれなりに揃っている(特に日本の公共サービスは世界屈指じゃないか).それでも我々が満足できないのは”足るを知る”ができない,人間の致命的な性質によるものと思われる.限界費用ゼロ社会というものができても,その中で費用を払えるものと払えないものでヒエラルキー,嫉妬,妬み,羨望が生まれるんじゃないだろうか.

    ・シェアリングサービスの登場は共有型経済の誕生と言えるのか?金融資産の格差が広がった結果,財を持つものが固定化され,財を持たないものに余剰を貸し与え,賃料を取る地主ー小作農の関係の現代版ができたと考えればガチガチの資本主義だし,一方で無料化されるコンテンツは単にコンテンツのアーカイブが増えすぎて,消費者も減り,一方でICTの発展等でチャネルが広がり,作成も簡単もなった.つまりコンテンツがデフレしてるだけじゃないだろうか.

    ・3Dプリンタの普及→輸送コスト消滅.(CADだけ送り,地産地消.必要なものをその場にあるもので製造する)ってできたらまあ夢があるよね.それは何十年後だろう?

    ・”便利”の消費から”意味”を求める消費へのシフト

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  • 3Dで60万円の家建てるプロジェクトなどで言われていること

  • 歴史的に見れば、文明や社会の変革は、
    コミュニケーション、エネルギー、交通/輸送
    の3つのインフラがリンクしながら変化することで引き起こされている。IoTは限界費用がゼロという特徴から、まさにこの3つを抜本的に変化させる可能性を秘めており、共有型経済に必要な分散化を実現するのに最も適した技術である。
    ここで出てくる3Dプリンターなど最近のテックは人件費をかけず固定費のみで生産できるものが多いな。

  • 限界費用ゼロ社会

    限界費用(1ユニット追加生産する費用)が限りなくゼロになる社会が到来する。その社会において希少なものを生産し、利益を追求する資本主義は成り立たなくなり、共同型のコミュニティによる運営にシフトしていくという。
    例えば、太陽光や風力といった発電は化石燃料を使わないため、初期コストを除けば発電コストはかからない(厳密にはメンテ費もあれば、買い替えもあるんですが)、インターネットも一度ネットワークができれば、使う人が一人増えてもコストは増えない、そんなイメージ。
    この経済のパラダイムシフトは、企業の在り方を変え資本主義を根本的に変えていく、そして人間の意識をも転換し、より多くを所有し、より多くを稼ぐという格差社会から、一段と大きな比喩的家族や相互依存を深めた社会という形へ向かうだろうという趣旨。

    ◯資本主義から協働型コモンズへ
    ・資本主義は競争により生産性を向上させ、固定費を除けば限界費用(財を1ユニット増やす費用)が限りなくゼロに近づく。すると資本主義の命脈で有る利益が枯渇するという矛盾を抱える。
    ・技術的失業(労働力の新たな使徒発見速度を労働力節減手段の発見速度が上回る)が起こる一方、経済的必要が満たされ、人が労役ら苦難から解放される未来が到来するかもしれない。
    ・社会が機能するためのインフラの三要素は、コミュニケーション媒体、動力源、輸送の仕組み。

    ◯資本主義経済への転換の歴史
    ・自給自足経済から市場経済へ、消費のための生産から交換のための生産という転換は、字類の歴史上画期的な出来事。その背後には1436年ドイツグーテンベルクが発明した印刷機がある。

    ◯無料のエネルギー
    ・人類は年間に470エクサジュール〔エクサは10の18乗〕のエネルギー(太陽が88分間に地球に向けて放つエネルギーの量と等しい)。地球に届く太陽エネルギーの0.1%でグローバル経済全体で使われているエネルギーの六倍が得られる。
    ・アップル社は巨大なデータセンターに、20mw太陽光発電施設から電力を供給し、5mwのバイオガスによる燃料貯蔵システムも併設して、24時間体制で電力を供給。
    ・かつ費用のかからない冷却システムも設置する予定だ。それは夜間の冷えた外気を熱交換器に取り入れて、データセンターの冷却システムに冷たい水を送るという仕組みだ。
    ・限界費用がほとんどかからない現地の再生可能エネルギーをデータセンターに供給すれば、グローバルなiotを動かす電気代は劇的に削減され、経済活動を構成するための電気代はいよいよゼロに近づくことになる。
    ・シェールガスはエネルギー生産を一時的に増加させるにすぎない(byホール)。坑井ごとに、巨大な貯留層のうちの単一の層から採取されるだけなので、初めこそ大量に噴出するが、生産量は急速に衰えるから。生産者はたえず新しいシェールガス層を見つけて新たな坑井を掘らざるをえず、生産コストが上がる。

    〇3Dプリンティング─大量生産から大衆による生産へ
    ・IoTインフラに3Dプリンティングのプロセスが組み込まれれば、世界中の事実上誰もがプロシューマーとなり、オープンソースのソフトウェアを利用し、使用やシェアの目的で自ら製品を生産することができるようになる.

    〇協同組合こそが、限界費用がほぼゼロの社会で機能する唯一のビジネスモデル
    ・顧客への電力供給サービスを「原価で」提供、協同組合は利益を挙げる構造ではない。協同組合は競争ではなく協力を、狭量な経済的私利ではなく広量な社会的責任を原動力としている。
    ・コモンズ(共同体)の本質的前提は、コミュニティの生活を管理する方法を最もよく知っているのはコミュニティの成員自身であるということ。公共のアクセスと利用に供してこそ最も適切に活用できる資源や財やサービスについては、コミュニティ全体で管理するのが最善であることが多い。
    ・オストロムによると、実験参加者が共有資源問題に直面したとき、コミュニケーションできず、単独かつ匿名で決定を下す場合には、必ず資源を過剰に利用する。ところが互いに公然とコミュニケーションができる場合は、資源の過剰採取は劇的に減る。
    ・政府はアメリカの田園地帯を電化して一変させる最高の手段として、分散型・協働型・水平展開型の経済機関である協同組合を支援した。このコモンズ方式の自主管理機関は、わずか13年で、民間企業や政府がその倍の時間をかけてもそれだけの低コストではとうてい果たせなかっただろう事業を成し遂げた。
    ・アメリカ非営利の農村電力協同組合が、47州で400万kmに及ぶ送電線を管理して、4200万人の顧客に電力を供給している。アメリカの送電線の42%は農村電力協同組合によるもの。
    ・現在10億を超える人が協同組合に所属している。また1億人以上が協同組合に雇用されており、多国籍企業の従業員より2割多い。
    ・ドイツでは、全国にグリーン電力協同組合が誕生。2011年だけでも、167のグリーン電力協同組合が新たに設立。ドイツのシュトゥットガルトにあるホルブ全世界エネルギー協同組合は、地域でいくつか太陽光発電所を設置し。ほかにも、地域や大陸の送電網を介してP2Pで電力をシェアする協同組合もある。
    ・新しいインフラを効果的に機能させる秘訣は地元のコミュニティの賛同、一般の人々の信頼を築き、新しいエネルギー・インフラに対する地元の支持を得るためには協同組合を活用するのが一番。
    ・デンマーク、サムソ島は再エネ100%の島でエネルギーの所有権を島民に付与している。デンマークの他の地域では、設置された風力発電所によるエネルギー容量の8割を協同組合か個人のどちらかが所有している。
    ・ある国内最大級のグリーン電力協同組合の組合員の八割が町や大都市に居住している。グリーン電力コモンズの一員になった理由を訊かれると、ほとんどの回答者が「政治的な動機」を挙げる。つまり、自分自身と自分たちのコミュニティのエネルギーの将来に関する計画立案に積極的に関わりたいということ。

    〇所有からアクセスへの転換
    ・市場と財産の交換が過去のものとなり、人間関係を構築する際の拠り所となる発想を、所有からアクセスへと転換していく。
    ・私有を軸とした資本主義モデルでは、各企業が孤立した存在で、規模の経済の達成を目指して経済活動を一つ屋根の下に垂直に集めようとするため、その運営上の特徴そのものが災いして、水平展開型の事業で何千もの関係者が積極的に協働することが求められる活動は管理できない。
    ・分散型・協働型で、P2Pの仕組みの場合、経済的な意思決定はSNSなどによって「友達」や仲間どうしで交わされる推薦やレビュー、口コミ、好き嫌いといった意見に左右される。従って広告業者が開拓できる消費者市場が縮小する。

    〇民主化する通貨
    ・隣人に手を貸せば、回り回っていずれ誰かに同じように手を貸してもらえるだろうという「時間銀行」というアイディアがソーシャルエコノミーを成り立たせる中核原理、すなわち互酬性。(by法学教授エドガー・カーン)。血液銀行で献血する人々に着想を得たとのこと。
    ・地域通貨(バークシェアーズ:BS)は2006年に導入され、その後の5年間で、300万BSが流通した。95ドルを支払うと、銀行から100ドル相当のBSがもらえるので、会員はこの両替によって得をする。会員はBSを使って、地元の事業者から財やサービスを購入し、資金が地元経済の内部で循環し続けることが保証される。仲介銀行として非営利の銀行を活用したおかげで、会員にはクレジットカードや商業銀行の小切手を使うときに負担しなければならないような追加費用はかからない。
    ・コミュニティが貨幣を通して自らの意思を実現する可能性に気づき始めたら、何百ものビットコインやそれに類似したもの、あるいは私たちが今はまだ想像もできないようなものが登場すると思われる。

    〇人間味ある起業家精神、労働の再考
    ・柔軟性を高めて市場とコモンズのハイブリッド世界でうまく立ち回れるように、従来の資本主義企業の改革を試みる「ベネフィット・コーポレーション」という新ビジネスモデルが登場。その特徴は、
    1) 経済的利益だけではなく、公益と持続可能な価値の創造を目指すこと
    2) 社会と環境に対する影響を考慮すること
    3) ステークホルダーなどへの社会的・環境的影響についての進捗状況を報告すること
    例:「パタゴニア社」
    (オーガニックコットンの使用、環境影響の追跡と公表、裁縫を担当する全従業員の労働条件と賃金の規定、売り上げの1%を環境保護のグループに寄付する)
    ・営利の起業家は、リスクを投資収益率という観点から総括する。一方、非営利の起業家は自らの資金を危険にさらすことはほとんどない。彼らにとってのリスクは、コミュニティにおける自らの社会的「評価」
    ・市場経済で財やサービスを生み出すために必要とされる人手は減少する一方、コモンズでは機械は人の代用として比較的小さな役割しか担えない。なぜなら、社会と深くかかわり、社会関係資本を蓄積するというのは、本質的に人間の営為にほかならないから。

    〇持続可能な「豊穣の角」
    ・ほとんどのモノがただ同然になれば、財やサービスの生産と流通を司るメカニズムとしての資本主義の稼働原理は何もかも無意味になる。なぜなら資本主義のダイナミズムの源泉は稀少性にあるから。希少だからこそ、市場に提供されるまでにかかったコスト以上の価格をつけうる。
    ・アメリカ人は一日に平均で3747kcalを摂取している。仮に70億人すべてが、平均的アメリカ人波に資源を消費したら、地球があと4,5個必要。全人類は目下地球1.5個分の資源を食い潰している〔エコロジカル・フットプリントの総計が、地球のバイオキャパシティ(地球の再生産能力)の1.5倍に当たる〕
    ・エコロジカル・フットプリント=全人類の生命を維持するための資源の使用量が、廃棄物をリサイクルしたり、資源を補充したりする自然の能力を超えない、比較的安定した状態
    ・快適で安全な最低限の生活を営めるだけの所得水準(平均年収が約2万ドル)に達すると、各人の幸せの度合いは横ばいになり始める。富とそれに伴う消費のさらなる増加は、幸福度全体の限界収益〔富と消費が増したときの幸福度の増加分〕の減少を引き起こし、ある段階を境になんと反転して、人々はしだいに幸せでなくなってゆく。
    ・富の蓄積は心の重荷となり、浪費が常習化し、その精神的見返りがわずかで短命になる一方である。
    快適な水準を超えた富の増大が不満や失望につながるのは、他者との関係がしだいに社会的地位の介在を受け、羨望や嫉妬によって動かされるものと化してゆくからと推測される。
    ・現在のアメリカ人は1957年の2倍の実質収入がありながら、「非常に幸せ」だと感じる人の割合は、35%から30%へと下落している。
    ・富裕層と貧困層の乖離の幅が小さい国ほど、全体としての幸福感や満足感が高いことが判明、持てる者と持たざる者との乖離が、不信を育てる温床になる。
    ・人間は残された資源をこれまで以上に早く使い果たし、地球を破滅に追い込むか?その可能性が低いという根拠は、人を過剰消費に駆り立てるのは稀少性であって、潤沢さではないから。
    ・地球上の人口を安定させるには、電気へのアクセスがカギとなる。国連事務総長の潘基文が在任中の経済開発課題の中心に、電力へのユニバーサル・アクセスを据えたのはそのためだ。
    ・出生数は大幅に下落、現在ほぼ例外なく、先進工業国の出生率は人口維持に必要な、女性1人当たり2.1人以下に落ちている。世界の豊かな国々ではどこでも、人口は急激に減少してきた。

    〇脅威1:地球温暖化
    ・地球の気温の劇的な上昇が深刻な脅威となるのは、地球全体の水循環が根本的に変わってしまうからだ。気温が摂氏で一度上昇するごとに、大気の最大容水量は7%増大する。
    ・水の分布に激変をもたらし、降雨はより集中的となるが、その継続時間や頻度は減少する。その影響はすでに、世界各地の生態系に現れ始めている。
    ・NASAのジェイムズ・ハンセンは、現在から今世紀末までに、地球の気温は六度上昇し、それに伴って、私たちが慣れ親しんでいる人類の文明は終わりを告げると予見する。、唯一の望みは、大気中の二酸化炭素濃度を現在の385ppmから350ppm以下に削減することだという。これは目下のところ、どの国の政府も、EUでさえも(450ppm)提案していない水準だ。
    ・2050年までに最も大きな打撃を受ける可能性が高いのは南アジアで、気候変動の影響によって、2000年の水準に比べて小麦と米とトウモロコシの生産高は、それぞれ50%、17%、6%減少すると推測される。

    〇脅威2:サイバー攻撃
    ・09年、北朝鮮国内奥深くに身を潜めたハッカーたちが、アメリカの財務省やシークレットサービス(財務省検察局)、連邦取引委員会のウェブサイトをダウンさせることに成功した。
    ・アメリカ国内で大量に送電するために電気を高圧に変電したり、エンドユーザーに配電するために電圧を下げたりする役割を担う特注の変圧器およそ2000基がサイバー攻撃によって破壊されるようなことがあれば深刻な状況に陥るだろう。なぜなら、そうした変圧器の大部分が国外で生産されているからだ。
    ・アメリカは中央集中型のスマートグリッドを支持することで、サイバーテロリストの脅威にさらされる。EUなどの国々では、分散型のスマートグリッドによりそのリスク低減している。変圧器が炎上したとしても、エネルギー・インターネットが十分に機能し、国内各地で稼働できていれば、地域コミュニティは自力でグリーン電力を生産して、近隣住民や地元企業とマイクロ送電網を通じてシェアできる。
    ・国防総省とエネルギー省は、「エネルギーの信頼性および安全確保のためのスマート発電インフラ実証実験(SPIDERS)」と称して3000万ドルのプロジェクトに着手、サイバー攻撃を受けて主要送電網が作動しなくなったときに、基地内で生産されたグリーン電力を利用して、主要な機能をすべて維持することを目指す。

    〇岐路に立つ日本
    ・日本はドイツの9倍の再生可能エネルギー資源を持っていながら、そうしたエネルギー源による発電量はドイツの1/9しかない。
    ・日本はドイツと比べて、国土は5%、人口は68%、GDPは74%多く、太陽光や風もはるかに豊富だが、2014年2月までに増やした太陽光発電量はドイツのおよそ1/5にすぎず、風力の利用の増加はないに等しい。

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著者プロフィール

文明評論家。経済動向財団代表。欧州委員会、メルケル独首相をはじめ、世界各国の首脳・政府高官のアドバイザーを務めるほか、TIRコンサルティング・グループ代表として協働型コモンズのためのIoTインフラ造りに寄与する。ペンシルヴェニア大学ウォートンスクールの経営幹部教育プログラムの上級講師。『エントロピーの法則』(祥伝社)、『水素エコノミー』『ヨーロピアン・ドリーム』『限界費用ゼロ社会』(以上NHK出版)、『エイジ・オブ・アクセス』(集英社)、『第三次産業革命』(インターシフト)などの著書が世界的ベストセラーとなる。『ヨーロピアン・ドリーム(The European Dream)』はCorine International Book Prize受賞。広い視野と鋭い洞察力で経済・社会を分析し、未来構想を提示する手腕は世界中から高い評価を得る。

「2020年 『グローバル・グリーン・ニューディール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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