ユダとは誰か 原始キリスト教と『ユダの福音書』の中のユダ (講談社学術文庫) [Kindle]
- 講談社 (2015年11月10日発売)
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感想・レビュー・書評
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裏切り者「イスカリオテのユダ」を解説した本。聖書や外典でユダがどのように書かれているかを説明する。最初に共観福音書におけるユダの描写を抜き出した「ユダの共観表」があるのが面白い。同じシーンでも福音書によって表現が異なることが見て取れる。
福音書におけるユダの扱いの違いを見ると、後に書かれたものほど悪役としてインフレしているように思える。最初に書かれたマルコの福音書では、イエスが捕縛された後にユダがどうなったかは書かれていない。対して以降の福音書ではユダは変死することになっている。それどころか、ルカはユダの中にサタンが入り込んだと述べ、ヨハネにいたってはユダは悪魔そのものだという。やはり、時代が進んでキャラが固まると、描写が過激になるものなのかもしれない。
上で悪役と書いたが、イエスの磔刑を「必然の出来事」と捉えると、ユダの行動は必ずしも悪とは言えない。ユダがイエスを売り渡したこそ磔刑という結果に繋がり、人類が救済されたからだ。なので弟子たちの中で唯一ユダだけが真理を知っていたとする、『ユダの福音書』も作られている。神学的にはなんか色々あるのだけど、要するにこれはユダファンによる二次創作だろう。ユダの描写を追っていくと、物語の再生産は今も昔もそう変わらないように思えてしまう。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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