新訳 弓と禅 付・「武士道的な弓道」講演録 ビギナーズ 日本の思想 (角川ソフィア文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 武道としての弓道と禅を結び付けて、弓道の精神的な修練を外国人が説いた翻訳書。西洋では哲学や宗教の教育から、それぞれの個性に生きる精神性が生まれてくるとの印象を持っている私は、生活から宗教が失われた日本人には武道がそれに相応しいのではと考えていたところで、この書籍に出会い、その意を強くした。

  • 武道の精神は、日本人にとって恒久的に必要なものかもしれない。自然との共存が得意な民族であるはずの日本人には、これからのサステナブルな社会において「活躍すべき」なのかもしれない。うるさすぎる日常から、「本来めざすべきところ」をこの本が示しているように感じた。常に手元に置いておきたい名著。

  • これは心底驚いた書籍。
    20世紀はじめに日本に滞在したドイツ人が弓道の稽古に勤しむ。この時代は戦前であったから武道は今よりもスポーツ的な要素は薄く、より古来の日本的な側面が色濃く反映されてたと思われる。
    西洋文化の「自己」に相対する日本文化の「無私」。著者自ら、数年にわたる稽古の末にこの「無私」を体現していくのだが、師範との会話の一言一句やそれに反発する著者自身など、その過程が詳らかに言語化されているのはなかなか出会えないのでは。

  • 本書曰く、弓を射るときは自分の内面に向かい、自分の中心を射るという。
    放つことを意識せず、自然と放たれるのだという。的は見ずに暗闇でも当たるという。
    現代に生きる自分にとっては理解不能であるこの観念を、自分と同じように門外漢である当時のヨーロッパ人が紐解こうとした本。

    本書でも述べられている弓に関する内容は、(述べられているとおり)瞑想とかなり共通点がある。弓の師匠の説明・比喩・レトリックの難しさはあるが概略としては瞑想との共通点で理解できる(ような気がする)ところもある。

    ただし、「日本のあまねく」「日本人は皆」のような書き方がやや目立つのは読み進めていて気になった。弓と禅のつながりでとどまらずに、日本の社会・文化を語るのにその一部にすぎない禅を強調しすぎるのは説得力がない。むしろ本書で言及されている道徳や規範のような側面は儒教のほうが近いのではないか。
    また全体的に、筆者が体験したものの中から筆者がもともと見つけたかったものを見出した、Cherry pickingのような印象を受ける。
    往々にして、伝統的とされ精神的な価値や規範を付与された芸能は近代になってからの発案・創作であることが多い。新渡戸稲造の武士道もしかり、現代に伝わるヨガも近代以降に確立されたものである。
    本書への批判としては山田奨治『神話としての弓と禅』が参考になった。




    本書の内容は、『今、なぜ仏教なのか』のようにいずれ科学的な解釈がされうるのではないかと思う。
    興味深かった「離れ」のところだ。「離れ」という動作が何をトリガーにして起きるのか(こんな考え方が間違っているのはわかっているが)がよくわからない。ベストなタイミングを身体が無意識に覚えているからか、それとも集中とそれによる脱力がある水準に達したときに自然と手が放つのかなど、何かしら科学的に解釈ができるのでは、と考えてしまう。

    本書では弓と精神修養の関係を、有無の境界の弱化が、死、無への帰化(怖れの消滅)へつながると説いている。この有無の境界の弱化はまさに『今、なぜ仏教かのか』にも書かれていたものだ。

    弓を射る前後の所作についての指摘は示唆が大きいと思う。本書の意図に反して科学的な解釈を勝手にしてみるとすると、人間が習慣の生き物であり所作によって過去に蓄積した正しい射の導入として機能しているように思う。

  • 道が精神の修練として、その道のりがどういったものになるかをなぞった気がした。「それ」を自分の経験とする行為でもるのかな。経験して初めて分かることは言葉では伝えられない、その狙いや効果を本当に学ぶためには自分のやり方で一度難破する必要がある、うまくやろうとするからうまくいかないあたりはすぐにでも役に立ちそうな考え方。

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著者プロフィール

1884年、ドイツ生まれ。哲学者。1924年に東北帝国大学講師として来日し、哲学史を教えるかたわら阿波研造に入門。弓道五段の免許を得る。帰国後は日本思想を講じ、1948年に『弓と禅』を著した。1955年没。

「2015年 『新訳 弓と禅 付・「武士道的な弓道」講演録 ビギナーズ 日本の思想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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