- Amazon.co.jp ・電子書籍 (768ページ)
感想・レビュー・書評
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ICONIXという開発プロセスを解説する本。
ユースケース駆動とユースケースが全面に押し出される印象をタイトルから受けるが、プロセスの基点はドメインモデルであり、Domain-Driven Design(DDD)との親和性が高いと感じる。
初期のドメインモデルを整理(主に言葉を持ち寄る)した後に、ユースケース記述を通してドメインモデルを更に豊かに練り、ロバストネス分析を通してドメインモデルに振る舞いを持たせていく。
その後、シーケンス図なども登場するが、ICONIXで一番旨味を感じるのはドメインモデルからロバストネス分析までの部分と思う。(シーケンス図を書く段階まで来ていればシーケンス図に落とす必要は余程複雑なものでない限り不要になってきそう。)ドメインモデルをよく捉え、蒸留していくにはどうすれば良いかのヒントとなる。
ウォーターフォール型でもアジャイルでも、どのようなプロセスにも適用できるとするが、それはどれくらいユースケース記述を書き出せるかに左右されるように思う。要件定義はプロセスに含まれないため、まだ要求から要件になりきっていない段階では、別の方法をとる必要がある。要件から実際のコードに落としていくまでの間に困っているなら一読をおすすめしたい。
ダグローゼンバーグの主張で面白いのが、ユースケース記述の在り方ではないだろうか。某方の定義するユースケーステンプレートは過剰過ぎると断言しており、本当に使えるユースケースはこういうものだとガイドラインを打ち出している。
もう少し例題が前後のプロセスステップ間で通貫していると分かりやすかったようにも思うが、理解を妨げるほどではない。
書籍全体を通して納得感は高く、古いプロセスではあるが、現代でも(現代こそ?)活かされるもののように思える。語り口も相まって、読み物としても面白い。詳細をみるコメント0件をすべて表示