アクトレス ~女たちの舞台~ [DVD]

監督 : オリヴィエ・アサイヤス 
出演 : ジュリエット・ビノシュ  クリステン・スチュワート  クロエ・グレース・モレッツ 
  • KADOKAWA / 角川書店
3.30
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988111249647

感想・レビュー・書評

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  • SILS MARIA
    2014年 フランス+スイス+ドイツ 123分
    監督:オリヴィエ・アサイヤス
    出演:ジュリエット・ビノシュ/クリステン・スチュワート/クロエ・グレース・モレッツ

    40代の大女優マリア(ジュリエット・ビノシュ)かつて18歳の彼女を『マローヤのヘビ』という映画&舞台の主役に抜擢し一躍スターにした劇作家ヴィルヘルム・メルヒオールが亡くなる。『マローヤのヘビ』は、40代の女社長ヘレナが、20代の秘書シグリッドに同性愛の恋をし翻弄され捨てられて失踪するという内容。かつてマリアは奔放な娘シグリッドを演じた。

    亡くなった劇作家は、シグリッドの20年後を戯曲にしマリアに演じてほしいという話をしていたが、完成しないまま亡くなり、若手新進演出家のクラウス(ラース・アイディンガー)は『マローヤのヘビ』再演にあたり、かつてシグリッドを演じたマリアにヘレナの役を、シグリッド役には若手人気女優のジョアン(クロエ・グレース・モレッツ)をキャスティング、オファーしてくる。

    渋々引き受けたマリアは、有能なマネージャーのヴァレンティン(クリステン・スチュワート)と共に、戯曲の舞台であるスイスの山岳地帯シルス・マリア(映画の原題「SILS MARIA」はこの地名)にある亡き劇作家の別荘で読みあわせを始めるが…。

    女優が女優役を演じ、劇中舞台や劇中映画を演じる、多重構造がなんとも面白い。三人の女優の共演も豪華。映画の中の設定で、マリアはかつて『Xメン』のネメシス役を演じたとか、ハリソン・フォードと『逆さカブトムシ』というスパイ映画で共演したというようなセリフが出てきて、思わずジュリエット・ビノシュにそんな作品あったけ?と調べてしまったけれどもちろんこれらはフィクション。クロエが演じるほうの若手女優も、彼女自身を思わせるヒーロー映画でブレイク、ミュータント映画のヒロイン役など、実際にやってそうで変なリアリティがあり笑ってしまう。

    クロエは後半しか出てこないので、中盤まではもっぱら、マリアとマネージャーのヴァレンティンの二人の会話がほとんど。二人は基本的に信頼しあっており、若いヴァレンティンは大女優にもズケズケと本音でアドバイスするタイプ。しかし大女優マリアは、年齢的にプライドが高いと同時に頑固な面もあり、ヴァレンティンの意見を素直に受け止めず、ジョアンの出演した映画のことも笑い飛ばしたりする。

    この二人の関係、やりとりがとにかく興味深い。マリアは、かつて演じた20代のシグリッド役を今も引きずっており、彼女に捨てられるみじめな中年女ヘレナ役のほうを演じることに抵抗がある。彼女自身は認めたがらないが、つまりそれはもちろんベタな、加齢への抵抗である。自分がもはやシグリッドではないことを彼女は認めたくない。共感できないからヘレナ役を降板したいと言い出すが、ヴァレンティンは彼女なりの解釈で説得をするもマリアは聞き入れない。

    戯曲の読みあわせをするため、ヴァレンティンがシグリッドのセリフを読み上げるのだが、次第にそれは戯曲なのか、それともマリアとヴァレンティン自身の言葉なのか、区別がつかなくなっていく。このへんはこの映画の脚本も演じた二人の女優も大変うまい。

    後半やっとクロエ演じるジョアンが登場。ティーンエイジャーの彼女は、芝居の才能はあるがプライベートはスキャンダラスなお騒がせ女優。マリアに憧れて女優を目指したというジョアンと顔合わせしたマリアは、思っていたより良い子だと認識を改めるが、彼女が起こしたとんでもないスキャンダルのせいで、舞台開始前から騒動に巻き込まれ…。

    とにかくジュリエット・ビノシュが人間くさく、葛藤する40代大女優を演じきっていて素晴らしかった。今までみたジュリエット・ビノシュの役の中でいちばん好きだったかも。もちろん私自身の年齢が、ジョアンやヴァレンティンよりマリアに近いから、というのもあるけれど、とても共感できた。あからさまに若さに対抗するような下品な描き方はされておらず、あくまで上品。彼女の年齢だからこそ醸し出される深み、包容力のようなものがあり、もちろんラストもそれを全面的に肯定する前向きな終わり方。

    音楽もヘンデルやバッハの壮大なクラシックが、シルス・マリアの雄大な自然の風景と相まってとても良かった。ハリウッドの内幕ものとしても楽しめます。

  • 欧州らしい文芸のような作品です。若いクロエを楽しみにしましたが、ビノシュとスチュワートの演技に見応えがありました。山中の池で遊ぶシーンでは、若いスチュアートは下着姿で、ビノシュには全裸で泳がせます。ビノシュの女優魂を感じるシーンです。雄大な「マローヤの蛇」が素晴らしい景色です。歳月を超越した存在を意味しているのでしょう。

  • 大女優マリアのもとへ20年前に彼女を世に送り出した舞台「マローヤのヘビ」のリメイクの出演オファーが届く。しかしマリアに求められた役柄はかつて演じた20歳の主人公、シグリッドではなく、シグリッドに翻弄され自殺する40歳の会社経営者、ヘレナ役。
    シグリッド役には、ハリウッド映画で活躍する19歳の女優、ジョアン・エリスが決定していた。女優としての自我と若さに固執するマリアをマネージャーのヴァレンティンは諭そうとするが・・・。流れゆく時間の中で、キャリアの岐路に立たされた大女優の葛藤を描いた人間ドラマ。ジュリエットビノシュ、クリステンステュワート、クロエモレッツが女優の裏側にある孤独や葛藤を描く。奔放なシグリットとシグリットに翻弄されるヘレナ、二人の女性をマリアとジョアンが役作りし演じる中で見えてくる女優そして女性の二面性(自由翻弄で欲望のまま生きる女性と年齢などの壁の中で生きようとしてしまう女性そして若く自由でいたくても年齢という壁が立ちはだかり成熟を受け入れなければならない現実)、マリアとヴァレンティンの女優と個人秘書という枠を越えた友情関係、大女優そのものジュリエットビノシュ、複雑な内面を抱えるクリステンステュワート、傲慢で自由奔放なクロエモレッツ、女優の女性の内面を赤裸々に描いた傑作ヒューマンドラマ映画です。

  • 女優の世代交代をテーマに、女優が女優を演じるという、なかなか難しい役どころ。

    ジュリエット・ピノジュ演じるベテラン大女優マリアは、大女優らしい「いかにも」な部分もありながら(プライドだけは高く、自分軸で生きてきた波乱に満ちた人生)、目下の人間に対して威張り散らすこともなく、若い秘書とも対等に話せるような垣根のない人間味のある穢れのない女優。

    その若い秘書と大女優とのセリフ合わせのシーンや、台本の解釈の違いで激しく意見し合うシーンが一番の見どころになっており、二人の遣り取りから「マリアが一体どんな女優であるか」が手に取るように分かる。

    秘書役のヴァレンティン演じるクリステン・スチュワートが、最初からもう迫真の素晴らしい演技を見せてくれる。

    若い時のマリアは、怖いもの知らずで、イケイケで、女優としての才能も飛び抜けており、演出家や監督始め、周りからも一目置かれていたのであろう。

    しかし、年を重ね「旬」ではなくなった時、女優として求められる需要は、大きく変わってくる。
    その転機をちゃんと受け容れることができるのか、ここで滑落するのか、別のステージへと昇り詰めることができるのか…。

    秘書のヴァレンティンが突然消えた「マローヤのヘビ」の幻の景色が、大きな転機になるところがいい。

    後半に出てくるクロエ・グレース・モレッツは、若い時のマリアのような、怖いもの知らずで才能に長けた「旬」な若手女優。
    若い時のマリアを知らないのに、若い時のマリアを見ているような感覚にさえなる。
    この脚本を誤解なく演じる難しさはかなりのもの。
    色んな意味で素晴らしい作品。

  • 個人秘書と過ごした9割の部分は良かった。正直言うと、よくわかんない映画だけど。心を打つ葛藤がある。

  • ジュリエット・ビノシュ演じる大女優は、決して「私は大女優よ」という高慢なタイプではなく、人当たりは良いし、飾り気もない。とは言え、自分が好きになれない役は絶対やりたくないし、ハリウッドのSF大作なんかも毛嫌いする。

    そん彼女とは異なる感性を持つ2人の若い女性(クリステン・スチュアートとクロエ・グレース・モレッツ)とのやり取り(又はすれ違い)は趣向としては面白いです。

    その中でも、クリステン・スチュアート演じる個人秘書との会話劇はこの映画の大半を占め、台本の読み合わせ練習を介したぶつかり合いなどはなかなかユニーク(彼女が唐突に姿を消すところはびっくり)。

    それにしても、俳優の仕事って大変だな。自分が全く共感できない、嫌いな人間も時には演じないといけないんだもな。

  • 無名時代の二十歳の頃に演じた舞台を世界的な大女優になった二十年後に相手役を演じる事に。
    クリステン・スチュワートが助演女優賞を沢山獲ってるが、大女優役のジュリエット・ビノシュが特に素晴らしかった。
    クロエ・グレース・モレッツも後半しか出てこなかったけど良かった。

    ストーリーはさほど面白い訳では無いと思うけど、芝居が素晴らしすぎて退屈せずに最後まで観れた。

  • ヴァレンティンがカッコよすぎる!「ナイト・オン・ザ・プラネット」のウィノナ・ライダーを彷彿とさせるカッコよさ。2つのスマホ(片方はBlackBerry!)を使いこなす個人秘書。コレ邦題がいまいちすぎて、予告もそうだけど「ブラックスワン」みたいな、もっと女優同士のドロドロした配役争いの話なのかと思ってたんけど、全然違うね!ストーリーだけ見れば新旧交代て題材なのかも知れないけど、原題は「SILS MARIA」だし、ハイジが駆け抜けて来そうなアルプスの厳かで圧倒的な景色にマリアとヴァレンティンの濃密な時間。台本の練習なのか、二人の会話なのか時間が経つにつれて白熱する会話劇。マリアの表舞台の輝きと普段の対比とかジュリエット・ビノシュてあんまり見たことないんけどさすがの巧さだし、ジョアンもネット上で見るほどの悪意はなく、天衣無縫さがピッタリで可愛かった。そういう意味で邦題は3人の女優さんの力量のぶつかり合い熱演っぷりを表してるけど、映画の内容とはちょっと違うかなー。最初の電車の中の場面ものっけから掴まれるし最後パッヘルベルでうわぁーてなる感じもすべて好き。DVD買おうかな。

  • 現実と演技と演技内演技が境を曖昧にしてせめぎ合うのがスリリング。
    オリヴィエ・アサイヤスの映画は、何がいいのかわからないのに、どうしても惹きつけられるのはなぜだろう。その理由がいまだにわからない。だからつい、新作を見てしまう。

  • 2016/6/1 ジュリエット.ビノシュとクリスティン.スチュアートの2人の女優とマネージャーとしての掛け合いが とても良かった とても自然で お互いが つまらない掛け合いで大笑いするシーンも自然で 好感持てました。途中でマネージャー役のクリスティンが本当に消えてしまうのが 何だか悲しい展開で最後まで出てこなくて拍子抜けしてしまった 新人役の現代っ子らしいクロエは嫌な感じまで うまかったけど…スイスという自然を舞台に「マローヤのヘビ」という自然の織り成す風景が とても美しかった。随所に些細なところで映像にも凝ってるなぁって感じで 綺麗な映画でした。最初は何だか 不思議な時間と流れに うまく溶け込めなかったけど…途中からのめり込んで観てしまった ジュリエット.ビノシュやっぱり上手いですね。

  • ★★★liked it

    『アクトレス~女たちの舞台~』  オリヴィエ・アサイヤス監督
    Clouds of Sils Maria

    マリア(ジュリエット・ビノシュ)は、世界的な女優で、有能なマネージャーのヴァレンティン(クリステン・スチュワート)のサポートを受けて活躍してる。
    ある時、かつて自身が世に出る大きなきっかけになった舞台『マローヤのヘビ』のリメイク出演オファーを受けるが、マリアに求められた役柄はかつて演じた20歳の主人公、シグリッドではなく、彼女に翻弄されて自殺する40歳の女性ヘレナの役。シグリッドはハリウッドの大作映画で活躍する若手女優のジョアン(クロエ・グレース・モレッツ)が演じるという。

    映画公開時50歳になるジュリエット・ピノシュは、オリヴィエ・アサイヤスに、自らこの映画の製作を持ちかけた。
    「時間と対峙する女性の本質を掘り下げてほしい」

    オリヴィエ・アサイヤスinterview
    「時が移ろい、時が奪っていくことだけではなく、一つのアイデンティティから別のアイデンティティに移行するということです。最初のアイデンティティを捨て、諦めなければならない。マリアがヘレナ役を受け入れることに抵抗したのは、ある記憶の為です。自分が若い女優であった時どのように成熟した女優を見ていたかという、その視線の記憶です。彼女が怖いのは観客や相手役の若い女優の視線ではなく、若い時の自分が今の自分を見る、その視線を恐れているのです。」


    クリステン・スチュワートがいいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
    トワイライトのクリステン・スチュワートのイメージだったけど、見入ってしまう演技・・・・すごーーーーーーーーーーい!
    ヴァレンティンが、マリアに脚本の解釈をぶつけながら、マリアのセリフ稽古の相手役をやるんだけど
    この演技がいい、劇中劇のヘレナ役とシグレット役の関係、マリアとヴァレンティンの関係、リアルのジュリエット・ビノシュとクリステン・スチュワートが重なってくる。
    主役はジュリエット・ビノシュだけど、この映画の見どころはクリステン・スチュワートの演技

    セザール賞助演女優賞受賞、全米映画批評家協会賞助演女優賞受賞
    ニューヨーク映画批評家協会賞助演女優賞受賞、ボストン映画批評家協会賞助演女優賞
    ボストン・オンライン映画批評家協会賞助演女優賞受賞
            
    納得です。

    いやなオバハンでなく、魅力なおばさんになればよいってこと?

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