窓の向こうのガーシュウィン (集英社文庫) [Kindle]

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  • 「窓の向こうのガーシュウィン」宮下奈都
    物語は、未熟児として生まれ、人と比べて何かが足りない不完全な19歳の左古さんが、ヘルパーとして額装家(絵や写真等思い出の品に額をつける仕事)の家を訪れる。言葉の語尾が聞き取れず、クビになってばかりの左古さんは、素直さが気に入られ、ヘルパー以外に額装の仕事を手伝うようになる。人と交わらずひっそりと生きて来た左古さんは「しあわせな景色を切り取る」という額装の仕事に魅せられ、カチカチだった心が少しずつ優しく溶かされていく…。
    左古さん、なんて魅力的なんだろう。これまで頭の良くない役を意識して演じて、周囲に目を向けず様々なものをシャットアウトして生きてきた。そんな左古さんの中で、今まで見えなかったもの、見ようとしなかったもの、色彩を持たなかったものが、少しずつ色をなして広がっていく。その描写がものすごく静かで温かく優しい。こういう微妙な感覚を丁寧に描くのが宮下さん、とっても上手い。額装家の人々、先生、犯人(後にあの人)、隼の三世代の男たちのキャラもとても良い。特に先生と左古さんとのやり取りや会話は「博士の愛した数式」を思い出させてくれる。
    窓のこちら側だけで閉じこもって生きてきた左古さんが窓の向こう側の世界に初めて目を向ける。ちょっとありきたりかもしれないけれど、左古さんのキャラが魅力的だから、そんな成長が嬉しくなる。この作品は「静」が続き、大きな盛り上がりを見せるシーンはないけれど、それだけに段々靄が薄くなり、光が優しく射してくるようで、心地よい読後感が続く作品です(^o^)

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著者プロフィール

宮下 奈都(みやした なつ)
1967年福井県生まれ。上智大学卒業。2004年、「静かな雨」で文學界新人賞に入選し、デビュー。日常に起こる感情の揺れを繊細で瑞々しい筆致で描きだす作品で知られる。『スコーレNO.4』が書店員から熱烈な支持を集め、注目を浴びる。
代表作に、2016年本屋大賞、ブランチブックアワード2015大賞、「キノベス!2016」などを受賞した『羊と鋼の森』があり、2018年6月に映画公開される。ほか、福井からトムラウシに移り住んでいた頃の日々を描いた『神さまたちの遊ぶ庭』や、福井での身辺雑記や本屋大賞受賞前後のエピソードなどを描いた『緑の庭で寝ころんで』がある。

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