ことばの発達の謎を解く (ちくまプリマー新書) [Kindle]

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  • 筑摩書房
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  • ことばを手に入れることで、意味が見つかるようになる。認識を繰り広げていくための方法が手に入ることで、考えることがはじまって、世界という概念が広まりはじめるということだと言い換えてもいい。はじめからあるものにことばという音を当てはめて、意味を繰り出して、元々あったものを言い換えて把握できるようになる。きっとそういうことではない。ことばがなければ何も生まれてこない。そう捉えることすら、ないところからあることが表れてくる、決定的な転換があることをぼくたちはちゃんと想像できるじゃないか。

    1対1を設定することよりも、1対それ以外における関係を想像すること、見つけることが言葉というシステムを作動させていく。〇〇が□□だ、という答えを分かるということではなく、〇〇を取り出す際に、〇〇であることが大事なのではなく、〇〇ではなないこととの違いがまず認識されなければ、〇〇であることですら上手くいかなくなる。〇〇であることと〇〇でないことの、そこに表れる関係がどう捉えられるか。関係の線を引いて、その線の理由を設定する。関係性の仕組みを立てるということになる。意味は定義ではなく、関係性の捉えだということだ。意味というものを捉えるためには範囲が必要になる。こうこうであるということと、こうこうでないということの、範囲をセットするために、理由を立てなければならないということだ。でも、その範囲を立てることができなければ、こうこうもこうこうでないもどちらも存在することすらできずに何もないことになってしまう。ことばがないということは、はじめからない、いつまでたってもない。なにもないという意味と同じになってしまうということだ。

    こどもがことばを身につけていく過程は、モノを覚えるということではなくて、状況を捉えるということがまずあって、それに連動する音の連なりの中に、規則のようなルールのような相互性を発見していくということからはじまる。状況を表せるということと、そのための音の連なりの関係の中に、今度は範囲というものがあることに気付いていく。あることであることと、そうではないことの関係が次々に繰り広げられている世界において、類似と比較、相対と絶対、それを決める認識という方法に出会い、それを深めていくことで、ことばの意味というものを自らで積み上げていく。ことばに意味があるのではなく、その意味という相関が、システムが、自らのなかにどう表れていくかということが、ことばというシステムだということを、言わずもがなでだれでもが身体化していくということがことばの発達ということになるのだ。

    音の連なり、音節というもので、単語という括りを手に入れる。一般的な名詞を覚える。動詞が使えるようになる。助詞によって関係の広がりを自由に表せることを知っていく。ことばを発達させていく過程は、ことばというシステムの成り立ちを認識させるそのままの姿をしている。

    そして、ことばは思考を手に入れさせる。抽象という方法による概念をひとに見せることを可能にしていく。それは、ないままなのか、と、あるままなのかの、決定的な飛躍を招く。0が1になる。数字を認識することも、愛という概念を掴まえることができるようになることも、ひとに覚えさせることをできるようにさせるものだ。ひとは思考できる。抽象なんていう世界を立ち上げることができる。それは、ことばという発達の先において、世界を科学的に捉え直させることができるという、特別な力をひとに与えてくれている。


    思考することができる。ことばがあるから。
    その意味を世界はほとんど知らない。

  • ことばがどのように形成されてくるのか、そして大人になってからの語学では何故得られないものがあるのかについて、かなり学べる内容である。子供の語彙形成の過程に面白みを感じるとともに、自分が子供を持った時にもそれを見たいと感じるようになった。

  • 自分がことばをどうやって覚えていったのかなんて考えたことがなかったので勉強になりました。

  • 読了日 2020/10/17
    Kindleの音声読み上げで読了。
    今井むつみさんの本は、自分の興味に近いことがたくさん書いてあって面白い。
    岩波新書で読んだことのある実験内容とかについての記述も被っていたけれど、それはそれで思い出し記憶の強化になって良かった。

    目次

    はじめに
    第1章 アラミルクガホシイノネ−単語の発見
    1 お母さんのおなかの中ではじまる言語の学習
     “she”と“see”−言語によって違う音の単位
     “race”と“lace”が聞き分けられないわけ−カテゴリー知覚
     いつごろ音素のカテゴリーができるのか

    2 人の声から単語を見つける
     リズムとイントネーションを使う
     「チガガ出た」−単語と機能語の区別に気づく
     単語をつくる音のパターンを分析する
    コラム(1) 赤ちゃんの持つ知識をどのように知ることができるのか

    第2章 ヘレン・ケラーのwater事件−ことばの世界の扉を開ける
    1 ことばの洞察
     ヘレン・ケラーの話
     チンパンジーの研究から

    2 赤ちゃんの「思い込み」
     単語の意味を教えられるのか?
     湯船に落ちた時だけアヒル?−状況とモノを切り離す
     グレープフルーツもクロワッサンも「おつきさま」−ことばの意味の範囲
     固有名詞か普通名詞か
     二歳児の考える「ネケ」の意味

    3 ことばの仕組みを発見する
     子どもにとって「似ている」モノ
     「イヌと犬小屋」には同じ名前がつかない
     形がないものは別
     固有名詞はあとまわし
     ことばの仕組みを発見する

    コラム(2) 心の中にあることばの辞書

    第3章 歯で唇をフム−動詞の意味の推測
    1 動きにも名前がある−動詞と名詞の違いに気づく
     「チモッテル」は動作のことば?
     ことばの形が名詞と動詞で同じだったら

    2 「アゲル」「モラウ」「クレル」−動詞の意味の複雑さ
     「アゲル」「モラウ」「クレル」
     「ウサギをチモル」と「ウサギがチモル」
     助詞で見極める
     目的語が省略されると…
    3 「足でナゲル」−動詞の意味を一般化する時の問題
    「ナゲル」と「ケル」
    オノマトペって実はすごい

    第4章 血圧がヤスイ−モノの性質、色、位置関係の名前の学習
    1 モノの性質の名前
     どの性質を指すのか見極める
     比較の基準が相対的
     くっつく名詞によって変化する
     多種多様な反対語
     発達段階に即してみると

    2 色の名前
     「アオい」かばんと「ムラサキの」かばん−色の名前の品詞
     色の名前のつけ方は言語によって千差万別
     色の地図を自分でつくる

    3 位置関係の名前
     クマの像の前はどっち−何を基準にした「前」か
     「前」という語が持つ二つの視点システム
     「前」「後」「左」「右」の意味の学習
    「前後左右」と「東西南北」

    4 まとめ−全体像がわからないと、単語の意味は学べない


    第5章 ことばの発達の謎を解く−発見、創造、修正
    1 ことばの発達のジレンマ
     ことばの意味を「知る」とは
     語彙という「意味のシステム」

    2 発見
     システムの存在を発見する
     ことばを創るためのパーツを発見する
     システムの中の「似ている」を発見する

    3 創造
     ことばを創る
     学習した知識を創造的に使う
     コンピュータにできないこと
    4 修正
     大人の言い方に合わせる
     もうボールとは言えない
     「修正」しながら単語の意味を深化させる
     発見、創造、修正を繰り返す人間

    5 システムが先にできていたら−外国語の学習

    コラム(3) 子どもは詩人か?

    第6章 言語が思考をつくる
    1 ことばによって新しい概念を理解する
     「愛」という概念の理解
     抽象的なことばの意味をことばで理解する

    2 知識の体系をつくる
     オカピの胃はいくつ?
     ことばを頼りに「同じ種類」を決める

    3 ことばが新たな概念を生む
     数の概念
     数のことばがなかったら
    4 ことばの学習が科学的思考の基礎となる
     ことばは一貫した基準でカテゴリーをつくる
     ことばがつくる「同じ」という概念
     科学的発見と「関係のアナロジー」

    終章 読者のみなさんへのメッセージ

    参考にした本、読者におすすめしたい本、論文など

  • 赤ちゃん・子どもがどのように言葉を習得していくのか、が書かれている。
    ・「母語のリズムとイントネーションから覚える」というのはとても意外だったが、納得させられた。
    ・「似ている」と言うのがキーワードであり、名詞・動詞・形容詞でそれぞれ「似ている」の意味は異なる。(例えば、モノの似ているは、「形が似ている」であり、色や模様、材質ではない)
    ・対象と言葉を単純にセットにして覚えるのではなく、他の言葉との境界線を理解していくこと。同じことばをどの範囲まで使うことができるのか。他のどの事例にはそのことばが使えて、他のどの事例には使えないか。その判断を子ども自身ができることが、「ことばの意味を理解した」ということ。
    ・発見、創造、修正、のプロセスでことばの意味を深め、同時に語彙を成長させる。
    [発見]なんとか単語を覚え、暫定的にそれに意味をつける。→[創造]単語の間に共通するパターンをみつけたら、多少の間違いをしてもよいからその知識を新しいことばの学習に使い、語彙を増やし、成長させようとする。→[修正]単語の間の共通性を分析し、手がかりをアップデートする。同時に、新しいことばを知ることで、前から知っていたことばの意味を修正する。

    などなど、とても示唆に富んだ内容だった。
    息子はこれからたくさんの言葉を覚えていくところ。参考にしていこうと思う。
    →大人がすべきことは、上質の言語のインプット(日常の中の、気持ちを通じ合わせた、ことばの一つ一つを丁寧に使った赤ちゃんとの対話)を子どもにたくさん与えること。

  • 赤ん坊がどのようにして言葉を覚えていくかを、観察と実験で研究した本。漠然と親や兄弟の使っている言葉を覚えていくのだろうと思っていたが、いやいや、赤ん坊は自分で創造的に言葉の働きを探っていって、そこにある規則を見出していき、声に出して間違いがあれば修正していく能力を持っているという。まずは名詞、次に動詞、名詞よりこれはちょっと難しくなる。そして形容詞、名詞と動詞と比べたら随分と難しくなる。似たものといっても、形が似ている、言葉が似ているで違う。これを赤ん坊は自分から分類していくのだ。まずは言葉を単語に区切るところから始まる。言語によって区切り方は違う。日本語は助詞が付くからそこが切れ目の候補となる。英語はアクセントがあるからそこから単語を切っていくようだ。教えられたわけではないのに、なんとすごい能力を人間はもっているのだろう。言葉を持つことが人間と他の動物との違いだ。

  • 赤ちゃんがどのように言語システムを構築していくかを実験をもとに解説。わりとちゃんとかかれていて、面白かった。

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著者プロフィール

慶應義塾大学環境情報学部教授。専門は発達心理学、認知科学。著書に、『ことばと思考』『学びとは何か』(岩波新書)、『ことばの発達の謎を解く』(ちくまプリマー新書)、『言葉をおぼえるしくみ』(ちくま学芸文庫)などがある。

「2020年 『親子で育てる ことば力と思考力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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