月刊群雛 (GunSu) 2016年 03月号 ~ インディーズ作家と読者を繋げるマガジン ~ [Kindle]

  • NPO法人日本独立作家同盟
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感想・レビュー・書評

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  • 「福袋っぽさ」の復活。この号を読み終えた時に感じたのは、この一言でした。何が出てくるかはわからない。でも、出てきたモノに目を通すと満足感が溢れてくる。
    カテゴリー的にはベタな話が多いのですが、ジャンルは多岐にわたり、かつどれもひと捻りがあり面白い。新レギュレーションが目標とする「質の向上」を、この号でひとつ示せたのではないでしょうか。

    ・和良拓馬『念じた先の光』
    自分の。メールの下書き欄に原稿をセットして2日待った結果、遂にトップバッターの座を奪ってしまいました。本作の個人的な目標は「2○時間テレビ」の演出の逆を目指したというところです。

    ・かわせひろし『太陽のホットライン』
    まさかのサッカー被り。Jリーグ開幕を狙ってのことだろうか。でもって、あっ、これは柏○イソルの平山と根引のことだなー! と突っ込みながらサッカーファンは読みふけたのであります。
    内容はザ・少年少女向けのスポーツ小説。サッカーのフィクションものは「ジャイアントキリング」を筆頭に異色の作品も多数出てきているけど、これはズバり「キャプテン翼」の系譜。王道だなー、と思いつつ、やっぱり王道も貫けば面白いよなー、と感じるのです。

    ・淡波亮作『俺は宇宙人』
    こちらも王道のSF。捻りかたとしてはシンプルなんだけれど、しっかりとストーリーとして流れていく読みやすさは絶妙。毎回思うのですが、女性の仕草についての描写が巧いというかエロいよなあ。あと「ォザンエツ」って発音しづらい。

    ・よたか『ウラ垢女子 リンリン』
    よたかさんは「サッカー少年マニュアル」の印象が強いので、群雛上ではコメディ路線を突っ走っているのが意外な印象。ただ、コメディ志向の方は意外と少ないので、継続してチャレンジして欲しいところ。
    本作はどちらかというとコントに近いリズムでストーリーが進む。テーマがテーマなだけに、ちょっと好き嫌いが別れそうなシチュエーションもあったので、そこを笑いで目立たせなければもっと上手くいったかな? と。隆司がトイレでリプライを返すシーンとか、メリーが名古屋の地下鉄で迷うシーンとか、そういう純粋に笑いがとれるシーンを増やせば更に良い流れになるのでは。

    ・にぽっくめいきんぐ『まんじゅうほしい』
    頭のいい人がつくったショートショートというのが第一印象。プロフィールを見て、その道についてしっかり勉強されている方だと知り納得。フィクションをつくるには着実な裏取りによるリアリティが必要と再認識。
    初めての小説という印象はありませんでした。ところどころで「こうはく」のリアクションがカワイいのが好き。

    ・竹島八百富『アニー』
    竹島ホラーの時間だあああああああ!
    というわけで、「怖い」「悲しい」「後味が悪い」という「竹島八百富の三拍子」が揃った一品となっております。よく考えたら本家の「アニー」って生きる希望に満ちた話だったような。そう考えると、物語のシニカルさも増していくのであります。
    怖い怖いとわーわー言うておりますが、その一方で新入社員研修のシーンは凄くリアルなんですよね。自分の若き日々を思い出してしまうくらい。この部分のリアリティが後半のホラーゾーンにも深みをもたらしていて、怖さがぐぐっと増していく。言うこと無しです。

    ・波野發作『ジョディ/スージー』
    アンジャッシュ的なすれ違いがオルガニゼイションの世界観で行われているというイメージ。物語の繋がり上、初見だと少し難しい部分があるかもしれない。

    ・灰野蜜『鳥籠の肖像』
    描写を頑張りましょう云々という表現は小説の作法でよく聞かれますが、本作の描写力は凄いの一言。エスプレッソ並みの濃さ。でも、くどさを感じないのはストーリーがしっかりしているからこそ。妹がキリスト教系の中高一貫女子校に通っていたので、「あっ、確かに生徒や校舎の雰囲気はこういう感じだったよなあ」と思い出してしまった。
    卒業という点はある意味、その時期の少年少女にとって単なる終結以上の意味を含んでいるんだなあ、と物語を読みながら思ってしまったのです。あと、「ラストの一文フェチ」としてもこの締め方はホームラン。

    ・魅上満〈表紙イラスト〉
    恥の多い中学&高校生活を送っていたもので、こういう第2ボタンの思いでも特にありません。嗚呼、良い意味で僕に泣いてくれる方を求めてさまよいたい。あっ、凄く桜と髪のピンク色がシンクロしていて良かったです

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著者プロフィール

大西寿男(おおにし・としお)
1962年、兵庫県神戸市生まれ。岡山大学で考古学を学ぶ。1988年より、校正者として、河出書房新社、集英社、岩波書店、メディカ出版、デアゴスティーニ・ジャパンなどの文芸書、人文書を中心に、実用書や新書から専門書まで幅広く手がける。また、一人出版社「ぼっと舎」を開設、編集・DTP・手製本など自由な本づくりに取り組んできた。企業や大学、カフェなどで校正セミナーやワークショップを担当。技術だけでなく、校正の考え方や心がまえも教える。2016年、ことばの寺子屋「かえるの学校」を共同設立。著書『校正のこころ』(創元社)、『校正のレッスン』(出版メディアパル)、『セルフパブリッシングのための校正術』(日本独立作家同盟)、『かえるの校正入門』(かえるの学校)、『これからのメディアをつくる編集デザイン』(共著、フィルムアート社)ほか。

「2021年 『校正のこころ 増補改訂第二版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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