雑誌「WEDGE」に記載されたものを本にしたものである。老後の主に金銭的な問題は、2014年9月のNHKスペシャル「老人漂流社会」が火付け役になっている。ちょうど年金引き下げと、消費税増税が重なり、多くの共感を得られたようだ。高齢無所得世帯の消費は落ち込み、経済も低迷したままであった。小生もこの番組を見て、貯金がない人の多いこと、無年金の人も一定数いることを知った。当時は計画性がない人達なのかなと思っていたが、現在の雇用環境では大いにあり得ることだ。それはつまり、本書のタイトルにもあるように、老人よりも現役世代の貧困問題の方が根深いというのが本書の趣旨である。
2000年と2012年の比較dataで古いが、この時点でも65才以上の貧困率(中央値の半分しか可処分所得がないこと)は改善しており(ただし、高齢者の数増加により貧困者の絶対数は増加)、30才以上の現役世代は貧困率が悪化している。
とはいえ、高齢者の貧困も無視できない。2015年7−9月期での世帯主60才以上の割合は、53.2%であり、過半数を超えている。さらにその7割が無職であり、年金が主な収入源になっている。厚生年金であれば貯金や年金でやっていける人も多いだろうが、国民年金だけだと、貯金がないとかなり厳しい。2000万円問題も記憶に新しい(実際pdfを読んだが、内容は至極真っ当な事が書かれていた)が、貯金がそこまでなく、頼れるはずの子供世代も貧困に喘いでいるのが現状だ。
高齢者の場合、働ける人は働き続けるという選択肢がある。しかし、なんと年金収入と勤労収入との合算が毎月28万以上になると超過額の半分の年金を減額する在職老齢年金の調整という年金の壁があるのだ。さらに、合算が毎月47万以上になると、年金は停止される。多く稼ぐ人は税金で還元してくれるので、この制度は撤廃した方が良い。年金制度は72才で元が取れるようになっており、平均寿命が80才を超える現在にフィットしていないのは確かだ。それを年金支給を減らす方向ではなく、稼いでいる人に消費と税金で還元してもらった方が良い。