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感想・レビュー・書評
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民主主義について、予備校講師の宇山卓栄が語った一冊。
わかりやすくて、これまでにない視点があって勉強になった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
民主主義の歴史的発展について、基礎をおさらいした上で、民衆・独裁・経済・宗教・官僚制など様々な切り口から、過去の政治思想家の理論や歴史的実例を用いて説得力ある議論を、分かりやすく展開している。著者は世界史の先生なので、『世界史』と強調してますが、日本の戦前の憲政史も含まれており、何よりも政治学の入門書として取っ付きやすいのではと思います。
ここ数年、民主主義はかつてない試練に晒されています。ポピュリズムやilliberal democracyという内なる挑戦、開発独裁という民主主義と異なるシステムで台頭してきた中国モデルという外からの挑戦。こうした中で、民主主義とは何なのかということを根本に立ち返って理解することが、益々重要になってきています。
本書は民主主義の弱点も含めて、一般人にも分かりやすく語りかけています。時宜にかなった良書と思います。
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世界史を通して、民主主義とは何かを読み解いた本。
民主主義の誕生から民主主義が抱える問題点まで、歴史的な視点から民主主義を問い直しています。
世界が分断していく今だからこそ、私たちは民主主義とは何かを知る必要があります。本書は民主主義を理解するための道しるべの役割を果たしてくれます。 -
「国の借金は将来世代のツケ、増税に堪えないといけない」と書いてあったあたりから読むのをやめました。。。
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現実的でないにも関わらず耳障りのよいことを言う人に投票する人達。
少し立ち止まって事実確認すればおかしいとわかることを、考えず感情と雰囲気により判断し、人を責め炎上するインターネット上の人々。
そんな考えない多数による多数決で国が動いたら破滅するのではないか、民主主義は正しいか、そんな疑問からこの本を読み始めました。
この本は、イギリスの元首相ウィンストン・チャーチルの「民主主義は最悪の政治といえる。これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが」に近い立ち位置で書かれています。
民主主義は民衆の多くが関心を持ち意思決定者であると自覚と責任がなければ成立しない。
だから、関心を持ち判断できるとされる、金持ちや貴族などに選挙権があった。
自分は、男か女か財産の有無などに関わらず、皆選挙権を持つ普通選挙こそ善であり、それこそ民主主義だと思っていたので、目から鱗でした。
中高の歴史で習ったとき、庶民から支持された原内閣が普通選挙を導入しなかったことが理解できなかったのですが、そういう考えもあるんですね。
明治政府は一部のみしか選挙権を持たないエリート政治家の政治であったが、諸外国のように内乱による近代化の導入ではなく、血を流さない近代化を成し遂げ、帝国主義の厳しい時代の外交をこなした。
その後、日本も普通選挙を導入し、民衆により支持を得て戦争に突入したが、正しいとは言えない。
ドイツ民衆により支持を得たナチスも同様。
民衆は強い主張に熱狂し軍による政権を後押ししがち。
自国民の50万もの人が犠牲になったといわれる南北戦争を止められなかったどころか積極的に火ぶたを切ったリンカーンは今でも民衆から支持を得ている。それは正しいのか。
今日本がとっている民主主義は議会制民主主義。民主主義とは国全体の多数決だと思ったのですが、違ったんですね。
国民投票はその費用に見合うくらい大切な事柄なら正しいと思っていましたが、議員という専門家がよく議論し問題点をわかりやすく民衆に伝えて初めて意味があるものなんだな、と思わされました。
民主主義だから経済的に繁栄するのではない。繁栄した経済から民主主義が生まれるのだ。
物を食うのに困らない生活を皆が手に入れない限り、争いは止まらず、民衆は独裁者を求めがち。
間接民主主義、直接民主主義、エリート政治、国民皆政治、何が正しいか。考えても絶対にこれが正しい、という結論は存在しない。
けれど、歴史を学び、現状を学ぶことは無駄でははない。そして、それを学べる本でした。